Creating Passionate Usersに「50%ルール」を彷彿とさせるエントリがありました:
Ultra-fast release cycles and the new plane (Creating Passionate Users)
Kathy Sierraが娘さんのSkylerに「なんでMySpaceってそんなにウケてるの?」と聞くところから始まる考察。娘さんは「MySpace上にいない人は、存在しないも同然」(日本で言えば、「Mixiに登録していない人は存在しないも同然」といったところ?)と言い放つほどMySpaceにハマっているそうですが、彼女の答えは、
「MySpaceはみんなが本当に望んでいることを続けているし、しかもすぐにやってくれるから。」
だったそうです。また「MySpaceは常に進化していて、常に変化してる。いつも何か新しいものがある」とも話していたとのこと。
この答えからSierraは、次のように考察しています:
- 多くのWeb 2.0系サービス関係者は、新機能をリリースするサイクルを短くすることが重要だと考えている(Tシャツデザイン/投票サイトのThreadless創設者によれば、サイクルが2週間でも少し長いとのこと)。
- 「リリースサイクルが短くなることにより、新しい機能が逆にそれまで上手くいっていたものを壊してしまうのではないか」という懸念がある。これに対しThreadless創設者は、「上手くいかなかった時は前の状態に戻すだけ」と答えている。またSkylerも「MySpaceに何か障害があった時は、みんな『明日には直っているだろう』と考えている」と答えている。
- エンドユーザーは「変化中毒」なのではないか。ユーザーは何か変化しても気にしないだけでなく、逆に変化を渇望しているように思える。
- Threadless創設者と37signals関係者も、「変化がユーザーの反発を招き、ユーザーの一部を失うことにつながる場合もあるが、反発し続けるユーザーは少ない」と語っている。
最後の「変化に反発し続けるユーザーは少ない」という部分、最近のMixiのリニューアルを思い出させます。確かにMixiの変化に戸惑っているという意見が聞かれましたが、だからといってMixiから他のSNSに乗り換える人が続出したわけでもなく、今では新しい機能がすっかり馴染んでいるかのように感じます。
ご存知の方も多いと思いますが、いぜん「はてな」の近藤さんが、「50%の完成度でサービスをリリースする」という記事を書かれました:
50%の完成度でサービスを出す(CNET Japan Blog [近藤淳也の新ネットコミュニティ論])
この「50%ルール」の理由としては、
- 他社に先駆けて新しい機能をリリースするため
- ユーザーと共に残りの50%を考えてもらうことで、よりユーザーが望む機能とするため
の2つが挙げられていたのですが、これに「3.変化を求めるユーザーの声に答えるため」という理由が追加できるかもしれません。
これまで50%ルール、それからクイック・リリースといったWeb 2.0的戦略については「それが有効だからといって、ユーザーが望む機能が実現される保証はなく、また50%どころか10%程度でリリースして障害を引き起こすことの言い訳として使われる」といった反論をしてきました。だからといって50%ルールそのものに反対しているわけではなく、安易にこの手法を採用することの方を問題に思っています。
しかしSierraの仮説が正しいとすれば、「ユーザーが望む機能を探して1年かけるよりも、思いつきベースでも1週間に1回新機能をリリースした方が良い(ユーザーは「変化」の方を望んでいるから)」「新機能の安定化に時間をかけてリリースが遅れるよりも、不安定な状態でもすぐにリリースした方が良い(すぐに回復されさえすれば、ユーザーは障害を気にしないから)」ということになります。
一方で「変化>安定」という態度は、MySpaceやWeb 2.0系サービスのユーザー層に特有の傾向だと考えることもできるでしょう。またMySpaceの場合、「私達のフィードバックが反映されている」という気分をユーザーに感じさせているわけですから、ユーザーの意見を吸収/反映する体制がきちんと整えられているように思います。短期間でリリースを繰り返すことは、どこまで有効な戦略で、実行にはどんな前提が必要になるなのでしょうか。
いずれにせよ、若年層のWEBユーザーが「安定、信頼性」よりも「変化、スピード」というキーワードの方に反応するようになっていることには注目すべきでしょう。サービスというものの概念も、次第に変化しつつあるのかもしれません。
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