昨日から紹介していますが、日経新聞の朝刊で始まった「消費をつかむ」という特集記事がなかなか面白いです。会社や図書館などで日経新聞がチェックできる方は、ぜひ読んでみて下さい。
---というオススメをされて、実際に読んでみようという気になりましたか?今日の「消費をつかむ」の内容は、まさにこの「オススメ」についてでした:
■ 消費をつかむ 第1部 300兆円の気まぐれ (4) 「お薦め」の魔力(日本経済新聞 2006年5月11日 第1面)
内容はWeb 2.0やらロングテールやらといったテーマに興味がある方なら、特に目新しいものではありません。「モノ」に関する様々な情報が溢れることで、逆に人々は情報を処理することに苦労し、「お薦め」に頼るようになる・・・というもの。記事の中では
新商品と情報の洪水の中で買い手は迷い、ナビゲーターを追い求める。ネット消費だけではない。商品を直接手にとって選べる売り場でも「お薦め」についうなずく消費者の姿がある。
と表現されています。
この中でちょっと面白い事例が紹介されていたのですが、池袋にある青山商事では、「自動コーディネート端末」なるものが導入されているそうです。どんな仕組みかというと、スーツにICタグを付け、それを端末にかざすと組み合わせ例が表示される---というもの。記事では「画面の推薦に、つい、その通りかなと思ってしまう」という利用者の声も掲載されています。
Amazon.comの例を挙げるまでもなく、コンピュータを介したオススメ機能というものは既に一般的になっています。Amazonで買物した後に「こんな本もありますよ」と言われると、つい買いたくなってしまう・・・という心境になるのは、僕にも経験があります。しかしよく考えてみると、そこで提示される「オススメ」は恣意的なものである可能性はないのでしょうか?先の青山商事の例で言えば、(まったく根拠の無い想像ですが)お店側が「売りたい」と思っている売れ残り商品を上位に表示させる、などといったコントロールがされていないという保証はありません。しかしオススメ機能に「これがいいよ!」と言われると、本当に良いもののように感じてしまうとなれば、まさに魔力と言うしかありません。
以前も紹介したことがありますが、『人を動かすテクノロジ』という本の中では、この「コンピュータによる説得力」というものの研究がされています。それによると、説得力の源泉の1つは「コンピュータは公正に動く」という思い込みであるとのこと。コンピュータは機械で、定められた命令を忠実に実行する。だからそこには恣意性や、邪な考えが入り込む余地はない・・・というわけです。与えられている命令が最初から恣意的なものだ、という可能性があるにも関わらず。
とすれば、青山商事が導入した「自動コーディネート端末」はまさに画期的なアイデアかもしれません。同じことを人間に言われても、「買わせようとしてお世辞で言ってるのでは?」という疑念を抱いてしまうところが、コンピュータ端末のアドバイスであればすんなりと受け入れてしまう・・・ということがあるのではないでしょうか。もしかしたら、端末の裏で動いているのはコンピュータ・プログラムである必要すらないのかもしれません(本当に「中の人」がいて、人為的に「オススメ情報」がピックアップされる、など)。
いずれにせよ、現在はWEB上での存在が一般的な「オススメ機能」は今後、現実世界にも大きく進出してくるかもしれません。自販機でビールを買ったらおつまみが、切符を買ったら行き先のエンターテイメント情報がオススメされる・・・そんな状況になるのかも。
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