『What!?デジタル集客術』という本を読んでいるのですが、その中で「ツァイガルニック効果」という言葉が出てきました。なんでも「目的が達成できなかった場合は、完了した場合よりも記憶に残る」という状態を示す心理学用語とのことで、これをビジネスに活用した事例として稲作体験ツアーが紹介されています。どういうことかと言うと、
- 「稲作体験ツアー」として、田舎に行って田植えをする。
- 当然、田植えしただけで米ができるわけではないので、「目的が達成できていない」状態になる。
- ツアー参加者は帰った後も苗の生育が気になり、記憶に留める。
- 収穫の時期、参加者はツアーのことを思い出し、今度は刈り取りツアーに参加する。
こんな感じです。必ずしもこんな風に上手く行くとは限りませんが(「田植えしたい!」という人は1.の段階で「目的が達成された状態」になるわけですし)、確かに「特産物を呼び物に観光客を招く」というよりもリピート率の点で効果がありそうな話です。また目的を達成しようと何度も現地を訪れるうちに、オーナーシップというか当事者意識のようなものが生まれ、リピート率を高める要因の1つになっているかもしれませんね。
ふと感じたのですが、ベータ版のWEBアプリケーションに一般ユーザーを参加させることも、この「ツァイガルニック効果」を発生させているのではないでしょうか。すばらしい機能(=目的)の実現を標榜しながら、「まだ開発途中のベータ版ですよ」という状態でユーザーを参加させることにより、ユーザーは「目的が達成されていない」状態になります。そしてユーザーの声を上手に機能に反映させることができれば、ユーザーは「自分の参加によって目的達成に近づいている」という心理になるでしょう(つまり上記の「稲作体験ツアー」における「稲」の位置を、「WEBアプリケーション」が占めているわけです)。それがツァイガルニック効果+オーナーシップを発生させ、未完成のサービスにも関わらず何度もアクセスしてしまう・・・そんな説明が可能かもしれません。
そう考えると、この「ツァイガルニック効果」をより広い範囲で、より上手に応用することを考えても面白いのでは。もちろんアクセスしてくれたユーザーには何か価値のあるものを提供しなければなりませんが、例えば上記のように「将来実現される価値」を提示することで、「直近で手に入れたいものが入りつつも、物足りないと感じる状態」を作り出すことができます。その他にも、定期的にアップデート(成長)の様子を報告するなど、様々な工夫が可能ではないでしょうか。
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