SNSはEメールを置き換える、と言ってもにわかには信じ難いかもしれません。確かにSNSにはメッセージ送受信機能が付いているものがほとんどですが、同じSNSにアカウントを持っていない場合はどうなるのだということになるでしょう。しかし次のような状況であれば、本当に「SNSがEメールを殺す」かもしれません:
■ Social Networks are Killing Email (Bokardo)
この記事では以下のような指摘がされています:
- ミシガン州立大学の在校生45,000人のうち、92%の生徒が Facebook にアカウントを持っている。
- 生徒はSNSやチャットツールを使って連絡を取り合っているため、ミシガン州立大学は生徒にEメールアカウントを発行することの停止を考えている。
- 別のケースでは、ある父親が娘にメールを送ったところ、いくら待っても反応が無かった。理由を尋ねたところ、「MySpace のアカウントにメールしてくれないと読まない」と言われた。
- Eメールはもはや、コモディティ化された「機能」になった。様々なアプリケーションがメッセージ送受信機能を備え、そこで人々の交流が行われている。
- 異なるコンテキスト(会社や学校、サークル、家族などの社会環境)で生活している人々に連絡を取る場合、彼らがコミュニケーションに使用しているアプリケーションを調べ、そこでメッセージを送る方が良い。でないと確認が遅れ、メッセージに気づいてもらえないだろう。
学生のように、交友範囲が同じコンテキストに住む人々にほぼ限定されている場合、そのコンテキストの中で一般的に使われているソーシャルソフトウェア(メッセージ送受信機能を備えたWEBアプリケーション)があれば、独立した存在としてのEメールは必要無くなります。ミシガン州立大学の状況がまさにそうでしょう。就職活動など、「外界」と接する必要がある特殊な場合を除けば、Facebook を通じて友人たちとコミュニケーションするのでほぼ事足りてしまいます。もちろん卒業後は会社のEメールを使わなければ仕事できませんから、Facebook がコミュニケーションの主要な手段であるというのは一時的な環境かもしれませんが、それでも「SNSがEメールを代替する世界」が既に出現しつつあるわけです。
また記事では指摘されていませんが、外界と制限無く接しているEメールは、スパムにさらされるリスクと切り離すことができません。Eメールではなくチャットツールで連絡を取ることがメジャーになりつつあるのも、スパム問題が一因となっているでしょう。従って仲間内での連絡にはSNSやメッセンジャーを使い、初対面の相手や企業とコミュニケーションする場合はEメールを使うなどといった使い分けが進んでいくのではないでしょうか。であるとすれば、Eメールは存在を続けながらも、少しずつ性質が違うものへと変化していくかもしれません。
企業内においても、ブログやSNS、Wiki といったツールでコミュニケーションを行うケースが増えてきました。特にプロジェクトベースで仕事する場合、アドホックなコミュニケーションスペースが構築できるこれらのツールは非常に便利です。Eメールが絶滅するというのはあり得ないとしても、様々なアプリケーションがコミュニケーション機能を発展させ、時と場合に応じてEメールを代替していくことはますます進んでいくと思います。
SNSのメール(メッセージ)機能は、必ずしもEメールを射影するものではないかなという気がします。ログの保管という面では、Eメールに圧倒的に分があるのではないでしょうか。
SNSのメッセージ機能は、インスタントメッセンジャーやモバイルのメールに相当するのだと思います。
外部との接続性以上に、なにかこう本質的に役割が違うのではないかなーと感じます。
また、基本的にSNS内でのメッセージ機能は、1to1のコミュニケーションに特化したところが強くて、SNS内のコミュニティが複数人でのコミュニケーションをサポートすると考えると、Eメールのもつ役割から機能的にも欠落する部分があるのではないでしょうか。
Eメールで行なっていたある部分をSNSが代替して、そこでのコミュニケーションの密度が増加していると、僕は捕らえています。
アキヒトさんが指摘するように、
”時と場合に応じてEメールを代替していく”
のでしょうね。
投稿情報: p-article | 2006/07/21 09:28