いよいよ今日、オーマイニュース日本版がスタートしました。このブログを読んでいただいている方々には、いまさらオーマイニュースの解説は不要だと思いますが、念のために関連記事へのリンクを載せておきます:
■ ブログでも2chでもない「市民新聞」とは――オーマイニュース鳥越編集長に聞く(ITmedia)
このトピック、思想的・感情的な要素が多分に入り混じっているので、うかつにコメントするのは危険なのですが。初日のオーマイニュース日本版サイトを見て、感じるところがあったのでちょっとエントリします。
上記の記事を読むと、オーマイニュース日本版(以下OMN)は「市民の力で社会を変えよう」という目標を掲げているように感じられます。従って思想的には右・左のない中立であるはずなのですが、関係者(編集長である鳥越氏を筆頭に)からは「いまのネットは右翼的な思想で満たされている」という思考回路が感じられ、それが左翼的な志向の人々を引き付けているようです。この辺、実像はどうなのか僕には分かりませんが、少なくとも初日のOMNに掲載されている記事を読む限りでは「左翼的だな」という印象を受けました。
「いまのネットなんかゴミ溜めだ、建設的な意見を発信・議論する場を作るのだ」という意欲を否定するつもりはありません。「ウヨクに対抗するためのサヨクメディア」という立ち位置で行くこともアリだと思います(個人的には左翼的な意見に共感することも多いので)。しかし創刊されたOMNを見て、脆さというか、危うさといったものを感じました。
OMNでは記事のアクセスランキングが公開されているのですが、今日のお昼の時点でトップに立っていたのはこんな記事です:
■ インターネット上ではびこる浅はかなナショナリズム(OhmyNews)
そして3位にランクされていたのはこんな記事:
■ ある日本人男子留学生に「怒り」(OhmyNews)
どちらの記事も、とても「ニュース」とは呼べない内容です。しかしアクセスランキングによって、たまたまアクセスした僕(そして他の無数の閲覧者たち)の目に留まることとなりました。コメント数はまだ30程度ですが、他の記事がほとんど0であることを考えると異様に多く、しかも記事を否定するような内容がほとんどです。これを目にした読者は、「OMNとはこの程度のメディアか」「2chと変わらないじゃん」といった印象を受けることでしょう。つまり本当の意味で読む価値のある記事(そんな記事が存在する、という前提での話ですが)にたどり着かず、イメージを損ないかねないという点でOMNにとって問題のある記事が注目を集めている状況なのです。
ブログであれば、ブログ検索やトラックバック、RSS、SBMなど様々なルートである記事にアクセスすることができます。つまり価値のある記事を見つける「ナビゲーション機能」というものが確立されていて、それによって鳥越氏の言うところの「内容は他愛もないことが多く、社会が変わるような発言は少ない」ブログの中から、社会を変えるような内容の記事をいくつでも見つけることができるわけです。
翻ってOMNを見てみると、システムとして用意されているナビゲーション機能はディレクトリ・新着記事・そしてアクセスランキング程度で、全文検索機能や閲覧者による評価に基づくランキング、といったものはありません。またトラックバック機能がないため、記事の間のつながりというものがなく、従ってある記事をルートに様々な記事をブラウジングしていくという行動が不可能になっています。また間違っていればご指摘いただきたいのですが、RSSも無くピングを飛ばしているという話も聞かないので、ブログ検索サービスから記事を見つけるということもできないようです。
この状況はOMNにとって、単に「価値のある記事を見つけてもらえない」という以上に危険です。例えば2ch(BBS)や「はてブ」(SBM)など、OMNが敵視する存在がナビゲーション機能を代替し、「OMNにとって見つけて欲しくない記事」へのアクセスを集めてしまうことが考えられるからです(おそらく2chでは「OnmyNews の痛い記事まとめ」的なスレッドが立ち上がるでしょう)。それによってOMNのアクセスランキングでも「望ましくない記事」が上位に表示され、BBSやSBMを利用しない人々もBBSやSBMの価値観でナビゲートされてしまう・・・という状況が生まれるのではないでしょうか。
どうもOMNは「良い記事を書けば読者は自然とやってくる」と考えているようなフシがあります。しかし「読者は導きによって行き先を決める」という方が現実に近いでしょう。もし「良記事率(良い記事の数÷記事の総数)」とでも言うべきものがあって、OMNとBlogosphere全体を比べてみれば、おそらくOMNに軍配があがると思います。しかし現在のままでは、人々が「ごみ溜め」という印象を受けるのはOMNの方でしょう。
と、初日で生まれたての市民ニュースサイトにケチをつけてしまいましたが。ただ参加されている方々を見ると、様々なバックグラウンドをお持ちの方がおられるようです。「社会を変える!」「ネットを変える!」などと肩肘張らずに、まずはOMNでしか拾えなかったような意見を、地道に掲載していって欲しいと思います。
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