ある日会社に出勤したら、上司から突然「明日からリソースを半分にするよ。だけど売上や納期、品質などは現状維持してね」と言われたらどうしますか?僕ならキレて会社を辞めると思いますが、そんな状況に陥った会社の事例が日経MJに載っていました:
■ 改装中の営業、阪急百の工夫 (日経流通新聞 2006年9月22日 第18面)
「社運を賭けた建て替え工事を進めている」という、阪急百貨店のケーススタディ。どんな状況かというと:
- 建て替え工事のため、南側の半分を取り壊している。
- 昨年9月から、従来の約7割の売り場面積で営業を続けている。
- 出入り口も半分閉鎖、導線が大きく変わった。
ということで、かなりの悪条件なのですが、実は前年同期比84%の売上を維持しているそうです。単純に「売場面積=売上」と仮定すると、前年比70%の売場で84%の売上ですから、生産性が20%向上したという計算になります。そこにどんな工夫があったかというと:
- 南側半分の取り壊しにもかかわらず、スペースをやり繰りして売場面積3割減にとどめた(リソース低下の防止)
- 売場面積は減ったが、逆に取り扱いブランドを増やした(リソースの有効活用)
- 知識豊富なベテラン店員に派手な制服を着せ、「エスコートスタッフ」として来店客の誘導・対応にあたらせた(顧客満足度の低下防止)
- 指輪のサイズ直しやハンドバッグの修理といった新しいコーナーを設けた(新しい価値の提供)
- 力を入れるべき分野での売場面積減少を最小限にとどめ、場合によっては逆に増やした(リソースの選択と集中)
- 「場所がないなら外に行って売ろう」という機運が生まれ、ホテルやショールームで販売会を開くなど、新しい販売方法を生み出した(ビジネスモデルの再構築)
と、こんな感じの対応だったとのこと。つまり(1)リソースの低下を食い止めるとともに、(2)リソースの生産性を高める方法を考え、(3)顧客の離反を食い止めながら、(4)まったく新しい道を模索した、というところでしょうか。後知恵で列挙するのは可能ですが、現場の方々は試行錯誤の連続だったことでしょう(全面開業は2011年とのことで、「片翼飛行」はまだまだ続いています)。生産性向上の好例として、見習いたいと思います。
しかし別の見方をすれば、ある意味「困難な状況が逆にチャンスを生み出した」と言えるのではないでしょうか。例えば工夫の最後に挙げられている「外に行って売ろうという機運が生まれた」という効果などは、売場が半分無くなるというまさに危機的状況から出た行動で、普通に「今月の予算を達成するにはどうしようか」といった感覚で考えていては生まれなかった変化だと思います。
「リソースを半分に減らすぞ!」といった極端な状況は、幸いなことにあまり生まれないと思います(僕はなぜか近い状況を何度か経験していますが・・・)。しかし「そう言われたらどうするだろう?」という空想をして、新しい企画を考えてみるというのも有意義なのではないでしょうか。
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