なんか"Consumer Generated ○○"という言葉で遊びすぎですが、週末なので軽いネタでお許し下さい。
技術の発達により、消費者の生産者の間の境界線が曖昧になることは、多くの専門家が指摘しています。コンシューマーとプロデューサーという言葉を合わせた「プロシューマー」という造語はよく使われていますし、実際にオープンソースソフトウェアの分野では「開発者でありながらユーザー」という人々が現れています。また先日お伝えした『ものづくり革命 - パーソナル・ファブリケーションの夜明け』という本は、ものづくりの分野でも「プロシューマー」を生み出そうという動きについて解説しています。
しかし農業の分野で「プロシューマー」は生まれるのでしょうか。ITの分野ではメインフレーム→パーソナルコンピュータという技術革新があり、工業の分野でも工作機械の小型化・低価格化や、小ロット生産に対応した機械などが現れ始めました。しかし農業はというと、生産のためには当然ながら広い敷地を必要とし、天候や土壌という不安定な要素を扱うためには長い経験が必要となります。既に農家の人が自家用に作物を生産するのではなく、例えば六本木ヒルズの住人が、自宅で自家用のトマトを栽培する -- といった"CGV - Consumer Generated Vegetable"なんて発想は非現実的なように思います。
しかし農業の世界にも、IT技術の活用が既に進んでいます。例えば先日の日経産業新聞に、こんな記事が載っていました:
食 デジタブル時代 -- カゴメ・いわき小名浜菜園 トマトに最適な温室 気象条件に合わせ温・湿度調整(日経産業新聞2006年2月17日第18面)
「デジタブル(digitable)」とは、
デジタル(digital)技術を活用して生産・加工された食物を表す造語。野菜(vegetable)をはじめとする様々な食材・食品の生産過程でデジタル技術の応用が可能(able)になった結果、家庭のテーブル(table)の上に確固たる地位を築きつつある。
という定義とのこと。ableとtableのくだりは多少ダジャレっぽいですが、要は農業でもIT技術が様々な活用をされていることを示した言葉です。実際にこのいわき小名浜菜園では、熟練者が必要な作業をデジタル制御に置き換え、管理の負担を大幅に軽減しているとのこと。また栄養分の注入も、天候の状態や苗の育成段階に応じて、適量を染み込ませるようにシステムで自動制御しているそうです。
このように管理の側面においては、IT技術が既に十分なサポートをしているようです。後は環境面ですが、バイオ技術などの発達により「野菜を作る工場」といった施設も生まれていることですから、将来的には自宅に置けるサイズの「野菜生産装置」が実現する可能性はあると思います。それが何年後なんだ?と言われても困るのですが、いつの日か「農業版プロシューマー」がCGVを実現する日が来ると思います(きっと日本政府が後押ししてくれることでしょう)。
その時、WEB上にはどんなサービスが生まれているのでしょうか。「すごく糖度の高いイチゴ」や「煮崩れしにくいシチュー用ジャガイモ」を作れる環境管理ソフトが、オープンソース型で開発・提供されているかもしれません。また「野菜SNS」ではありませんが、CGVコミュニティをサポートする場が生まれていることでしょう。いきなり「野菜生産装置」を買うのをためらう人向けに、ASP型でパーソナル野菜作りを始めるサービスを提供する業者も現れたりして。「ふるさとの天候をリアルタイムに再現できるサービス(=ふるさとの味がいつでも再現できる」なんてのもあるかも。
いずれにせよ消費者/生産者の境界線が薄れていくことは、農業の分野でも避けられないことでしょう。その時にどんな関連サービスが実現できるか、想像してみるのも面白いのではないでしょうか。
最近のコメント