高熱で寝たきり生活を送っている間、奥さんが買ってきてくれた『COURRiER Japon』2007年 6月号などを読んで気を紛らわしていました。いくつか面白い記事があったのですが、これなんかは興味を持たれる方が多いのではないでしょうか:
■ ハーバード大出身者もメンバー 中国の海賊版チームはネット愛好者のヒーロー!?(COURRiER Japon)
著作権侵害で何かと?話題の中国に関するニュース。米国のTVドラマ『プリズン・ブレイク』の海賊版が作られる過程を追った記事ですが、違法行為の存在について興味を引かれたわけではなく、それが一種の「クラウドソーシング」の理想型になっている点が面白いです。かいつまんでそのプロセスをまとめてみると:
- アメリカのTVドラマを中国語に翻訳する、謎の字幕製作組が存在している。
- 本国で『プリズン・ブレイク』が放映されると、素材がビットトレントを通じて中国の字幕製作組のFTPサーバに送られる(所要時間30分ほど)。
- 担当者がCMをカット。次に各セリフの長さを計って秒数を割り出す「スポッティング」作業を行う(熟練したスタッフで45分番組が2時間程度)。
- 翻訳スタッフが中国語に翻訳。スタッフが4人だと1人あたりおよそ10分、約200センテンスずつで、2時間程度で完成。
- 翻訳が終わるとチェッカーが翻訳ミスや用語の統一など、最終チェックを行う。
- チェックが終わったファイルはアップされ、ダウンロード可能に。
といった具合。こうした「字幕製作組」の1つTLFでは、現役スタッフが100名を超え、幅広い年齢層と職業・学歴の人々が所属しているのだとか。また「字幕製作組」は多数存在し、翻訳のスピードと質を競っているそうです。
こうした作業は基本的にノーギャラ。ただしFTPサーバにアクセスする権限が与えられるので、サーバ内にあるドラマが見放題になるという特権がモチベーションとなるのでは、と解説されています。では肝心の質はというと、DVDとして正式にリリースされるものよりも断然良いという評価を得ているのだとか。「仕事や作品への愛が感じられる」というコメントも紹介されていて、翻訳製作がお金を目的としたものではなく、「オタク」的な態度が出発点となっていることがうかがえます。またあまりにも質の悪い翻訳をした翻訳者は、管理者によって登録を抹消されるケースもあるとのこと。
彼らが作成しているのが違法なものであるという問題はありますが、ノーギャラでクオリティの高い成果物を生み出しているなら、この「字幕製作組」というシステムを参考にしてしまうのも良いかも。例えばこうした「組」がすでに無数に存在しているとして、映画配給会社が海外の作品を翻訳したいと考えているとします。配給会社は評判の高い「組」を選び、彼らに無償で「素材」を提供して翻訳を依頼します。翻訳はノーギャラですが、「組」の構成員(?)がお金を払って作品を観るという機会が失われますので、1,800円×「組」構成員数が潜在的な費用となります。構成員はもちろんノーギャラで翻訳作業をしなければなりませんが、(1)無料で公開前の作品を楽しめる (2)大好きな「翻訳」という作業を存分に楽しめる (3)「あの作品の翻訳チームはすごい」という評判が広まって (4)お金を払って仕事を依頼してくる企業が出てくる、などなどのインセンティブが与えられるでしょう。某大物おばちゃん翻訳家に頼んで誤訳されるぐらいなら、このシステムの方がよっぽど良いかも。
特にいまの時代なら、翻訳は世界のどこにいる人物でも依頼することができるのですから、ボランティアで翻訳作業を請け負う「翻訳組」を組織するのは意外と簡単かもしれません。どなたかそんなグループを組織している方・組織するつもりのある方、頑張りますのでぜひ僕も誘ってください!あ、体調管理ができないようじゃムリか……。
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