「選択肢が多すぎてもダメ」というのはよく言われることで、例えば何かを買いに行って選択肢が多すぎると「買う気が失せる」「買っても満足度が低くなる」という現象が起きることを「選択の不自由」と呼んでいる人もいます。で、新しい研究によれば、選択肢が多くなると個々の選択肢に払う注意も減るとのこと:
■ 'Less Is More' Online: Fewer Choices May Lead To Better Recognition Of Material (ScienceDaily)
ミズーリ大学コロンビア校の Kevin Wise 助教授らの研究結果。結論から言うと、与えられた選択肢が少ないときの方が、個々の選択肢に対してより注意が払われるようになったとのことです。実験の流れはこんな感じ:
- 被験者にサムネイル画像を見せ、その中から3つの画像を選んでもらうという実験。
- 被験者を2つのグループに分け、一方にはサムネイルを6個表示、もう一方には24個表示した。
- 6個のサムネイル画像を見せた被験者には、"orienting response"が確認されたが、24個見せた被験者には確認できなかった。"orienting response"とは短期間の心拍数の低下で、人間が何かに注意を払っていることを示す。
- 上記の実験後、被験者には全く無関係な作業をしてもらった。その後、被験者がどの程度画像を思い出せるかという実験を実施。
- 6個のサムネイルを見せたグループは99%の精度で画像を思い出せ、そのスピードも速かったが、24個見せたグループの制度は89%だった。
ということ。記事だけでは情報不足なのですが、後半部分については「自分が選んだ3つの画像を思い出せたか」という実験だった可能性があります(でなきゃ画像が多い方が損に決まってますよね)。いずれにしても、Wise 助教授はこの現象について「選択肢が多いとそれを把握するのに頭のリソースが振り分けられて、それをメモリに入れるためのリソースが少なくなるからだ」と解説しています。
"At some point, our mental processing resources become overloaded and cannot efficiently process new information without sacrificing old information. More mental resources were utilized when participants selected from 24 pictures than from six pictures, and this left participants who selected from the 24 pictures with fewer mental resources to devote to encoding the pictures they selected," Wise said.
「ある限度を超えると、脳がオーバーロードを起こしてしまい、古い情報を削除しないと新しい情報を処理できなくなる。24個の画像を見せられた被験者は、6個の画像を見せられた場合よりも、多くの脳内リソースが必要となった。その結果、24個の画像を見せられた被験者は、自分が選んだ画像を『エンコード』するのに回せるリソースが減ってしまったのだ」とワイズ氏は述べた。
とのこと。記事ではこの結果を受けて「検索エンジンやニュースサイトでは、一画面に表示するコンテンツ(検索エンジンであればリンク、ニュースサイトであれば記事/ヘッドライン)をある程度に抑えた方が良いかも」とアドバイスしています。
で、ふと思い出したのですが、ガストのメニュー(正確にはメニューが載ってるカード)って料理がぐちゃっと載ってますよね(最後に行ったのは半年ぐらい前なので、その後変更があったかもしれませんが)。普通のファミレスだと10ページぐらいの小冊子で、各ページに大きな画像が掲載されている(従って1ページ内でのメニュー数は3~6個程度)なのに、ガストは三つ折にされたカードにメニューがてんこ盛り。あれって何となく選びづらく感じていたのですが(あくまでも個人的に、ですよ)、こんなところに理由があるのかもしれません。
ということで、選択肢をじっくり検討して選んで欲しい時には、一度に見せるオプションを減らす。あんまり提案内容を理解して欲しくない/相手にとって不利なオプションが選ばれることを狙いたい場合には20も30もいっぺんに見せる。ということになるでしょうか?あ、別にダマしのテクニックに使えということではありませんが……。
ああ、てっきり見本と実物があまりにも違うという話かと思いました。
投稿情報: tenru | 2007/07/14 14:35