このブログを読んでいただいている方々だと、遠隔地の人々と一緒に仕事をする、という経験があると思います。別に「東京-札幌間」みたいな距離じゃなくても、常駐先で本社にいる人々と資料を作り上げるとか、課外活動として社外の人々と企画を練るとか。そういった「バーチャルチーム」を成功させるための心得が、MITの研究論文にありました:
■ Working Together...When Apart (MIT Sloan Management Review)
日常的に顔を合わさない(物理的に同じオフィスにいない)人々で構成されたチームを成功するために必要な、10の心得を解説した論文。いつものように「10ヵ条」を羅列、でも良かったのですが、個人的に「その通り!」と納得した箇所がこちら:
8. Assign only tasks that are challenging and interesting. Because the work of virtual teams is often unsupervised, their tasks should be stimulating and challenging—otherwise the team risks disintegrating under the weight of uninterest.
Indeed, we found that one of the biggest reasons virtual teams fail is because the members don't find the work interesting. They simply fade away, with fewer and fewer dialing into the weekly conference calls or posting ideas on the shared site. It's not that the members don't like one another. It's simply that the atmosphere becomes more like a country club than a dynamic collection of inspired people.
ルール8. チャレンジングで興味深いタスクをアサインすること
バーチャルチームの仕事ぶりは監視されないことが多いので、彼らに与えられるタスクは刺激的で、チャレンジングでなければならない。さもないと、無関心によってチームが崩壊してしまうリスクがある。
事実、「仕事が面白くないこと」がバーチャルチームが失敗する最大の理由の1つであることを私達は発見した。(仕事が面白くないと)チームメンバーは電話会議に出なくなったり、専用ウェブサイトに意見投稿をしなくなる。それはメンバーがお互いを嫌いになったからではない。単にチームが「カントリークラブ」のようになってしまい、「刺激的な人々が集まったダイナミックなチーム」という空気が失われてしまうからだ。
これ、まさしくその通りですよね。僕個人も「バーチャルチーム」的な組織でいくつかのタスクをかかえているのですが、仕事をする動機は「その仕事でどれだけワクワクできるか」という点だったりします(あまり大きい声で言ってはいけないのかもしれませんが)。現実には「各メンバーが何にワクワクするか」「何を大切だと思っているのか」を理解して、各々に最適なタスクを割り振るというのは難しいことですが(誰もがやりたくないタスクというのもありますし)、バーチャルチームを動かす燃料は何よりも仕事の面白さだということを理解しておく必要があるのでしょう。特に社外の人々との課外活動においては、「お金(給料)」が働く動機にはならないわけですからね。
ちなみに「バーチャルチームが成功する10の心得」、残りの9個はこんな感じです:
1. メンバーがお互いを理解できるようなオンラインツールを用意すること
働く場所が物理的に異なると、お互いが何者か・どんなスキルや興味を持っているのかを理解することは難しい。SNS的なオンラインツールがあれば、素早くお互いを知ることができる。
2. 何人かは既に知り合いのメンバーを入れておくこと
既に知り合いの人々が含まれていると、バーチャルチームの生産性は上がりやすい。ただし知り合いの人々が多すぎると、そうでないメンバーが疎外感を感じるので注意。
3. 「バウンダリー・スパナー」がメンバーの15%以上を構成するようにすること
バウンダリー・スパナーとは、過去の職歴や交際歴から、社外に様々なコネクションを持つ人物のこと。以前読んだ『インポッシブル・シンキング 最新脳科学が教える固定観念を打ち砕く技法』という本の中にもこの概念が登場するのですが、そこでは「異文化の通訳」と呼ばれ、「片足を一つの世界に、もう一方を別の世界にかけている」ような人物で、2つの世界の仲介者として行動することができるとされています。そういった人物がチームメンバーに含まれるようにすること。ただし多すぎるとチームとしてのまとまりがなくなるので注意。
4. バウンダリー・スパナーを育成し、企業内に日常的に存在するようにすること
バウンダリー・スパナーがネットワーキングにおいて果たす役割は、バーチャルチームが活動する上でだけでなく企業全体にとっても重要。従って、彼らが社内に常に存在しているようにしなければならない。またバウンダリー・スパナーが多いと、バーチャルチームを形成した際に「以前も一緒に仕事しましたね」というメンバーが含まれる確率が高くなる。
5. 仕事を独立したタスクに分割して、物理的に離れた場所で別々に仕上げられるようにすること
これは別々の場所で働いている以上、当然考慮すべき工夫ですね。
6. メンバーがコラボレーションしたり、アイデアを交換したり、お互いを刺激し合えるようなオンラインツールを用意すること
これも最近は社内ブログ、社内SNS、社内wiki等の効果が議論されていることからも明白ですね。こうした「エンタープライズ2.0」的なトピックについては、ソーシャルニュースサイト「iUG Newsing」でご確認下さい(<-宣伝)。
7. コミュニケーションが頻繁に行われるようにすること、ただしオフ会を強要しないこと
「何でコミュニケーションするか(メール、電話、IM etc.)」を問わず、頻繁にコミュニケーションを行っているチームは成功する。また「どの時点で実際に顔を合わせるか」という点も重要。チームがスタートして間もない段階では、無理に顔合わせするよりも、面白いタスクをつくりだすこと/有意義なゴールを設定することの方が意味がある。逆にチームが走り出して、ワーキング・スタイルが確立された後では、顔合わせに集まることは信頼感の醸成に役立つ。
8. チャレンジングで興味深いタスクをアサインすること
こちらは上記をご参照下さい。
9. 遂行するミッションがチーム、および会社にとって有意義なものであることを保証すること
バーチャルチームのミッションは、メンバー個人にとって価値のあるものであると同時に、会社にとっても重要なものでなくてはならない。ルール8に似ていますが、こちらはよりゴール(最終的に達成するもの)を重視している、と言えるでしょうか。
10. バーチャルチームを形成するときは、可能な限りボランティアを募ること
ウィキペディアやリナックスの例に見られるように、自分の意思でチームに参加してコミットした人物が含まれている方がバーチャルチームは成功する。
……こんな感じ。今後もWEB2.0系ツールが企業内に導入されるようになれば、ますますバーチャルチームが活用されるシーンが増えていくのでしょうね。
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