いやぁ、これは連休中に読むのは辛い本だったかも。あるところで薦められていたのがきっかけで、『調理場という戦場』を読みました。これはもともと、ほぼ日に掲載されていた連載をまとめたものです:
■ 調理場という戦場。コート・ドールの斉須さんの仕事論。 (ほぼ日刊イトイ新聞)
フレンチレストラン『コート・ドール』のオーナーシェフ、斉須政雄さんの仕事哲学。23歳で単身フランスに渡り、様々なお店で経験を積んでから、日本に帰り自らのお店を開くまでが語られています。当然その体験は生やさしいものではなく、言葉の壁や人種の壁、激しい生存競争などなど、読んでいるだけで疲労感を感じるほど。
よくある自己啓発本の「オレはこんなに頑張ってきた」「お前らも頑張れ」というメッセージは痛くもかゆくもないのですが、この本の言葉には頭をガツンと殴られた感じ。「オレが仕事術を教えてやるぞ」という態度がなく、また「僕はこれが正しいと思ってやってきた」という静かな自信で満ちています。料理人の世界を語っているはずなのに、僕自身の仕事を振り返らずにはいられない本でした。薦めてくれた方、ありがとうございます。
社会の常識になって惑わされることなく、自分の常識でぶち当たってほしい。いつか、自分の常識に向けて、社会を振り向かせればいいじゃないですか。世間の常識があなたのことを「いい」と認めるまで、頑張ればいいんです。
自分の常識に社会を振り向かせる気持ちでやっているなら、自分自身は天然のままで、作為のないまま輝くことができますよね。日常生活なんだもの。ぼくはいつも、お店の若い人たちにも、「常識はしょせん人間の作ったものだから、自分の常識をつくればいいんじゃない?」と言っているんですよ。***
ぼくは世事に長けていないから、あんまり効率のいい生き方をしていると、すり切れていってしまうような気がするんです。ですから、ゆっくりと遠回りでもいいけど、一歩ずつ行くことを選びました。これはベルナールのやり方です。
「これは、夢のような幸運だ」と思っているうちは、その幸運を享受できるだけの力がまだ本人に備わっていない頃だと思うんですよ。幸運が転がってきた時に「あぁ、来た」と平常心で拾える時には、その幸運を掴める程度の実力が宿っていると言えるのではないでしょうか。***
つまり、人生に近道はないということです。
まわり道をした人ほど多くのものを得て、滋養を含んだ人間性にたどりつく。これは、ぼくにとっての結論でもあります。技術者としても人間としても、そう思う。
若い時は早くゴールしたいと感じているでしょう。
それも、じれったいほどに。
ぼくもかつてはそうでした。でも、早くゴールしないほうがいいんです。
ゴールには、いい悪いがあるから。
などなど、「自分はどう思う?どうしてる?」ということを考えずにはいられないメッセージが、随所に登場していました。連休中なのに、頭は強制的に仕事モードへ。自分が働く場所を「戦場」と呼べるほど、最近真剣な気持ちで仕事と向き合ってたっけ……。
いよいよ来週から10月ということで、そろそろ年末の雰囲気が感じられるようになってきました(『ほぼ日手帳2008』の販売も始まったし)。まだ読まれたことのない方は、年末にかけて目を通してみると良いかもしれません。今年中にこれまでの仕事に対する姿勢を振り返って、2008年に新しい気持ちでスタートが切れるのではないか、と思います。
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