「世界中にある不潔な家はこれだ!」というリストを期待された方、ちょっと違います。シロクマ日報でも書いた通り、いま『社会が変わるマーケティング――民間企業の知恵を公共サービスに活かす』という本を読んでいるのですが、その中でこんなサイトが紹介されています:
■ City of Tacoma - The Filthy 15
米ワシントン州タコマ市が開設している「不潔な物件15」というサイト。タコマ市内にある「板を打ち付けた家、空き家になったアパートの建物、その他の不法建築物など、悪質な条例違反と見られる不動産」を、その名の通り15件紹介するというものです。日本で不潔というと「ゴミ屋敷」みたいな感じを想像しますが、不法建築も含まれているということで、実際に掲載されている物件の中には小ぎれいなものもあります:
で、なんでこんなサイトを自治体が作成しているのかという点ですが、これは物件の所有者に行動を促すため。『社会が変わるマーケティング』では、以下のように解説されています:
ここで槍玉にあげられているのは、市側が懸命に働きかけたにもかかわらず、具体的に動きが見られない物件だ。市当局は、市の努力を一般市民にも知ってほしいと願っているが、それよりも重要なことは、公開によって所有者に行動意欲を起こさせることである。
言葉は悪いですが、要はネットでの「晒し上げ」。必ずしも賛成意見ばかりではないと思いますが、「市当局は効果が見え始めた」と評しているそうです。地元のテレビ局や新聞でも取り上げられ、話題を集める効果もあったとのこと。
先日「みんなで事件解決 -- POSTACRIME.COM」というエントリを書きましたが、ここでも同じ問題が起きそうですよね。つまり写真や番地を公開されることで、問題が解決した後も社会的制裁を受けてしまう可能性があります。「市としては懸命に働きかけた後の対処だ」と言っても、一方的な主張に過ぎませんから、所有者の事情が正しく伝えられない危険もあるでしょう。確かにネットに晒せば「負のインセンティブ」となるのでしょうが……使い方が難しい手法かなぁ、と思います。
いずれこんなサイトを、日本の自治体も開設する時代が来るのでしょうか。
コメント