ユーザビリティに関するコンサルティング会社 User Centric が、iPhone と普通のキーボード(QWERTY配列)が付いている携帯電話、どちらが打ちやすいかという調査を行い、結果を公開しています:
■ Direct Comparison of iPhone and Hard-Key QWERTY Phone Owners Indicates Higher Text Entry Error Rate for iPhones (User Centric)
タイトルで結果が明らかになっているのですが、簡潔に言えば「iPhone ではタイプのスピードは他と同様なものの、タイプミスをする確率が高い」とのこと。
では実験の内容。主な部分を抜粋すると:
- 被験者は60名。そのうち20名が iPhone オーナー(最低1ヶ月間は使用)、20名が QWERTY 配列のキーボード付き携帯電話のオーナー、残りの20名が数字キーでタイプする形式の携帯電話のオーナー。
- 実験は各自75分間、1対1の面接形式で行われた。
- まず自分自身の携帯電話を使い、6つのメッセージを入力してもらう。
- ※以下の作業を行ったのは非 iPhone ユーザーのみです(dagezi さん、ご指摘ありがとうございます!)
次に自分が使っていないタイプの電話2種類で、同じく6つのメッセージを入力してもらう。iPhone 以外に使用されたのは、Blackberry (= QWERTY 配列)と Samsung E300 (= 数字キーのみの携帯電話)。 - 作業を記録し、作業が完了するまでにかかった時間と、タイプミスの発生率を比較。
- 結果は以下の通り(同じく dagezi さんのご指摘を受けて、修正しています):
- 自分が所有する携帯電話を使った場合、1つのメッセージ内に平均で何個のタイプミスを犯すかという割合では、iPhone オーナーは 5.6個、QWERTY型オーナーは 2.1個だった。
- 同じく自分自身の携帯電話を使った場合、1つのメッセージ内に平均で何個のタイプミスが残るかという割合では、iPhone オーナーは 2.6個、QWERTY型オーナーは 0.8個だった。
- iPhone オーナーと非 iPhone オーナーが iPhone で作業した場合を比較したところ、タイプする速さは(当然ながら)iPhone オーナーの方が勝ったが、タイプミスする確率はほぼ一緒だった。
- 数字キーのみの携帯電話のオーナーを見てみると、iPhone では1メッセージあたり平均で 5.4個のタイプミスが発生していたが、QWERTY型キーボードでは平均 1.2個、自分の携帯電話(つまり数字キーのみの電話)では平均 1.4個だった。
こんな感じ。結論として「数字キーのみの携帯電話から iPhone に乗り換えるのはいいが、QWERTY配列の携帯電話を使っている人は、乗り換える前にお店でタイプを試してみることをお薦めする」などというコメントも紹介されています。元のリリースではより詳細な結果が出ていますので、ご興味のある方はチェックしてみて下さい。
ただ個人的には、ちょっと iPhone に不利な実験かなと感じました。iPhone が登場してまだ間もないですし、実験に参加した iPhone オーナーは「最低で過去1ヶ月間使用」というレベルですよね。一方の QWERTY キーボード付き端末はずっと前から存在しているわけですから、正確を期すためには、「どの種類の携帯電話も使ったことがない人」を揃えて同じ実験をすべきだったのではないかと思います。
とはいえ、「最低1ヶ月使っただけでは iPhone でタイプミスする確率は減らなかった」という結果が出ているのですから、やはり「タッチスクリーンでタイプする」というのは新しい経験なのだという認識が必要なのでしょうね。どれでタイプしても問題を感じない、という人間が一般的になるのは、果たしてどれくらいの時間を要するのでしょうか。
< 追記 >
元記事(User Centric によるリリース)の内容を、何点か誤解して記事を書いてしまいました。ご指摘いただいた dagezi さま、どうもありがとうございました。dagezi さんも同じリリースを元に記事を書かれていますので、こちらもどうぞご覧下さい:
■ iPhoneはテキスト入力に向いていない (聖アンドレアスの失敗)
今後も「いやそれは違う」「何か誤解してるんじゃない?」という点がありましたら、ぜひコメントをよろしくお願い致します。
はじめまして、いつも参考にさせていただいています。
今回の iPhoneのテキスト入力のはなしですが、数字の解釈がちょっと違う気がします。
自分の blogでもたまたま取り上げましたが、2.6個と 0.8個というのは「間違いを最後まで残してしまった個数」だと思います。これは iPhoneでは誤りの修正が面倒くさい (21%の iPhoneオーナが虫眼鏡機能を知らないようですし) ことを示しているのでしょう。
あと、今回の実験では、iPhoneオーナは iPhoneしか使っていないように読めます。
自分も Releaseを読み直してみますが、確認していただければ幸いです。
投稿情報: dagezi | 2007/11/15 10:00
dagezi さん、コメントありがとうございます。
> あと、今回の実験では、iPhoneオーナは iPhoneしか使っていないように読めます。
おお、ご指摘ありがとうございます。読み返してみましたが、確かに仰る通りですね。
「iPhone ユーザーは6個のメッセージを、非iPhone ユーザーは合計18個のメッセージを打ち込んだ」とあるので、iPhone ユーザーがテストされたのは iPhone 上でだけ、ということで間違いないと思います。
> 自分の blogでもたまたま取り上げましたが、2.6個と 0.8個というのは「間違いを最後まで残してしまった個数」だと思います。
こちらについては、「間違いと知りつつ残したのか」「そもそも間違いにも気づいていなかったのか」という違いですね(結果的に「最終的に間違いがあった」という点は同じであるにせよ)。確かにリリースでは「虫眼鏡機能」にも言及があり、「iPhone ユーザーは間違いに気付かずに残してしまうのだ」という解釈も可能ですが、個人的にはどちらの解釈も可能だと思います。ただしあくまでもリリースを読んだ限りですので、より詳細なデータの公表か、別の実験が待たれるところですね。
投稿情報: アキヒト | 2007/11/15 10:55
> こちらについては、「間違いと知りつつ残したのか」「そもそも間違いにも気づいていなかったのか」という違いですね
いえ、「最終的に errorが残ったかどうか」の違いだと解釈しました。つまり iPhoneオーナーは 5.6個間違えたボタンを押したりし、いくつかは修正し、残った間違いが 2.6個だった、という解釈です。UIの実験である以上、途中で起きた間違いも重要な情報であるので。
投稿情報: dagezi | 2007/11/15 15:53
dagezi さん、再度のご指摘、ありがとうございます!
TypePad の障害が発生していたため、修正が遅くなってしまったのですが、再度リリースを読み直して修正しました。
仰る通り、5.6個という数字は文章作成中のミス、2.1個は最終的に残ったミスですね。ありがとうございました。
投稿情報: アキヒト | 2007/11/15 16:19