最近、場面と状況は異なるのですが「(Twitter やケータイでのメッセージのやり取りのように)短いコメントを発信する方が、ブログよりも楽」というような意見を何度か目にしました。その代表が、以前も取り上げた以下の記事です:
■ ブログは死にゆく技術か? (スラッシュドット ジャパン)
何か言いたいことがあったとき、「ブログ」という形で長文をまとめるのではなく、Twitter や Tumblr のようなマイクロブログ(ミニブログ)に短いコメントを書く/ソーシャルブックマークのコメント機能を使うことで済ませてしまう人が増えているのではないか、という意見。そう言われると、確かに自分にも当てはまるところがあります。何か思いついたら、とりあえずケータイから Twitter にアクセスして、そこに書き込んでしまうみたいな。あとで膨らませてブログのネタにしようとも思うのですが、それで満足してしまう/忘れてしまうからか、ブログにまで発展する割合はそれほど高くありません。
他にも「はてなブックマーク」などを見ていると、秀逸なコメントを残される方が多くいらっしゃいます。その方がブログでも意見されているという例ももちろん多いのですが、多くの場合、(IDとブログを結び付けていないだけかもしれませんが)コメントを書く以上の行為はされていません。またSNSに短い記事を大量にアップする、という方もいますし、「ブログはたまたま目立っているから『WEB2.0時代の代表的情報発信ツール』的な捉え方をされているけど、Google から見えにくいところではもっと盛んな情報発信が行われているのではないか」という気にさせられます。
とそんな思いでいるところで、こんな記事を読みました:
■ Friending, Ancient or Otherwise (New York Times)
人類の進化において、オーラルコミュニケーション(口頭でのコミュニケーション)の方が、文章によるコミュニケーションよりも長い歴史を持っている。インターネット上のコミュニケーションは、文章のやり取りというよりも「会話」に近いスタイルになっており、人間にとって本質的なコミュニケーション・スタイルに戻りつつあるのではないか――という内容。以下、少し引用すると:
“Orality is the base of all human experience,” says Lance Strate, a communications professor at Fordham University and devoted MySpace user. He says he is convinced that the popularity of social networks stems from their appeal to deep-seated, prehistoric patterns of human communication. “We evolved with speech,” he says. “We didn’t evolve with writing.”
「口頭(でのコミュニケーション)は、全ての経験の基盤となっています」と、Fordham University の教授であり、MySpace の熱狂的なユーザーである Lance Strate 氏は言う。ソーシャルネットワークの人気は、人類のコミュニケーションに深く根ざした、有史以前から続くスタイルに訴えるものがあるのではないか、と彼は述べた。「我々は話すことと共に進化しました。書くことと共に、ではありません。」
とのこと。ちょっと大げさですが、確かに書くよりも話すほうがラクですから、コミュニケーションのスタイルが「話す」に近いものに帰っていくのは自然なことなのでしょう。だとすれば、ブログ(僕はブログも十分「会話」に近いスタイルで行われるメディアだと思いますが)からSNSへ、ミニブログへ、SBMのコメントへ――とより「話す感覚のコミュニケーション/ツール」へと流れていくのも当然なのかもしれません。(この視点でいくと、例えば「ケータイ小説」は文章というより会話に近い存在、などという仮説が置けるかも?)
もちろんそれによって「ブログが死に絶える」「ブログは劣ったメディアだ」ということにはならないでしょう。長い文章で意見を言う、という方が適している場面も当然ありますし。しかし短いメッセージのやり取りがブログに劣っているわけではなく、時としてブログを超える知見が発信されることがある――ということだけは心に留めておく必要がありそうです。
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