Nick Carr 御大の"The Big Switch: Rewriting the World, From Edison to Google"を読んでいます。かつて電力が「必要な分を発電機でつくるもの」という概念から「必要な分を発電所(電力会社)から購入するもの」という概念に変わったのと同じように、必要なとき・必要な分だけコンピュータの処理能力を使う「ユーティリティ・コンピューティング」の時代が来るという話。この発想はごく当り前のものになりつつありますが、実際に時代はどこまで進んでいるのかを解説してくれています。
まだ読み終わっていないので感想は後にするとして、ちょっと面白い話が載っていたので引用。「ネットに接続された安い労働力により、様々なことが可能になっている」実例として、こんなケースが登場します:
More and more companies are figuring out ways to harness the power of free labor. Even police forces are getting into the act. In 2006, Texas marshals set up webcams along the border with Mexico and began streaming the video feeds over the Internet. People all around the world can now watch for illegal immigrants, clicking a button to alert the police to any suspicious activity. It's law enforcement on the cheap.
ますます多くの企業が、無料の労働力を活用する仕組みを考えるようになっており、警察組織すらもこの動きに参加している。2006年、テキサス州の執行官はメキシコとの国境付近にウェブカメラを設置し、インターネットでストリーミング中継を始めた。いまや世界中の人々が密入国者を監視し、クリック1つで怪しい行動を警察に通報できるようになったのだ。安い労働力による法の執行である。
残念ながらこのウェブサイトを見つけることができなかったのですが、発想は理解できますよね。しかしイタズラで通報ボタンをクリックする輩が出てきたり、密入国者を支援する組織が嫌がらせでクリックしまくるなんてことが出てきそうですが……まぁ何らかの措置を講ずれば、確かに役に立つシステムになるかもしれません。
似たような話として、先週の『世界ふしぎ発見!』で紹介されていた「ネッシー監視ウェブカメラ」を思い出してしまいました。こちらもメキシコ州の仕組みと同じ発想ですが、監視する地域はネス湖、といえば見つけようとするのはネッシー。どこまで効果があるかは分かりませんが、「世界中の人々が見守ることで、ネッシー目撃情報が急増するかもしれない!」と期待されているそうです。
こういった事例は『フラット化する世界』や『ウィキノミクス』でも出てきますが、企業での活用が主な領域でした。しかしそれは何も企業の専売特許ではなく、あるタスクが
- ネットを通じて不特定多数の人々が参加し、分散して処理することができる
- 誰でも間違えずに処理できるほど容易である
- 報酬の有無を問わず、参加することに意義や魅力を感じる
という内容ならば、公共機関や民間団体も「安価な労働力」の恩恵にあずかれるわけですね。日本は日本語という壁があるので「不特定多数の人々を集める」という部分が難点ですが、話題となっている(?)財政破綻する自治体を救うひとつの手段になるかもしれません。
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