毎日新聞社の英文サイト「毎日デイリーニューズ」上のコーナー「WaiWai」で、不適切な記事が掲載し続けられていたという例の事件。大規模な抗議運動が起きるまでに発展していますが、余波は「毎日jp」にまで波及しているそうです:
■ 「毎日jp」が自社広告だらけに、ネット上に深いつめ跡残る (ITpro)
事件の影響で毎日jpに出稿する広告主が激減、自社広告しか表示されていない状況になっているという記事。確かに現時点でも、トップには「まいまいクラブ」(毎日新聞の読者向けコミュニティ)や毎日新聞社の本の広告などしか表示されていません。まぁサイトからの広告収入で回っている会社ではないでしょうから、出稿が減ったところですぐに経営に影響が出るわけではないでしょうが、今後避けては通れない「ネット進出」という道に障害物ができたことは事実でしょう。
この記事を読んで思い出したのですが、実は昨日もご紹介した本『論より詭弁』の中で、毎日新聞社が過去(1970年代)に倒産の危機に立たされていたことが解説されていました。ご存知の方には何を今さら、的な話かもしれませんが、ちょっと引用しておくと:
この、論点のすり替えについて、詭弁を扱った書物で、よく利用される例を使って説明してみよう。これは「外務省秘密漏洩事件」という名で知られており、毎日新聞の西山太吉記者が外務省の蓮見事務次官と懇ろな関係になり、沖縄返還に関する日米両政府の密約を聞き出したというものである(注 蓮見事務次官はもちろん女性である)。
(中略)
これは外務省秘密漏洩事件の事例においても同じである。世間の人々も、もちろん、漏洩された情報の重要性は認識していた。だが、彼らは、それ以上に、情報を獲得した手段に嫌悪感を抱いたのである(だから毎日新聞は購買数を激減させ、翌年には会社更生法の適用を申請せざるをえない破目に陥った)。これは単純に、論点が、自分たちがより関心のあるものに変更されただけの話である。
こんな感じ。記事に対する消費者の嫌悪感、抗議運動。細部に違いはありますが、WaiWai も当初の「掲載された記事が不適切だった否か」という点から、「毎日新聞上層部の対応が適切だったか否か」という点に議論が移行しています。そこを毎日新聞社が理解しないと、WaiWai は第2の「西山事件」になってしまうかもしれません。
西山事件とその影響については、詳しい経緯が Wikipedia にまとめられています:
■ 西山事件 (Wikipedia)
実はこの一件でTBSの株を失っていたことが、後の楽天によるTBS買収騒動の遠因になった、などという見方もできるようです。
さて、このところ何人かマスメディア関係の方々にお会いする機会があったのですが、「マスゴミ」という言葉で揶揄されるような偏った思考の持ち主ばかりではない、という当然のことを再認識しました(中には非常識な人もいましたが)。どんな会社もそうですが、呑気に時間を過ごしている人もいれば、問題意識を持って働いている人もいるわけですよね。恐らく毎日新聞の社内にだって、今回の一件を忸怩たる思いで見ている社員がいると思います。そういった人々が、何らかの形で主導権を握るようなことになって欲しいものですが。
【余談】
■ 毎日新聞社の新しいサイト「毎日jp」 発表会に参加しました。
著名アルファブロガーやネットジャーナリストにお手伝いいただき、第三者の視点から「毎日jp」への助言および参加協力をしていただきます。
うーん、宣言通りブロガーに助言を仰いでいれば……少なくとも事件後の対応、もう少しうまくできたような。
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