Google が検索クエリのトレンドから、インフルエンザの流行状況を観測・予測するサービス"Google Flu Trends"を開始しました。オフィシャルブログでの解説はこちら:
■ Tracking flu trends (The Official Google Blog)
さらにこちらは、New York Times での紹介記事:
■ Google Uses Searches to Track Flu’s Spread (New York Times)
ちなみにサイト上では、次のように解説されています:
We have found a close relationship between how many people search for flu-related topics and how many people actually have flu symptoms. Of course, not every person who searches for "flu" is actually sick, but a pattern emerges when all the flu-related search queries from each state and region are added together. We compared our query counts with data from a surveillance system managed by the U.S. Centers for Disease Control and Prevention (CDC) and discovered that some search queries tend to be popular exactly when flu season is happening. By counting how often we see these search queries, we can estimate how much flu is circulating in various regions of the United States.
私たちは、インフルエンザに関連するトピックを検索する人の数と、実際にインフルエンザの症状を発症する人の数の間に、密接な関係があることを発見しました。もちろん、「インフルエンザ」と検索する人の全てが実際に発症してしまうわけではありませんが、インフルエンザに関連する検索クエリを全米から集めてみたところ、一定のパターンが浮かび上がりました。この検索クエリの結果を疾病対策予防センター(CDC)の監視システムと照合したところ、インフルエンザが流行する際にある特定の検索クエリ・トレンドが見られるようになることを発見しました。このクエリの数をカウントすること、米国の諸地域において、インフルエンザがどの程度流行しているかを見積ることができるのです。
とのことで、単に「インフルエンザ」と検索された回数から予測しているわけではないようですね(それであれば既存のサービスでも十分ですし)。さらに以下は、New York Times からの引用:
Tests of the new Web tool from Google.org, the company’s philanthropic unit, suggest that it may be able to detect regional outbreaks of the flu a week to 10 days before they are reported by the Centers for Disease Control and Prevention.
Google のフィランソロフィー部門、Google.org の実験によれば、このサービスはインフルエンザの流行を、CDCが報告するよりも1週間から10日早く予測できるとのことである。
何と、政府機関が把握するよりも早く、インフルエンザが流行することを予測できると。本当だとすれば、これまで Google が発表したサービスの中で最も重要なものの1つに違いありません。
念のため、たったいまのスクリーンショットがこちら:
現状は"Low"ということで、5段階評価の下から2番目の危険度。アーカンソーやミシシッピーなど中部の州を除いて、それほど危険はないようです。
しかしこのサービス、シュレーディンガーの猫というか、「このサービスが存在していることによってインフルエンザ関連の検索クエリを増加させてしまう」という影響は無いのでしょうか。まぁ Google 御大のこと、その辺はちゃんと考慮しているのでしょうが、どう考えているのか気になるところです。
インフルエンザの流行をネット上で把握、という観点では、以前どこかの記事で「ブログに書き込まれた内容を解析して予測する」という取り組みを行われている方々がいらっしゃることを読んだ気がするのですが……ちょっと思い出せないので、また気づいたら追記したいと思います。しかし検索クエリのトレンドからインフルエンザの流行が分かるのであれば、他の病気の流行や、犯罪の流行などの予測にも応用できるような。そして政府がそういった技術の開発を Google に依頼した時、Google はそれに応じるのでしょうか?そして、何を・どこまで予測することに合意するのでしょうか?もちろん検索クエリから何でも分かる訳ではないでしょうが、何だかまた倫理的問題につながっていく気がしないでもないなぁ、と感じた次第です。
日本にも前からあります。
MLインフルエンザ流行前線情報DB
http://ml-flu.children.jp/
有志小児科医の組織が毎日、まとめているホット分布図です。当方の
http://dandoweb.com/web2.htm
でも紹介しました
投稿情報: dando | 2008/11/13 17:47
dandoさん、コメント&情報ありがとうございます。
ご紹介いただいたサイトは、小児科医の方々が情報を収集・更新されているものなのですね。従来であれば、こういった手法の予測になっていたのが、今回の Google のサイトでは「不特定多数の(医療関係者ではない)人々が、それと知らずに入力した情報がカギとなる」という点で新しいものだと思います。
Google は同様の仕組みを他国にも展開する予定、とのことですから、日本にも導入されて、「MLインフルエンザ流行前線情報DB」との相乗効果が生まれると良いですね。
投稿情報: アキヒト | 2008/11/14 13:18