米 Amazon.com が展開している電子ブックリーダー"Kindle"。その第2世代である"Kindle 2"の出荷が始まりましたが、目玉の1つであった「テキスト読み上げ機能」で機能の一部制限が行われています:
■ Amazon Backs off Text-to-Speech Feature in Kindle (New York Times)
本のテキストを読み上げた声を聴けるという、いわゆる「オーディオブック」と呼ばれるものが既に流通しているわけですが、Kindle 2 ではオーディオブックでなくても(Kindle フォーマットの英文電子ブックであれば)全てのテキストを自動読み上げしてくれる機能が付いていたわけですね。これに対し、著作者団体が「著作のテキスト版と音声版は別物であり、音声版を提供する許可を取らずに自動的に読み上げることを可能にするのは著作権侵害である」という訴えを起こしており(参考記事)、Amazon 側はそれに対し譲歩する姿勢を見せていました:
■ 電子書籍端末「Kindle 2」の音声読上げ騒動、Amazon側が譲歩し、システム修正を約束 (hon.jp DayWatch)
で、結局 Amazon がどうしたか。New York Times の記事によると、
Amazon announced today it will let publishers decide whether they want the new Kindle e-book device to read their books aloud.
今日、Amazon は Kindle 電子ブックリーダーのテキスト読み上げ機能について、出版社がそれを許可するかどうかを選べるようにすることを発表する。
とのこと。詳細は不明ですが、ファイル毎にパラメータを用意し、それがオンでないと読み上げ機能が機能できないようにするのかもしれません。
うーん、別に日本国内では Kindle は流通していないので関係ないのですが、ちょっと残念です。確かに著作権を守ることも重要ですが、例えば視覚障害者にとってはこの機能があることで「読める」本の数は飛躍的に増加するでしょうし、健常者にとっても端末上の文字が読めない具合(New York Times の記事では運転中が例として挙げられていますが、日本のような国では通勤通学時の満員電車なんかも当てはまるかも)に、読み上げ機能が威力を発揮するはず。コンテンツの利用機会を増やす、という側面から見れば、今回の決定は一歩後退だと思います。
ただ Amazon は以下のように主張しているとのこと:
Amazon maintains that the feature is legal, and that it would in fact increase the market for audio books.
Amazon はこの機能が合法的なものであり、また逆にオーディオブックの市場を広げるだろうと訴えている。
現時点では Amazon にとっては Kindle の普及を促進する方が優先であり、ここで著作者団体と対立して Kindle フォーマットでの出版物が減ってしまうよりは、とりあえず彼らの怒りを和らげようと判断したのかもしれません。こうなれば「音声読み上げを許可したバージョンの方が売れている」というような状況が生まれて、出版社の側が音声読み上げに積極的になってくれると良いのですが。
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