ネットが悪や汚濁や危険に満ちた世界だからという理由でネットを忌避し、不特定多数の参加イコール衆愚だと考えて思考停止に陥ると、これから起きる新しい事象を眺める目が曇り、本質を見失うことになる。
3年前、大きな話題を呼んだ本の中で、その方はこんな警告を書かれていました。残念ながら、いままさにこの警告を必要としているのは、書かれたご本人かもしれません:
■ 日本のWebは「残念」 梅田望夫さんに聞く(前編) (ITmedia News)
■ Web、はてな、将棋への思い 梅田望夫さんに聞く(後編) (ITmedia News)
そう、冒頭の言葉は梅田望夫さんの『ウェブ進化論』に登場するもの。それから3年が過ぎたいま、梅田さんは日本のウェブを「残念」と評価し、それを「分析しようというモティベーションがそもそもない」とも仰っています。これが変節なのか、あるいはそもそも『ウェブ進化論』がタテマエで書かれたものなのかは分かりませんが、個人的に同書から未来を感じた一人として、非常に残念な気持ちでいます。
確かにこの3年間で、社会に劇的な変化が起きたわけではありません。また梅田さんが嘆かれているように、日本のネット(およびそこで交わされる言論)には低俗なものも数多く存在しています。いやぁ海外だって同じようなもんだろ、というもっともなツッコミはこの際控えておくとして、ネットの「善」の部分の利用が進むのではないかと期待していた方々にとっては、がっかりするような状況なのでしょう。
しかし、最近よく思うのですが、ネットに対して失望するのは早すぎるのではないでしょうか。確かにネットというものが登場してから長い時間が経過しています(ちなみに僕が初めてネットに触ったのは14年前でした)。しかし、いわゆる「Web2.0」的な状況が生まれ、人々が容易にコミュニケーションを行えるようになったのはここ4、5年のこと。だから罵詈雑言が飛び交っていても許してやれ、というわけではありませんが、例えば新聞や雑誌、テレビやラジオだって、何年もかけて明文化された規則・暗黙のルール等を形成してきたはずです。なぜネットだけがこうも簡単に「失望」されなければならないのでしょうか?
これから始まる「本当の大変化」は、着実な技術革新を伴いながら、長い時間かけて緩やかに起こるものである。短兵急ではない本質的な変化だからこそ逆に、ゆっくりとだが確実に社会を変えていく。「気づいたときには、色々なことがもう大きく変っていた」といずれ振り返ることになるだろう。
同じく『ウェブ進化論』中の言葉です。技術は簡単に進化できても、人間が進化することは容易ではありません。社会の変化はまさしく「緩やかに起こるもの」であり、もっと長い目でネットの行く末を見守っても良いのではないでしょうか。
そして当然ですが、見守りながら同時に正しいコースに導く努力をすることもできます。
はてなに限らず、生まれたばかりのベンチャーは欠点だらけである。それらを補うことはもちろん必要で重要だが、ベンチャーが「自社の粗探し」を最優先事項にしたら、存在意義などなくなってしまう。失敗しながら色々なことを学んでいけばいい。それよりも、個性・長所をじっくりと見極めて、それらを絶対に失わないようにすること、伸ばすこと。そういういちばん大切なことを見失わないようにすること。それを担保するのが私の重要な役目の一つだ。
これは何もベンチャーに限らず、ネットや、新しい技術全般に言えることでしょう。失望するには早すぎるし、諦めれば思考停止に陥ってしまいます。梅田さんには、ぜひいまいちど『ウェブ進化論』を読み返されることをお勧めしたいと思います。
梅田さんの本もITmedia Newsの記事も読んだのでおっしゃってる事がよくわかっておもしろかったです。
確かにまだ成熟してない世界だけに先を見る目を持つ梅田さんには失望しかうつらないのでしょうね。。
僕はだからこそ楽しみでもあるのですが。。確かに失望するのには早すぎます><
投稿情報: なかにしゆうすけ | 2009/06/03 16:30
なかにしゆうすけさん、コメントありがとうございます。
そうですね、失望しているということは逆に希望があったわけで、それが大きすぎたが故に、いまの失望となって現れているという面もあると思います。その意味では、あまり責めてしまうのも……という気はしています。仰る通り「だから今後が楽しみだ」という姿勢に向かっていけることを期待したいですね。
投稿情報: アキヒト | 2009/06/09 13:06