ということで、今日のシロクマ日報で紹介した「英国政府関係者向け Twitter ガイドライン」。なかなか参考になるので、内容を一部紹介してみたいと思います。
(※8月3日追記:作者の Neil Williams さんから了解をいただき、全文を日本語訳してみました。ご興味のある方は、こちらのリンクからご確認下さい。)
ちなみにこちらが原文。Scribd のアカウントを持っていれば、PDF形式等でダウンロードも可能です:
Template Twitter Strategy for Government Departments【リスク】
まずは4章の「リスク」。文字通り政府系 Twitter が気をつけるべきリスクが解説されているのですが、対策が参考になります。いくつか抜粋してみると:
- 人手不足、または許可が下りないことが原因で、一般ユーザーからの「会話に参加しろ」「質問に反応しろ」という声に対応できず批判される
【妥協策】 Twitter ポリシーを明確にして、一般ユーザーの期待がふくらみすぎないようにする/個別のメッセージに対してではなく、「テーマ」に回答するようにする。 - Twitter の精神を理解していない、という批判が起きる(堅すぎ、宣伝ばかり、人間味がないなど)
【妥協策】 配信するコンテンツの種類を豊かにする。ただしある程度の批判は避けられないことを覚悟する。 - 「流行りものに飛びつくな」「税金のムダ遣い」「費用対効果を考えろ」などといった批判が起きる。
【妥協策】 前述のようなポリシーの明確化を行うと共に、後述するようなコンテンツに関するルールを守る。
などなど。この辺は会社の中で「Twitter 始めましょうよ!」などという勇気のある提案をしたい方には、会社のオヂサマ方を説得する際にも使えるかもしれません。
【文章のトーン】
5章2項に書かれている"Tone of Voice"。どんな雰囲気の文章を書くべきか、という話ですが、こうアドバイスされています:
Though the account will be anonymous (i.e. no named officials will be running it) it is helpful to define a hypothetical ‘voice’ so that tweets from multiple sources are presented in a consistent tone (including consistent use of pronouns).
The Department's Twitter ‘voice’ will be that of the Digital Media Team, positioning the channel as an extension of the main The Department website – effectively an ‘outpost’ where new digital content is signposted throughout the day.
アカウントは匿名、つまり担当者の名前を出さない形で運営されることになりますが、仮想的な「声」を定めて、複数のソースから情報を配信する場合でも一貫性が感じられるようにした方が良いでしょう。
本省の Twitter では、デジタルメディアチームが「声」を作り上げており、Twitter を本省の公式サイトの延長線上にあるものと位置づけています。本サイトの「前哨基地」というわけです。
ということで、担当者の名前を出さないにせよ「中の人」が感じられるようにすべきである、と。間違っても「ウチの部署のニュースも載っけてよ」と言われた時、持ち込まれた資料のタイトルをコピペして終わり、ではいけないわけですね。
【コンテンツに関するルール】
5章4項です。シロクマ日報で一部ご紹介しましたが、全体を載せておきましょう:
- 様々なコンテンツを: 後述の「コンテンツの種類」を参考に、様々な内容を投稿して関心を引くように。
- 人間らしく: Twitter ユーザーは「機械的な情報発信をし過ぎること(RSSフィードとの連動など)」や、プレスリリースのヘッドラインをそのまま流用することを嫌う。メッセージの内容を調整するだけでなく、文章のトーンもくだけた感じにして、Twitter 向けに編集し直した方が良い。
- 更新頻度は高く: 最低でも1営業日につき2回、最大で10回更新を行うこと。またフォロワーのタイムラインを(こちら側の発言で)いっぱいにしてしまわないように、更新には最低で30分の間隔を開けること(ただし@リプライの場合や、緊急事態/特別なイベントの場合を除く)。
- Re-Tweet を念頭に置いて: 重要なアナウンスを Re-Tweet してもらうために、メッセージは132字以内に収まるように。
- タイムリーに: Twitter の持つリアルタイム性を損なわないために、公式 Twitter では当日の話題や、近い将来に行われるイベントについて発言が行われるべきである。
- 信頼されるように: Twitter 上のメッセージには時折「遊び」の要素が含まれるかもしれないが、各省庁の目標との整合性は守られなければならない。
- 包括的に: 自分たちだけの情報を発信していては批判を受ける。ソーシャルメディアが持つ「知識の共有」という文化を守り、関連情報を発信したり、他の関係機関の発言を Re-Tweet するといった行為を行うように。
- 目的を忘れないこと: Twitter は省庁のウェブサイトの延長線上にあるものである。政策を形成・紹介することが目的でなくてはならない。
これは企業 Twitter の場合でも大いに参考になるでしょう。Re-Tweet を念頭に置いて、というのは最近意識され始めているポイントですね。
【コンテンツの種類】
5章5項にある、「こんなコンテンツを流したらどう?」というアドバイスです。こちらも参考になるので、項目だけを箇条書きにしておきましょう:
<既存のウェブコンテンツの活用>
- 省庁の公式ウェブサイト上で発表されたプレスリリース、声明等の紹介
- イベントやキャンペーン告知
- YouTube に投稿した動画・Flickr に投稿した画像の紹介
- 公式ブログに投稿された記事の紹介
- その他、公式サイト上にアップされた内容で関係性のあるもの
- 関連組織が用意したコンテンツ
<Twitter 専用コンテンツによる付加価値醸成>
- 大臣の動向に関する最新情報
- 大臣の意見・感想(「大臣の生の声」的なイメージ。重要イベントの直後に感想を聞くなど)
- イベントの発表や実況中継
- ウェブ上にある関連コンテンツの紹介(政府関連サイトからだけでなく、ウェブ全体から情報をピックアップすることで、質の高い情報を配信するポータル的な存在になってしまおうという戦略)
- Q&A(一般からの質問に答えるだけでなく、政府側からも質問して、世論を探るツールにしようというアイデア)
- 緊急時におけるコミュニケーションルート
「既存コンテンツの活用」は当然として、「付加価値醸成」の方は確かに面白いアイデアです。いろんな審議会で、津田大介さん的な人物が tsuda るのではなく、「公式アカウントが tsuda る」とか……日本では当分先になるんだろうなぁ。
【ハッシュタグのポリシー】
5章7項でハッシュタグについての言及があり、なんと以下のようなポリシー(いつハッシュタグを入れるか)が紹介されています:
- イベント等の実況を行う場合
- 緊急時における情報発信の場合(この場合、既に一般的なハッシュタグが存在しているはずであり、それを使うこと)
2番目の緊急時におけるポリシー、非常に大切だと思います。「政府だからオレたちがハッシュタグを決める」という姿勢ではなく、「少しでも情報を伝わりやすくするため、多くのユーザーが既に使っているタグを使おう」という姿勢。ここだけは忘れずに見習いたいかも。
【Re-Tweet のポリシー】
さらに5章9項で、Re-Tweet のポリシーまで定められています。政府の Twitter だけに、RTを求められるケースが多いとのこと。そういった「受動的RT」の場合、ケースバイケースで考えるべきとしながらも、「他の政府系機関」「利害関係者」「NPO関係機関」からのリクエストには応じるとしています。
また面白いのが、前述の「コンテンツの種類」で紹介されていたような「関連情報のポータル」的な存在になるため、政府側からも積極的にRTすべきという発想。この「能動的RT」の場合、以下のようなコンテンツを対象にすべきとされています:
- 研究成果や統計情報
- 関連する業界や企業のイベント
- 関連するセレモニーや受賞等の紹介
【Twitter の更新にはどれくらい時間がかかる?】
5章3項で「Twitter は他のチャネルに比べて運営に手間がかからない」と解説されており、実際に付録Cで実在のアカウントの運営時間が紹介されています。以下、付録Cだけ訳しておくとこんな感じ:
- 首相官邸(DowningStreet): 1日20分(1日につき2~3回更新。加えて何個か@リプライを投稿するため、1日5~6件のメッセージを投稿)
- 外務英連邦省(foreignoffice): 1日45分以下
- コミュニティ・自治省(CommunitiesUK): 1日45分~1時間
- 中央情報局デジタル政策グループ(DigiGov): 1日5~10分
- 国際開発省(DFID_uk): まだ標準的なパターンはない。質問に答えるなら時間は取られないが、大きな発表を行う場合は別。
- 貿易投資総省(UKTI): Twitter と LinkedIn 合わせて5分~2時間。その中にはオンライン上の会話を見つけて、参加することも含まれる。
【英国の政府系・政治系・メディア系 Twitter アカウントリスト】
付録Bにまとめられています。結構あるので、チェックしておくと良いかも。
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ということで、ダラダラと気になった部分をピックアップしてしまいましたが。全体を通して、(企業か政府かを問わず)公的なアカウントを運営しようという際に非常に参考になると思います。中身に賛成するかどうかは別にして、どんな側面をあらかじめ検討しておかなければならないのかを把握することにも役立つでしょう。時間のある方は、是非全体を確認してみて下さい。
< 7月29日追記 >
作者の Neil Williams さんに「全文日本語訳して公開してもいい?」とメールしてみたところ、快諾していただきました!ということで、僕のつたない翻訳になりますが……近日中に公開いたしますので、少々お待ちください。
< 8月3日追記 >
翻訳が完了しました。よろしければ、以下からご確認下さい:
政府機関のための Twitter 戦略テンプレート/Template Twitter strategy for Government Departments
恐らく細かな誤訳は多々あると思いますので、問題点があればこちらのコメント欄でご指摘いただくか、僕の Twitter アカウント(@akihito)までメッセージをいただければと思います。いただいたフィードバックは随時反映し、こちらのファイルに上書きしていきますので、どうぞよろしくお願い致します。
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