明日は衆院選。日本の政治も郵政をめぐって大騒ぎした時期がありましたが、海外でも郵政サービスはネットに押されて大苦戦している……はずが、どうも状況はちょっと異なるようです:
■ As Internet Booms, the Postal Service Fights Back (New York Times)
米国の郵政サービスの現状について。確かにインターネットの普及によって郵便が不要になった面はあるものの、関係者はそれほど不安視してませんよという話になっています。その背景にある理由は、ずばり「ダイレクトメールが伸びているから」:
The Postal Service is resigned to losing some business to online alternatives. But postal officials also say that, with the Internet in full swing, the volume of mail hit a record in 2006. That year, the Postal Service handled 213 billion pieces of mail because, even as it lost some business to the Internet, advertising mail was booming.
郵政公社は、郵便需要の一部をオンラインサービスに奪われてしまうことをあきらめている。しかし郵便関係者は、インターネットが十分に機能していたにもかかわらず、2006年度の売上が最高記録を達していたことを指摘する。この年、郵政公社は2,130億通の郵便を配送したのだが、それはインターネットに需要を奪われたにもかかわらず、郵便広告が急成長したからだった。
最近は景気後退で一時的な後退を見せているものの、景気が回復すればまた広告予算が増えて、郵便需要も増えるはず……と観測されているのだとか。もちろん個人間での連絡用の郵便など、二度と戻らない需要があることを自覚しつつも、ダイレクトメール需要に相当期待がかけられているようです。
ではなぜ郵便による広告がそれほど見直されているのか。だいたい予想はつくかもしれませんが、その理由はこんな感じ:
Referring to studies showing that advertising mail engages consumers, Mr. Wieser said that mail has a “tactile character that’s difficult to replace with online equivalents.”
“You are sometimes overwhelmed by spam,” Ms. Plonkey said, but with paper mail, “the message stays. You don’t delete it. We find that it’s tremendously effective.”
郵便広告は顧客の関心を引く力があるという研究結果を引き合いに出しつつ、Wieser 氏(※マグナというメディアエージェンシーの関係者)は Brian Wieser)は郵便には「実際に触れて感じられるという特徴があり、これはオンラインでは再現できない」と指摘する。
「スパムメールに圧倒されてしまうことがあるだろう」と Plonkey 氏(※郵政公社のセールス担当バイスプレジデント)は述べる。しかし紙の郵便なら、「メッセージは手元に残る。コンピュータのように『削除』というわけにはいかない。それは非常に効果的」というわけだ。
まぁ郵便サービスの関係者が言っているので、ポジショントークには違いないのですが、一定の効果があることは確かなのでしょう(メールが郵便を駆逐することはあり得ないわけですし)。さらに言えば、最近メール上のコミュニケーションが(よりスパム行為が行いにくい)ソーシャルメディア上へと移行し、にも関わらずソーシャルメディア上での効果的なマーケティング手法が確立されていない、という側面も影響しているのではないでしょうか。で、使い古されていて限界もある「郵便広告」という手法に帰らざるを得ない……完全に想像の域を出ませんが、記事を読んでそんなことを連想しました。
実は記事の後半で、郵便が伸びているもう1つの理由が示されているのですが、それは「オンラインDVDレンタルサービスやネット通販が増えているため」。いくらネットとはいえフィジカルなモノを電送するわけにはいかないので、それらが増えれば当然郵便や宅配サービスが流行ると。そんなわけで、ソーシャルメディアとネット通販の時代が進化すればするほど、再び郵便という古典的な手段に脚光が浴びるのかもしれませんね。
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同じく米国の郵政公社が立ち上げたARサービスについて。余談ですが、こうしたサービスを立ち上げるような努力を続けているからこそ、ネット時代にも支持される存在であり続けているという側面があるかもしれません。個人的には米国に住んでいた時、切手のデザインがとにかくバラエティに富んでいて、行く度に必ず違うデザインの切手が置いてあり、楽しかったことを覚えています。裏がシールになっているのも使いやすかったっけ……。
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