なかなか気になる研究結果です。何となく感じていた……という方も多いかもしれませんが、何かを学ぶための勉強法を比較した場合、テストを受けるのが最も効果的であるとのこと:
■ To Really Learn, Quit Studying and Take a Test (New York Times)
(※1月26日訂正:リンクが誤っておりましたので、修正しました。ご指摘ありがとうございます!)
パデュー大学の研究者らが行った研究結果について。それによると、被験者(大学の学生)にある文章を読んでもらい、1週間後にその内容を思い出してもらうという実験を行ったところ、①文章を読んだ後で内容を思い出すテストを実施する、②何度も文章を読み返して頭に詰め込む、③読んだ文章を図形でまとめ直す、の3つのグループのうち、①のテストを実施したグループが最も成績が良く、他のグループよりも覚えている量が50%多かったそうです。
また面白いのが、被験者に「自分が1週間後にどのくらい覚えていると思うか」という質問も合わせて行ったところ、逆に①のグループの方が「覚えている」という自信を感じていた人が少なかったのだとか。確かに一夜漬けのように何度も繰り返し文章を読んだり、読んだ文章をまとめたりした方が「覚えたような気持ち」になれますよね。しかし実際には、テストを受けるという方法の方がよっぽど効果的だったと(むしろ一夜漬け方式の方が思うほど効果は無いのだ、と言うべきかもしれませんが)。
ただ、なぜテストを実施することが効果的なのか、その理由は明らかになっていないそうです。思い出すことによって、頭の中で知識の再構成が行われ、後で参照する際のインデックスのようなものが作られるのでは?という仮説があるようですが、はっきりとは分からないとのこと。
またこんなコメントも紹介されています:
“When you’re retrieving something out of a computer’s memory, you don’t change anything — it’s simple playback,” said Robert Bjork, a psychologist at the University of California, Los Angeles, who was not involved with the study.
But “when we use our memories by retrieving things, we change our access” to that information, Dr. Bjork said. “What we recall becomes more recallable in the future. In a sense you are practicing what you are going to need to do later.”
UCLAの心理学者、Robert Bjork(今回の研究には携わっていない)はこう語っている。「コンピュータのメモリから何か情報を取り出す場合は、何の変化も起きない。単に再生するのと同じだ。」
しかし「何かを思い出そうと記憶を使う場合には、私たちの脳はそこに至る経路を変化させる」とBjork博士は言う。「一度思い出すと、その情報はさらに思い出しやすくなる。後で必要となる行為を、いま練習するようなものだ。」
つまりテストを受けるという行為が、「思い出す」という行為の予行演習になる可能性があると。さらにこんな解釈も:
“The struggle helps you learn, but it makes you feel like you’re not learning,” said Nate Kornell, a psychologist at Williams College. “You feel like: ‘I don’t know it that well. This is hard and I’m having trouble coming up with this information.’ ”
By contrast, he said, when rereading texts and possibly even drawing diagrams, “you say: ‘Oh, this is easier. I read this already.’ ”
ウィリアムズ大学の心理学者、Nate Kornellは次のように述べている。「苦労は学ぶことを助けてくれるのだが、自分が学んでいないような錯覚を起こしてしまう。『よく分からないな。この部分は難しくて、思い出すことができない』という気分になるだろう。」
それとは対照的に、文章を繰り返し読んでいる場合、また恐らく図形にまとめている場合にも、「『これは簡単だ。前にも読んだことがあるぞ』という気分になってしまうのです」と彼は言う。
確かにテキストを再読していると、(再読だから当然であるにも関わらず)頭に情報がすんなり入ってきて、自分がよく分かっているような錯覚を起こしてしまいますよね。しかしテストで「覚えていない」という事実が明らかになれば、脳はより緊張感を持って学ぼうとするようになると。理由はどうであれ、どうやら「テストを受ける」という行為に「学んだ情報を後から取り出しやすくする」という効果があることは確かなようです。
何か試験を受ける場合には、練習問題を行う時間をこまめにはさむこと。あるいは関連参考書を選ぶ場合には、練習問題が多く含まれているものを選ぶ、あるいは参考書と同時に練習問題集を買うことをケチらないこと。また仕事に関係する本やビジネス書を読む場合には、「読んだ」で脳が満足してしまわないように、1章ごとに本を閉じて「この章に書いてあったことは何だっけ?」と思い出す時間を取ること。今回の実験結果を日常生活での行動に移すとしたら、こんなところでhそうか。
冒頭の New York Timesへのリンクが間違っているような…
正しくは↓こちらでしょうか?
http://www.nytimes.com/2011/01/21/science/21memory.html
投稿情報: 輪王ひろみ | 2011/01/26 06:45
輪王ひろみさん、ご指摘ありがとうございます!
仰る通り、リンクが誤っていました。
ただいま訂正させていただきました。
投稿情報: アキヒト | 2011/01/26 13:06