米国のブログネットワーク"Gawker Media"の創業者Nick Denton氏が、インタビュー記事の中でこんなことを語っています:
I consume most of my news in email and (more recently) Facebook. I think Zuckerberg has created the personalized news engine we always dreamed of. My friends are a pretty good proxy for my tastes. And it's a lot easier to enter and prune a friend list than it is to define one's tastes by keyword.
ニュースの大部分はメールか、最近ではFacebook上で読んでるよ。ザッカーバーグは我々がずっと願っていた、個人毎にカスタマイズ可能なニュース・エンジンを創り上げたんじゃないかな。友人というのは、自分の好みの代わりになってくれる存在なんだ。キーワードで自分の好みを表すよりも、フレンドリストを手入れする方がずっと楽だしね。
自分と同じ趣味・嗜好を持つ人々とネットワークを築いておけば、彼らを経由して流れてくる情報が、自分の趣味・嗜好に合わせたものになっている――これはまさしく、『リアルタイムウェブ-「なう」の時代』の中でも触れた「ソーシャルフィルタリング」の概念を明確に表した言葉と言えるでしょう。そして同時に、SNSなどのソーシャルメディアが力を得つつある理由も示すものでもあります。
しかしSNSは、ソーシャルフィルタリングを実現するためだけの存在ではありません。学生時代の友人と旧交を温める、以前職場でお世話になった人々の近況を知るなど、文字通り「ソーシャルな」つながりを維持することにも使われます(ある意味でこちらの方が本筋と言えるかもしれません)。その場合、「いまの自分の興味と違うから」という理由でソーシャルグラフを整理する、すなわち一部のユーザーに対する友達登録を解除したり、フォローを外したりできるでしょうか?そんなの気にしないよ、という方も中にはいるかもしれませんが、多くの方々は躊躇するはずです。
ただ、新しいウェブサービスの上で、新しいソーシャルグラフをつくるという場合は違います。いまの自分の興味範囲に合わせてフォローする人/しない人を選んだり、あるいは「友人」をグルーピングする機能があれば、それでさらにフィルタをかけることができるでしょう。特に従来から使っているソーシャルメディアの上で、「ソーシャルフィルタリング」という状況を(名前を知っているかどうかは別にして)理解あるいは体感していれば、新しいツール上での設計はしやすくなるはずです。従って後発のソーシャルメディアであればあるほど、ソーシャルフィルタリングが威力を発揮する可能性というのは高くなるのではないでしょうか。
個人的な話で恐縮ですが、いま自分自身の興味に近い情報はTwitter経由ではなく、Facebook経由で来ることが多くなっているような気がします。もちろんFacebookにはニュースフィードに「ハイライト」機能(言及やコメントの多いコンテンツを自動的に上位に表示する機能)という、重要なフロー情報をストック化する仕組みがあることも大きいのですが、突き詰めて考えると上記のような「ソーシャルグラフの整理」がある程度できていることに起因するのではないか?という結論に至っています。Twitterの方は意図的にフォロー数を多くすることで、雑多煮的な情報が流れ込んでくるのを楽しんでいるという面があるので、別にどちらが良いというつもりは全く無いのですが。
ということで、いま「Facebookは日本に定着するか?」的な議論が起きていますが、少なくとも過去の経験を活かしてFacebookをフル活用する人々というのは増えてくるのではないでしょうか。「Twitterがあるからいいよ」という人ほど、逆にFacebookを本格的に使い始めた時に感じるメリットは大きいのでは、という気がしています。
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