通信インフラまで被害を受けなければという前提があるものの、個人が常に身につけている可能性の高い携帯電話は、災害時に貴重な情報を迅速に伝えるメディアとなり得ます。先ほどの東日本大震災でも様々な活用事例が報告されていますが、米国ではFEMA(Federal Emergency Management Agency of the United States、連邦緊急事態管理庁)とFCC(Federal Communications Commission、連邦通信委員会)が中心となって、新たな災害情報配信サービスを立ち上げる計画が進められているとのこと:
■ Cellphones get emergency alerts (USA TODAY)
そのサービスの名は"PLAN"(Personal Localized Alerting Network)。災害発生時に、政府の担当機関の権限において、指定された地域内にある全ての携帯電話にテキストメッセージ(当然ながら災害関連情報を伝える内容)を送るというもの(具体的なサービス名は明言されていませんが、どうやらFEMAはドコモの「エリアメール」など、日本の携帯電話向け緊急地震速報サービスをお手本にしているようです)。まずはワシントンD.C.とニューヨーク市への導入が今年末までに、その他の主要地域については来年4月までに導入することが計画されています。
現時点でこのPLANサービスには、AT&T、Sprint、T-Mobile、そしてVerizonの主要キャリアが対応する予定とのこと。ただ端末側でも対応する必要があり、一部のスマートフォンではアプリケーションのアップデート程度で済むものの、PLAN対応/非対応の機種が出てきてしまうようです。
そして気になる運用面の話ですが、以下のような記述があります:
Consumers are automatically signed up for alerts, but they can opt out of alerts relating to imminent threats to life and safety and Amber Alerts. However, they cannot opt out of presidential alerts. "Think about the South a couple of weeks ago," Genachowski says. You could alert "a particular local community that the tornado's path has changed: 'It's coming to your community. Evacuate.' Or, 'The tornado is much stronger than previously anticipated. Take action.' It's very important."
Before or during an emergency or terrorist threat, the alerts will be initiated by local, state or government agencies. Once FEMA and PLAN have ensured that an alert is valid, it will be forwarded to wireless providers, which will relay the message to consumers.
消費者は自動的にこのサービスに加入することになるが、生死に関係する緊急情報、およびアンバーアラートについてはオプトアウトが可能である。しかし大統領から発せられる警告メッセージについてはオプトアウトできない。「数週間前の米国南部の状況を考えてみて欲しい」と(FCC委員長の)ゲナコウスキー氏は述べる。「特定の地域に対して、『竜巻の進路が変わったので避難して下さい』や、『竜巻の勢力は想定されていたよりも大きくなっています。対応を』などといった警告を行うことができる。これは非常に重要なことだ。」
何らかの災害、もしくはテロ行為の発生前・発生中については、警告メッセージの送信は自治体や州政府の関連機関のイニシアチブで開始される。そしてFEMAおよびPLANによってメッセージが妥当と判断されてから、その内容が各キャリアに転送され、そこから消費者に対して送信が行われる。
とのこと。FEMAおよびPLAN(の運営事務局)が間に入る形になるのがちょっと不安を抱かせますね……迅速で、現場の状況に即した情報配信が行われるのかどうか、運用面ではまだまだ未知数といったところかもしれません。
ただいずれにせよ、技術面でこうしたシステムが整備されることは防災・減災の面でプラスになることは間違いないですし、運用ノウハウも次第に蓄積されて行くことでしょう。またそれこそ日本における関連サービス運用の知見を提供したり、逆にPLAN運用開始後の状況をケーススタディ的に利用したりといった交流が行われることで、災害対策における携帯電話の活用がより進んで行くことになるのではないでしょうか。
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