スマートフォン一台あれば、誰でも、どこからでも生中継や実況ができる時代。もはや遅すぎという感もありますが、英BBCが記者向けに専用アプリを開発中とのこと:
■ BBC developing new iPhone app for field reporters (Journalism.co.uk)
アプリはiPhone/iPad用で、データをBBCのシステムに直結させることで、映像もしくは音声による生中継が可能になるそうです。例えばどこかで事件があったとして、これまでは中継車やらカメラマンやらレポーターやらがドヤドヤと駆けつけなければならなかったのが、現場に身一つで乗り込んだ記者が中継まで行えると。当然画質や音質の問題は残るでしょうが、報道のあり方が革命的に変化するかもしれません。
それは迅速性や遍在性というだけではなくて、例えば集団では入れないような場所まで入って行けるとか、そういった点も含めて「機動力が飛躍的に高まる」という可能性があるのではないでしょうか。また現場からの映像・音声が編集というタイムラグを経ずに、そのまま流れるということは、マスメディアのリアルタイム性という側面に大きな影響を与えることでしょう。
ただこのアプリは同時に、「記者とはどんな存在なのか」を問い直すものになるかもしれません。僕はこのニュースを初めて聞いた時、てっきり「App Storeで無料配布して、世界中から送られてくる生中継映像・音声をBBCサイトに集約、ニュース性の高いものを選択して視聴者に見せる」的な試みを行うものだと思っていました(実際にBBC内部には"UGC Hub"という部署があり、20名以上のスタッフが視聴者から送られてくる第一報を精査しているそうです)。どうやらそうではなく、あくまでも自社のスタッフに使わせるアプリのようですが、サーバ側の負荷といった問題を考えなければ一般に配布することも可能でしょう(実際にCNNなど、いわゆる「市民ジャーナリスト」向けにアプリを提供している企業が存在します)。
仮にそうなった場合、記者と一般人を分ける「明確な差」というものが生まれるかどうか――例えばアングルが優れているとか、取材対象に対して適切な質問をするとか、そういった違いが(視聴者がそれと気づく程度まで)出てくるものなのでしょうか。あるいはBBCが一般向け配布に踏み切らなくても、市民ジャーナリストを活用している他のマスメディアに比べ、「自社スタッフ+リアルタイムウェブ技術」方式を採用したBBCの方が明らかに優れている、という評価は生まれるのでしょうか。もしくは、一般人の方が視聴者のニーズに合う中継ができた、などという評価が出てくる可能性は?
アプリの使用が開始されるまで、まだ一ヶ月ちょっとかかるとのこと。なのでこの答えが出るまでにはしばらく時間がかかりそうですが、年末ぐらいには面白い結果分析が出てきそうです。あるいはBBCの後に続くマスメディアが出てくるのかどうか……。
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