「顔認識技術で個人の社会保障番号まで割り出せる」話がネットを賑わせていますが、以前から画像解析技術がもたらすリスクについては指摘されており、いよいよ来るべき時代が来たというところかもしれません。
しかし軍関係者にとっては、この程度の分析では満足できないようです。SF的軍事技術研究でお馴染みのDARPA(米国土安全保障省)が、より高度な情報を引き出せる画像/映像解析技術の研究をスタートさせるとのこと:
■ DARPA software to spin "dumb" photos or video into intelligence (Network World)
その名も"Visual Media Reasoning (VMR)"(直訳すれば「視覚的メディアに対する推論」といったところ)という技術で、対象となる画像/映像から「これはいつ・どこで撮影されたものなのか、写っている人物は何者なのか」といった情報を引き出すことを目的としているそうです。DARPAからリリースされている資料によると、
Our adversaries - for example, insurgents and terrorist groups - frequently use video, still and cell phone cameras to document their training and operations and occasionally post this content to widely available websites. The volume of this visual media is growing rapidly and is quickly outpacing our ability to review, let alone analyze, the contents of every image. The VMR technology will serve as a "force-multiplier" by extracting tactically relevant information for the human analyst and alerting the analyst to scenes that warrant the analyst's expert attention. The result – VMR – will be an enhanced capability to generate the intelligence required for successful counter-insurgency and counter-terrorism operations.
反政府組織やテロリストなど、我々の敵はしばしばビデオやカメラ、携帯電話内蔵カメラ等を使用し、訓練や活動の様子を撮影、一般に公開されているウェブサイト上に投稿している。こうした視覚的メディアの量は急速に増加しており、我々の分析能力はそれに追いつくことができない状況だ。VMR技術は人間の分析官に対して戦術的に関係性のある情報を提供し、注意が必要な状況を警告することで、我々の力を拡大してくれるだろう。結果として、反政府活動やテロ行為への対抗措置を成功させるために必要な情報を生成する能力が、VMRによって拡大されるのだ。
と解説されており、要はウェブ上にある無数の画像/映像を自動でチェック、その中から注意すべきものをピックアップして、人間による詳細な分析を開始するきっかけを与えるという運用法が想定されているようです。どこまでの精度が実現できるのかは分かりませんが、例えば一般の人々がウェブ上に公開した何気ないスナップ写真から、テロリストの活動が察知されて詳細な分析へと回される――などという世界が到来するのかもしれません。
現実を写し取った1枚の画像や1本のビデオ、あるいは1件のツイート自体には大した情報価値はありません。しかしそれが大量にウェブ上に蓄積されているという状況と、その膨大なデータを一気に解析する技術さえあれば、まるで神にでもなったかのように世界を俯瞰する力を生み出すことができるわけですね。悪用されないことを願うばかりですが、技術革新のスピードを考えると、政府レベルではなく一企業のレベルでVMR的な技術が普及するという可能性も低くはないと思います。
今日はシロクマ日報の方でもDARPAネタを取り上げていますので、興味のある方はこちらもどうぞ:
■ DARPA、ソーシャルメディアの監視研究を開始
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