通常なら出会えない人物ともつながることができるのがソーシャルメディアの利点のひとつですが、出会うのは好ましい人物だけとは限りません。改めて指摘するまでもなく、ネットで知り合った相手から犯罪行為を受けるという事態が発生するようになっており、どう防いでゆくかが大きな課題となっています。そしてこの問題について、米ルイジアナ州の州議会で「性犯罪を犯した人物はその犯罪歴をSNSのプロフィール上で明記しなければならない」という法案が可決され、今年8月から施行されるそうです。
ロイターの報道によると、こうした措置は全米でも初めての試みと思われるとのこと。ただし米国には性犯罪者の情報(犯罪歴や住所など)を一定期間公開するという制度があり、彼らの居住地をAR(拡張現実)で示すというアプリまで登場しています。またルイジアナ州に関して言えば、性犯罪者のソーシャルメディア利用を制限する法律が2011年8月に成立していましたが、米地方裁判所から憲法違反であるとの判決が下されています。ならば……という判断かどうかは分かりませんが、容認されそうな範囲内の措置として「プロフィールへの明記義務付け」という案に至ったのかもしれません。
しかしどの程度の実効性があるのか疑問に感じますが、そもそも性犯罪を犯した人物に対して、近隣の警察署や学校などといった機関に情報の届け出を強制する法律が存在しており、その修正として「SNSプロフィール上での明記」が追加されるとのこと。違反した場合には禁固や罰金などの罰則があり、しかも最長で懲役20年という厳しいものです。ただ明記すれば利用そのものは禁止されないということで、ソーシャルメディアが仕事や私生活においてますます重要なツールとなる中では、「犯罪者に更生の道を開きつつ再犯リスクも回避する」という難しいバランスを取るための1つのアプローチとなるでしょう。
ちなみにFacebookに関して言えば、既に「有罪判決を受けた性犯罪者がFacebookを利用することはできません」というルールが利用規約に存在しており、そもそも使うことはできません。ルイジアナ州の動きに対して、いまのところFacebookはコメントを避けており、静観する構えのようです。
さて、性犯罪のように重大な犯罪、もしくは再犯率の高い犯罪を犯した人物に対して、ネットという「過去を消すのが難しい」場所での情報公開を求めるのはどの程度許容されるのでしょうか。既に一部の報道では、「緋文字」(ホーソーンの同名小説から、姦通罪を犯した人物に対して衣服に緋文字を付けることを命じる措置)などという言葉でこの動きを表現しており、行き過ぎた烙印や社会的制裁につながることを懸念する声もあります。ただ年頃の子供を持つ親からすれば、そもそも全面禁止してくれるぐらいでちょうど良いという思いでしょう。性犯罪だけでなく、他の犯罪歴にも拡大すべきという声も出てくるかもしれません。
しかし欧州で「忘れられる権利」を制度化する動きがあるように、ネット上で過去が残り続けることが時に大きな障壁になることも事実です。情報公開という罰則が、以前よりもシビアなものになっている可能性を考慮すべきでしょう。その意味で、少なくともルイジアナ州の動きがどんな状態をもたらすのか、1つのケーススタディとして考察してゆく必要があると思います。
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