ドローン(Drone)の俗称で呼ばれる無人航空機。パイロットが遠隔操作するラジコン型から、完全自律型までさまざまなタイプがありますが、既に実用化されて米軍などで活用されていることはご存じの通り。しかしそのハッキング方法が暴かれたということで、米国で物議を醸しています。
第一報を報じたのは米FOXニュース。それによると、ハッキングに成功したのはトッド・ハンフリーズ博士率いるテキサス大学オースティン校の研究チームで、小型のヘリコプター・ドローンをスタジアムに飛ばしてデモを行ったとのこと。もちろん彼らは違法な研究を行ったわけではなく、米国の国土安全保障省(Department of Homeland Security)の要請でドローンの脆弱性を調べる調査(賞金は1000ドルだったとか)を行い、見事ハッキングを成功させたという次第です。
気になるハッキング方法ですが、スプーフィング(なりすまし)と呼ばれるもの。ドローンには行動を指示する信号が送られているわけですが、本物の信号に偽装した偽の信号を送り、それによってドローンのコントロールを奪い取ってしまうそうです。こう書くと単純な方法にも思えますが、博士課程の生徒から構成される研究グループが3年かかってようやく完成させた手法なのだとか。
ただしこの方法は、暗号化されていない民間のGPS信号を使用するドローンに対してのみ有効であり、暗号化されたGPSを使用する軍事ドローンには今のところ通用しないのだとか。しかし民間のドローンには悪用されてしまう恐れがあるわけですし、実は2011年にイランで起きたドローン墜落事件で似たような手法が使われていたのではという報道もあります(実際にイラン軍はこの「撃墜」について、電子的な方法で強奪したと主張していますし)。さらにBBCの記事には、「暗号化されていない信号を使用するドローンのハッキングには、専門知識があれば700ポンド(約9万円)で簡単にできる」という専門家のコメントまで紹介されています。
実は雑誌Wiredの7月号がまさにこのドローンの特集で、都市でドローンが使われるようになる可能性(デリバリーを行うなど)を描いています。また先日も、ドローンをジョギングのパートナーにして、ペースメーカー役を務めてもらうという試みがあることを紹介しました(こちらはマーカーに反応するタイプですので、GPSを使ったハッキングには無縁ですが)。しかしハッキングされる恐れが現実のものとなっては、将来のドローン活用に影響が出ることは避けられません。ハンフリーズ博士はFOXニュースに対して、「5年から10年のうちに3万機のドローンが空を飛ぶようになる可能性があるが、それらすべてが私たちに向けられた潜在的なミサイルになる」という恐ろしい可能性を指摘しています。
とはいえ今回脆弱性(のひとつ)が明らかになったことで、何らかの対策は進んでゆくのでしょうが。ドローンが日常生活のパートナーとなるのか、それとも『ターミネーター』型の未来が来てしまうのか――どちらにせよ、まったく荒唐無稽な話でないことは確かなようです。
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