というわけで、O’Reillyのイベント”Solid”に参加してます。そもそもSolidって何?という方には、「オライリーが去年から始めたIoTのイベント」と言ってしまうのが分かりやすいかも。もっと詳しく知りたいという方は、yomoyomoさんと海部さんが書かれた記事が参考になります:
■ IoTを巡る壮大な懐疑論(WirelessWire News)
■ 米欧のテックイベントに見る「IoTの正体」(日経ビジネスオンライン)
もはやソフトとハード、デジタルとフィジカルを分けて考えるのはあまり意味がなくて、両方を一緒に考える場があっていいよね……ということで新しく設置されたのがSolid、という風に理解しています。yomoyomoさんの指摘通り、O’ReillyにとってはStrataに続く大きなイベントを育てたいという思惑だろうけど(実際、雰囲気は数年前のStrataに近いかも)。今年はキーノートにTechShopのMark Hatch、作家のCory Doctorow(「ウッフィーを考えた人」と言うと一部の人には分かるかも)などといった名前が並んでいます。ちなみに初年度のSolidに関するマテリアル類がこちらで確認できるので、興味のある方はご覧下さい。
会場はサンフランシスコのFort Mason Center。景色良いです。ゴールデンゲートブリッジやアルカトラズなんかが見えたり。ただ海が近いこともあって風が強いのに閉口。
ともあれそのSolidの初日が無事に終了しました。Strataと同じように、初日はTutorialの日になっていて、扱っているテーマに関する集中講義的なセッションが用意されています。とはいえStrataでは本セッションとほぼ変わらない内容なので、今日も座って話聞いてるだけでOKでしょ……と思ったら甘かった。がっつり半日の参加型ワークショップ×2を実施してきました。
午前中はEtsyのKuan Luoさんによる”The Gift – designing for the future”。「カンファレンスに参加するのが楽になるような(物理的な姿を持つ)製品が2016年に発売されるとしたら」というお題で、指示されたステップを踏んだ上で、チーム毎に考えをまとめるという内容でした。
最初のステップは3人1組によるインタビュー。これまで仕事でカンファレンスや展示会に参加した時、何を考え、どんな苦労や楽しさを経験してきたのかを他のメンバーから引き出すというもの。1人がインタビューする人、1人がインタビューされる人、残りの1人がインタビュー内容を観察して記録する人という分担になり、それぞれの役割を順に担当するという内容でした。
ちなみにワークショップ中、5人のイラストレーターの方が会場を回り、それぞれのグループのために都度イラストを描いてくれました。これはうちのグループメンバーの似顔絵。
で、ステップ2はまず、インタビューで得られた情報を小さな要素に分解して(「カンファレンスに出ると内容を記録して、帰った後でレポート提出しなくちゃいけないから大変」だと、「セッションの内容」「資料の取得」「写真撮影」「後工程」「レポート作成」などといった具合)、それを個々のポストイットに書き出し、模造紙の上にぺたぺたと貼っていきます。終わるとこんな感じに:
そして張り出された要素を見ながら、それをいくつかの分類法に従って整理してみて(分類法は好きに設定して良いが必ず複数実施)、そこから見えてくるものをインサイトとしてメモるというのがゴール。ちなみにうちのグループは時系列で整理してみて、カンファレンスに参加する=「1.参加して何を得るかの目標設定(参加前の作業)+2.目標を達成するための情報収集(参加中の作業)+3.得られた情報の整理(参加後の作業)」と捉えることができ、「終わってからレポート作成でヒーヒー言わないためには参加前の作業が重要だねー」「参加前の目標設定は会社に参加費を出してもらうためにも重要だよねー(=前工程はずっと前から始まっているのかもしれない、主催側も前工程の充実にもっと力を入れるべきかもしれない)」などといったインサイトをまとめました。
で、最後のステップ3ではインサイトに基づいて具体的な製品を考え、その利用シーンも思い描いてみようという内容でした。ここはちょっと時間が足りなくなって、ありきたりなアイデアと利用シーンしか描けなかったかも。しかし時間が足りないと感じるくらい、充実したワークショップでした。
面白かったのは、各ステップの冒頭に瞑想のような時間が入ること。参加者は目を閉じ、何度か深く深呼吸してから、指示されたイメージを頭に思い描くというもの。たとえば「これまでで最高の体験をしたカンファレンスに来ています。そこに誰がいますか?建物の壁の高さは?深く息を吸ったら、どんなにおいがしますか?」といった感じ。単に何かを思い出したり、思い浮かべたりするだけでなく、細かいディテールまでイメージすることを要求されます。
これをこのセッションでは「タイムマシン」と呼んでいました。サンプルがネットで公開されるので、どんな感じか興味のある方はこちらからどうぞ:
アイデアを単にアイデアで終わらせるのではなく、その肉付けや文脈の詳細化を進めるために取り入れている手法だとか。特に細かい部分までイメージさせるのがポイントだそうです。確かに自分で体験していながら、忘れてしまっている細かい部分(受講証ってグチャグチャになりやすいよねとか)まで思い出すことができて、その後のディスカッションがしやすくなったように思います。
で、午後に参加したワークショップが”Prototyping user experiences for connected products”。最近O’Reillyから出版された、”Designing Connected Products”という分厚い本の著者陣によるセッションでした。
こちらもグループ単位による活動でしたが、まずはウォームアップということで、各グループにランダムにイケアの製品(家具)が割り当てられます。その商品説明を見ながら、「この家具がネットに接続するようになったら?」を考え、新しい製品にするというもの。最後にちゃんと、イケア風の名前を付けて完成です。
うちのチームに与えられたのはドレッサーだったのですが、けっこうスイスイとアイデアが出てました。「洗濯機と連動して、中身(衣服)が少なくなったら自動的に洗濯が始まるようにしよう」とか、「スケジュールアプリと連動して、TPOを考えた服をレコメンドして収納されてるところが開くようにしよう」とか、「TPOに合う服が無かったらアマゾンで発注できるようにしよう(イケア+アマゾン=イケアゾン)」などなど、これは言ったもん勝ちという感じ。
で本番は、これもお題がランダムに割り当てられ、それに沿って新しいIoT系製品を考えるというものでした。ただその際、必ず実施しなければならないのが、このワークショップのテーマでもある「体験プロトタイピング」と「ビデオプロトタイピング」。いったいどんなものか、完成した映像から見てもらうと良いかもしれません(ちなみにうちのチームに与えられたお題は「フライフィッシングをより素晴らしい体験にするIoT製品をつくれ」というもの):
これは前半で、後半がこちら:
ここに行くまでにいろいろディスカッションを経ているのですが、重要なのは「実際に体験してみて、それを映像化してみる」という点。その際、「ユーザーに何を聞きたいのか(このプロトタイプからどんな問題に対する答えを得たいのか)」を考えながら作業を進めるように、という指導を受けています。
うちのチームでは、「テクニックが磨ける練習をもっとしたいのではないか」「釣りの結果を友人とシェアして競争したいのではないか(iOSのGame Centerのように)」という仮定を質問すべきポイント(=プロトタイプで明らかにしたいポイント)として、プロトタイプを作成することに。プロトタイプといっても「実際の製品が作れるかどうか」を検証するためではなく、「製品を使って得られる体験は仮説で想定した通りかどうか」を検証するためのものであるため、すべて段ボールと色紙、テープを使って作成します:
で、完成したら実際に演じてみて、それを映像化して検証すると。これは実物(のプロトタイプ)を使って映像化するところが結構ポイントで、それらしく見せようとすると、考察が甘かった部分がいろいろ明らかになります。逆に「このタイミングでこうしたいのなら、こういうアイデアもあるかも」といった発想が生まれたりして、それを活かすこともできます。今回は限られた時間で映像まで撮影しなければならなかったので、いろいろ端折ってしまったのですが、本格的にやればかなりの情報量になりそう。
ということで、最初はまったり座学から……と余裕かましていたのが真逆になった初日でした。こんなに熱心に工作したのって、もしかしたら小学校以来かも。疲れたー
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