にわかには信じがたい話ですが……恐らく日本のメディアでも面白おかしく取り上げられることになりそうなので、ちょっと紹介しておきましょう:
■ Social Networking Affects Brains Like Falling in Love (Fast Company)
Neuroeconomist Paul Zak has discovered, for the first time, that social networking triggers the release of the generosity-trust chemical in our brains.
Neuroeconomist (神経経済学者?)の Paul Zak 氏は世界で始めて、ソーシャルネットワークが寛容さや信頼感を促進する脳内化学物質の分泌をもたらすことを発見した。
ということで、様々な実験により、オキシトシン(oxytocin)というホルモンの分泌をソーシャルネットワーク系サービスが促すことが発見されたのだとか。このオキシトシンという物質、信頼感や愛情といった感情を強くさせる働きがあるそうで(母親が赤ちゃんに愛情を抱くことにも関係しているのだとか)、「ツイッターは婚活の最強ツール!?」とか紹介されちゃうんだろうな……。
インタビュー記事でかなり長いのですが、キーになりそうな部分をちょこっと引用してみましょう。記事を書いた Adam L. Penenberg 氏自らが被験者となった、ツイッターを使った実験について(3ページ目からです):
Zak greets me at his lab near the Claremont campus, a three-bedroom house being converted into a spacious new lab. To escape the hammering, yammering workers, he escorts me upstairs to a study where a nurse awaits. She compliments me on my veins and draws blood. Then she and Zak leave me alone. I pull up TweetDeck on my laptop and get to work. The question is simple: Will social networking increase my levels of oxytocin? Will my brain react to tweeting as it reacts to, say, a dinner conversation with good friends?
I start tweeting and alert my followers that I'm engaging in a Twitter experiment with a neuroeconomist. I update a previous remark I made about the GPS in my rental car and how the automated voice gets uppity whenever I miss a turn. Responding to a woman I've never met, I type in the language of 140-character Twitterese: "I want Mr. T GPS voice! How abt James Earl Jones? He says turn left you *turn* left. Or Norah Jones? Plaintive directions." Another person I've never met asks my opinion of an infamous journalist, and I answer as best I can.
(中略)
And then the nurse returns to take some blood, ending the experiment. I leave wondering whether anything of value could come of such a short, typical, and somewhat dull dip into my tweet stream.
Yet six weeks later, when Zak shares the results with me, my blood tells a more dramatic story. In those 10 minutes between blood batches one and two, my oxytocin levels spiked 13.2%. That's equivalent to the hormonal spike experienced by the groom at the wedding Zak attended. Meanwhile, stress hormones cortisol and ACTH went down 10.8% and 14.9%, respectively.
Zak と私は、 Claremont 校の近くにある彼の研究室で会った。その建物は、もともと寝室が3つ付いている家だったのだが、改造して広い研究室にしたものだ。彼に導かれて部屋に入ると、そこにはベッドが置かれ、看護婦が待っていた。彼女は私の血管にお世辞を言いながら採血し、その後二人は部屋を出て行った。そして私は自分のラップトップを取り出し、TweetDeck を開いて実験を開始した。私の疑問は単純だ。ソーシャルネットワークはオキシトシンの分泌量を増やすのだろうか?私の脳はツイッター上での会話に対して、ディナーを囲みながら友人達と会話する時と同じような反応をするのだろうか?
私は神経経済学者と共にツイッターを使った実験をしていることを宣言してから、ツイートの投稿を始めた。レンタカーについていたGPSが、道を曲がるのを間違えるたびに傲慢な声を出すことについて述べてみた。会ったことのない女性への返事として、ツイッター界のルールである140字でこう書き込んだのだ。「GPSの声を変えたい!ジェームズ・アール・ジョーンズ(※ダース・ベイダーの声をあてていた役者)の声なんてどうだ?彼なら『左に曲がって下さい』を『…左に…曲がってくれ』と言うだろう。ノラ・ジョーンズなら?物憂げな声で案内してくれるはずだ。」また同じく会ったことのない別の人物が、悪名高いジャーナリストについての意見を求めてきたので、出来る限り丁寧に回答した。
(中略)
看護婦が戻ってきて採血を行い、実験は終了した。こんな短くて特に変わったところのない、少し退屈な実験で何が分かるのだろうかと思いながら、私はその場を後にした。
しかし6週間後のこと。Zak が教えてくれた実験結果から、私の血液が驚くべき事実を告げていることが分かった。実験を行った10分間で、血液に含まれるオキシトシンの量が13.2%増加したのだ。これはちょうど、ある花婿が結婚式(Zak が出席したものだ)の最中に記録したオキシトシンの増加に匹敵する量だ。その一方で、ストレス・ホルモンであるコルチゾール(cortisol)とACTH(副腎皮質刺激ホルモン)がそれぞれ10.8%と14.9%減少していた。
とのことで、最終的に Zak 氏は「ツイートのやり取りを、親しい人たちとの交流と同じものとして脳は受け止めた」と結論づけています。まぁもともとソーシャルネットワーク自体が「友人との交流」という意味を持つサービスなわけで、当然と言えば当然なのかもしれませんが……ただバーチャル上のコミュニケーションでも、また直接会ったことの無い人が相手でも、そしてたった10分という短時間でも、脳が「親しい人との交流」と受け止めるという点は面白いですね。
恐らく今後追試験が行われて、この仮説について議論が深まっていくことと思いますが、ソーシャルメディアの重要性を改めて裏付けるものになるのかも。週明けに「ウチも公式ツイッター始めましょう!」と上司を説得する材料にどうぞ(笑)
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