"Mashup"ビジネスの弱さ
Web 2.0のビジネスモデルに対する批判が続いています。今日はまた異なる視点からの指摘がありました:
Service dependency on the new web (WeBreakStuff)
Mashup(いくつかの外部コンテンツを組み合わせて、統合されたコンテンツを提供するサービス)と言うと聞こえは良いですが、要は他人のコンテンツに依存すること。依存先からサービス/コンテンツの提供を拒否されてしまったら、いったいどうするつもりなのか?という意見です。
現状でGoogle MapがHousingMaps.comのAPI使用を禁止することは考えにくいですし、Del.icio.usがFlockとの連携を止めるという可能性も低いでしょう。しかしこの関係でどちらが弱い立場にあるかというと、価値のあるコンテンツを「提供してもらっている」、HousingMaps.comやFlockになります(特にHousingMaps.comはCraigslistのコンテンツも利用していますし、より脆弱な立場だと言えます)。また第3者がサービスをマネする(新規参入する)のも容易ですから、ポーターの"Five Forces"的に見ると、非常に収益を上げることが難しい立場にあると言えるでしょう。
資源から効率的にお金を生むFlickr
逆に自社の経営資源から、巧みに収益を上げているのがFlickrでしょう。昨日のFlickr Blogで、こんなニュースが発表されました。
Your Photos - not on Flickr! (Flickr Blog)
Flickrにアップロードしてある写真をプリントして、近所のDPEで受け取れるというサービス。もちろん現在はアメリカ国内のみが対象範囲ですが、他国での展開も検討中とのこと。
写真のプリント以外にも、Flickrでは保存してある画像ファイルを利用して、様々なことができるようになっています:
写真集の作成、バックアップDVDの作成、切手(アメリカ合衆国発行のもの)の作成などなど。今後もサービスの拡張を考えているようです。
考えてみれば、Flickrは画像ファイルの保管サービスなのですから、こういったサービス展開は当然といえば当然と言えるかもしれません。しかしFlickrというと、どうしても「共有」や「タグ機能」や「Flockとの連携」といったWeb 2.0的側面がクローズアップされて、こういったいわば「地味なサービス展開」が注目されていなかったのではないでしょうか。
Flickrの持つユニークな資源は、実はこうした「共有」や「タグ」という機能ではなく、数多くのユーザーがアップロードした画像ファイルです。「共有」はGoogleのような検索エンジンであれば、簡単に様々なWEBスペースから引っ張ってくることができますし、検索結果にタグ付与機能を付けてしまえば「擬似Flickr」とでも言うべきものができるでしょう。しかし画像ファイルはまさにFlickrの中にある資源です。アクセスを禁止される心配もありません。
※FlickrにアップロードされたファイルはFlickrのものになる、という議論ではありません。当然著作権は写真を撮った人物にあります。この辺は微妙な問題をはらんでいて、「それじゃWEB上にアップされたコンテンツ(テキスト、画像問わず)の閲覧ページに広告が表示されていて、ホスティング業者が広告収入を得たとしたら、業者はコンテンツ作成者に分け前を与える必要があるのではないか?」という議論に発展して行きます。
(参考記事:Anil Dash "The Interesting Economy" -- ついでにこの記事に対しては、MicrosoftのRobert Scobleが面白い関連記事を書いています: Scobleizer "Anil wants Flickr to pay)
プリントや写真集を作るサービスなんて、微々たる価格しかできないかもしれません。しかし数多くのユーザーを確保していれば、「薄利多売」型で十分な収入を得る可能性があります。しかもユーザー数の拡大は、ソーシャル・ネットワーク系サービスとしての価値を上げることにつながりますから、「自社の資源を豊かにする→そこから効率的に収益を上げる」というサイクルが上手く回ることになります。
一見地味なFlickrのサービス、自社の経営資源を上手く活用しているという点で、見習う点が多いのではないでしょうか。他のWeb 2.0系企業でも、「共有」「タグ付け」以外にもっと活用できる資源があると思います。
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