今日の日経産業新聞で面白い記事があったので、自分のためにクリッピング:
昭文社 トラック専用地図作りの現場--取材通じて情報吟味 苦情きっかけに構想 15年かけ商品化(日経産業新聞2006年1月5日第5面)
昭文社が発売した『トラックマップル』というトラック専用地図の開発裏話。ネット上には載っていない記事なので、ご興味のある方は勝手ながらオフラインで手に入れて下さい。
昭文社と言えば、最近「ちず窓」というサービスを発表するなど(参考記事:CNET Japan「昭文社、ブログに地図が貼れる無料サービスをテスト公開」)、地図情報を活用した新たなサービスを展開している企業です。今回の話はトラック専用地図ということで、完全にオフラインの商品なのですが、自社の情報資産を活用して新たな商品を生み出した例として、参考になる部分は多いのではないでしょうか。
トラックマップルの開発過程も面白かったのですが、その補足として書かれていた「業界、相次ぎ『情報地図』--付加価値でネットに対抗」という記事にも興味を引かれました。Google Mapを指摘するまでもなく、ネットを使えば地図は無料で手に入ります。さらにぐるなびなどのサイトと組み合わせれば、自分で地図を探すまでもなくお店の位置が分かったり、経路案内までしてくれますから、災害時などを除いて紙媒体の地図を(お金を出して買ってまで)使う理由は薄れつつあると言って良いでしょう。記事ではそういった環境変化を、以下のようにまとめています:
ネットでは得にくい情報をどれだけ盛り込むことができるか。地図が正確さだけを求められる時代は終わり、付加価値の高さを問われるようになった。
この言葉、地図だけでなく、あらゆる「情報商品(地図や新聞、書籍、コンサルティングなど、電子化が可能な商品/サービス)」に当てはめることが可能になりつつあるのではないでしょうか。またオフラインvsオンラインという構図ではなく、オンラインvsオンラインという構図でも捉えられます。地図に限らず、あらゆる情報が無料で手に入るようになりつつあるいま、各企業が問われているのは「どんな付加価値を追加することができるか」なのでしょう。
逆の見方をすれば、情報産業界の境界線が薄れつつある時代、とも言えると思います。例えば今回の『トラックマップル』ですが、昭文社内の担当者は、実質的に一人だけだったそうです。もし大手運送業者が同じようなアイデアを思いつき、自社内のドライバーから情報を集めていたら、『トラックマップル』に似た地図を開発することも可能だったのではないでしょうか(地図情報が安価で手に入る、という前提があればの話ですが)。またバーティカル型検索サービスの成功例として挙げられることの多い「trulia(参考記事:不動産バーティカル検索)」も、Google Mapのデータの上に「各社バラバラのフォーマットで作成されている不動産業者サイト上のデータ」を集約して載せることで、サービスのユニーク性を生み出しています。
ベースとなる情報の「無料化」が進み、思わぬところから競争相手が現れかねない時代。それを好機と捉えろというのは傍観者の勝手な言い分ですが、守りに入っても価格競争に陥るだけでしょう。低くなった垣根を逆に利用し、新たなサービスに打って出るという態度が欠かせないと思います。問題は新たな付加価値をどうやって見つけるか--それには、こういった他社・他業界の事例を幅広く観察することが有効なのではないでしょうか。
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