テレビゲームは「ゲーム脳」を作るとか、いやいや「脳を鍛える」ことができるとか、って唱えている教授が実は以前ゲーム反対派だったとか。「テレビゲームは善か悪か?」という議論は尽きることがありません。今月号のハーバード・ビジネス・レビューにも、この議論に新たな一石を投じる記事が掲載されているのですが、意外にもゲーム肯定派だったりします:
■ ネットワーク・ゲームが協調性を養う (ハーバード・ビジネス・レビュー 2006年6月号)
要点はこんな感じ:
- テレビゲームを習慣的に遊んでいる人は、情報が限られていても素早く判断を下すことに秀でている。画面上ではいろいろなことが同時に発生するので、得た情報から予測を立て、方針を決める能力が養われるため。
- この結果、新たに得た情報に基づいて方向転換したり、優先順位を変更したりできるようになる。これは今日のビジネスで要求されている意思決定スタイルと同じ。
- オンライン・ゲームなどのマルチプレイヤー・ゲームでは、グループに参加するのに必要なスキルが養われる。異なるスキルや知識を備えた人間同士とコラボレーションしたり、調整を図ったりすることは、大企業ならばどこでも必要とされるもの。
- ゲームはナレッジ・マネジメントの有力な手段にもなる。本やマニュアルに掲載された知識を、役割や行動、目標に置き換え、社員が使わずにいられない状況を作り出せば良い。
- すでに一部の企業では、研修やオリエンテーションに、業種や事業に見合ったゲームを開発している。
ということなので、テレビゲームなら何でも良い、と言っているわけではなさそうです。「多くの情報を一度に、瞬間的に処理して次の行動を決めなければいけないゲーム」で、「多くのプレイヤー(コンピューターが操作するものではなく、現実の人間)が参加するゲーム」であれば、「現代のビジネスで必要な意思決定スキル・コラボレーションスキルが学べる」、とまとめられるでしょうか。
以前から紹介している本『第1感』でも、この「限られた情報から瞬間的に意思決定するスキル」の性質について解説されている部分があります。そこではニューヨークの証券トレーダーが、アメリカ軍の模擬演習に参加して優れた成績を残したエピソードが紹介されているのですが、トレーダーも兵士も現場で難しい判断を一瞬で下さなければならないという部分が共通している(従って状況は違えど、トレーダーは戦場でも優れた意思決定ができる)ためと分析されています。これが正しいとすれば、オンラインの戦争シュミレーションゲームが得意な人は、ビジネスで成功する可能性が高いと考えられるかもしれません(もちろんゲームと実戦の緊張感は比べ物にならないわけですが・・・)。
当然といえば当然の結論ですが、ゲームだから一概に悪だと言えるわけではなく、内容によってはビジネスに役立つスキルを身に付けられる可能性があるということですね。特に最近は優れたオンライン・ゲームが多く登場し、人気を集めていますから、その中で高得点を稼いでいるプレーヤー・人気を集めているプレーヤーを企業がリクルートするなんてことが実際に起きるかも。
実際、アメリカ軍は近いこと(軍が開発したPR用ゲームで良い成績を残した人に入隊を奨める)を実施しているそうですが、ある日オンラインゲームをプレイしていたら、見知らぬ相手から「実は私はソニーで採用担当をしているものでして、ぜひ一度お話を聞いていただければ・・・」なんて切り出されるかもしれないですよ。
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