遅ればせながら、ニコニコ動画が DDoS 攻撃と YouTube からのアクセス遮断により、サービスを停止中ですね(参考:ITmedia の記事)。個人的にも面白い動画を見つけていたので残念なのですが、一方で意外な効果が。ニコニコ動画のサービス停止後から、YouTube ビデオに字幕が入れられるサービス「字幕.in」のアクセスが急増しているとのこと:
■ 「ニコニコ動画」サービス停止で「字幕.in」のアクセス急増 (ITmedia News)
ニコニコ動画のような複数人からのコメント(字幕)投稿はできないものの、「ビデオにコメントを入れる」という行為は同じ。どうやら人々は「動画にみんなでツッコミを入れる」という行為の楽しさを知ってしまったようです。たとえニコニコ動画が上手く立ち上がらなかったとしても、類似のサービスで成功するところが出てくるのではないでしょうか。
仮に「ニコニコ動画型」の視聴スタイルが今後の映像コンテンツの主流となるならば、それに合わせたコンテンツを作る動きが出てくるのではないかと思います。考えてみると、コンテンツはメディアの形に合わせて変化してきました。同じネタであったとしても、それが劇場で行われるのか、テレビで放映されるかによって、最適な形に編集が行われるわけです。例えばミュージカルが映画化されると、様々なシーンを無理やりつなぎ合わせて2時間の枠に収めますよね。そして株式情報番組は、YouTube 時代にはこんな姿になります:
■ Stock picking for the YouTube generation (Springwise)
前に別のネタでちょっとだけ取り上げたことがありますが、Wallstrip という vlog について。ニューヨーク市で活動する vlog 団体(?)で、Lindsay Campbell という女優さんがアンカーとなって株式情報を提供しています。ビデオは YouTube をはじめとした動画共有サイトにも投稿されていて(例えば YouTube での Wallstrip のページはこちら)、そこで消費されやすいように1つ3~5分程度の長さになっています。
では、「ニコニコ動画型」に適したコンテンツの形とは何でしょうか。現在のテレビ向けに作成された映像にツッコミを入れても十分面白いわけですが、「ツッコミを入れられることを前提とした」映像というものも、今後登場してくるのではないでしょうか?
いま日本のバラエティ番組を観ていると、テロップがものすごく多用されていますよね(まるでニコニコ動画を見ているかのように)。あれって言わば、「ソースをかけられて出てくる豚カツ定食」みたいなものではないかと思います。「豚カツはソースで味を引き出させるもんだんだよ!」と押し付けられてる、みたいな。しかしニコニコ動画型が一般的になれば、人々は自分の好みの味付けで消費できるようになります。そうなったら、ソースがかけられて出てくる豚カツよりも、かけられていない豚カツの方が幅広い層に楽しんでもらえる可能性があるわけです。
もしいま僕がテレビ局のプロデューサーだったとしたら、テロップがほとんど入っていない番組や、芸能人やスタジオの様子がカットインしてこない番組を用意し始めると思います。で、合法か違法かは別として、「ニコニコ動画型サイト」がいじってくれる(そしてネット上で大きな反響を呼ぶ)のを待つと。もちろんそんなスタイルがすぐに通用すると思いませんし、従来のテロップ詰め込み・芸能人詰め込み型のスタイルも残っていくでしょう。しかし新しく出てきたメディアに適した素材を用意しておくことも、一方で重要なことではないかと思います。
いや、単に「ボブの絵画教室」があんなに笑えるコンテンツになるのを見て、ふと思っただけなんですけどね(参考:ニコニコ動画で見る「ボブの絵画教室」が面白すぎる)。逆にシンプルな映像(ただし突っ込みどころが其処ここに散りばめられている)の方が、ニコニコ動画型に適しているんじゃないかなと。逆にあの番組を YouTube で見ても「懐かしいな」で終わっていたはずなので、これからも意外なコンテンツが発掘されるようになるのかも。これも一種のロングテール現象、と言えるのでしょうか。
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