昨日のエントリへの追記の中で、"Made to Stick: Why Some Ideas Survive and Others Die"という本の中に「素人でも基本を押さえることで、優れた広告をつくれることを証明した実験があった」という記述があったことをご紹介しました。その元論文を見つけたので、ちょっとご紹介:
■ Sorin Solomon Publications in Multi-Agent Complex Systems : List1995-2001
検索に引っかかっただけなので、このページの詳しいことは分からないのですが……The Hebrew University of Jerusalem という大学の Sorin Solomon 教授の個人ページのようです。で、その中に問題の論文"Creativity Templates: Towards Identifying the Fundamental Schemes of Quality Advertisements"がワードドキュメントで掲載されています。ちなみに直接リンクはこちら。
で、念のためこの論文が何なのか再度説明しておくと……イスラエルの研究者たちが作成した論文で、有名な賞を受賞した/ノミネートされた「良い広告」200個を研究し、それらに共通する「6つのテンプレート」を導き出すという内容。このテンプレートを素人に教え、広告をつくってもらったところ、テンプレートを知らない素人よりも良い広告がつくれたそうです。
早速、その6つのテンプレートがどんなものなのか見てみましょう:
1. The Pictorial Analogy Template (イメージによるアナロジー)
商品そのものを使う代わりに、画像やシンボル等のイメージを象徴として用いるもの。アナロジーをどの程度用いるかに応じて、"replacement"(代替)と"extreme analogy"(極端な例え)の2つのバージョンがある。
2. The Extreme Situation Template (極端なシチュエーション)
商品の特性や提供する価値を目立たせるために、極端な状況下に置く。いわゆる「バナナで釘が打てます」というやつですね(何のことか分からない方は、こちらの解説をどうぞ)。これも3つのバージョンに分かれていて、"absurd alternative"(不条理な代替品)は「その商品と同じ効果を得るためには、どんな(不条理な)代替品が必要になるか」を示すもの。"extreme attribute"では商品特性を極限化し、"extreme worth"では提供する価値を極限化する。
3. The Consequences Template (結果)
宣伝されている商品を使った結果、もしくは使わなかった結果を示す。これも2つのバージョンがあり、"extreme consequences"バージョンでは商品を使った結果、極端な状況が現れる。最近で言えば「AXE EFFECT」がこのパターンの好例でしょうか。一方"inverted consequences"バージョンでは逆に、薦めた行動をしないことによって現れる状況を描く。
4. The Competition Template (比較/競争)
他のモノと比較する。比較する相手は競合商品とは限らず、例えばクルマの速さを示すために弾丸と競争させる、などの例もある。これも3つのバージョンがあり、"attribute in competition"と"worth in competition"バージョンではそれぞれ商品の特性と価値が比較され、"uncommon use"バージョンでは商品を本来とは異なる使い方をすることで特性/価値が示される。
5. The Interactive Experiment Template (インタラクティブな体験)
視聴者が参加して(もしくは参加しているような気にさせて)商品の価値を実感できるようにする。"activation version"は実際に視聴者を参加させる方法、"imaginary experiment version"は体験しているかのようにイメージさせる手法。これらはネットの発展&普及で、お馴染みの手法になりつつありますね。
6. The Dimensionality Alteration Template (次元の超越)
商品の特性を示すために、外部の環境を変えてしまう。"new parameter connection version"では、本来は変えられない事象を変化させる(ex. 飛行機の速さを示すために、海の広さを小さくして見せる)。"multiplication version"と"division version"はそれぞれ商品を増やす/分割する(すみませんが、この部分は例が示されていないので理解不可能でした)。"time leap"バージョンでは文字通り、シチュエーションを過去もしくは未来に置く。
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以上6つが「良い広告をつくるテンプレート」とのこと。良くも悪くも学者さんが分析された結果なわけですが、どう感じられたでしょうか。最近見て「これいいな」と感じた広告に当てはめて考えてみれば、このテンプレートが正しいかどうか確認できるかもしれませんね。また自分で広告をつくる際に、などというチャンスは広告業界に勤めていなければなかなかありませんが、活用してみてはいかがでしょうか?
……と書きつつ、このテンプレートを知ることの意義は、「実はクリエイティビティというものもパターン化できるのかもしれない」と考えることにあるのではないでしょうか。先の実験で、このテンプレートを知った人々は、素人であっても「クリエイティブな」広告を作り出すことができました。広告以外の様々な分野でも、クリエーターの勘と経験を「形式知化」することが可能な仕事は多いのかもしれません。
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