これ書いている時点で asahi.com には掲載されていないのですが、今朝の朝日新聞でこんな記事がありました:
■ 「旧式ネット」健在――台湾 高速・無料の掲示板 (朝日新聞 2008年6月10日朝刊 第13面)
「台湾版2ちゃんねる」的な内容で、台湾の若者にとって欠かせない存在となっているBBSサービス"PTT"について。恥ずかしながら僕は初めて聞く名前だったので、へぇーと思いながら読みました。
恐らく朝日を購読してるなんて人はごく僅かだと思うので、以下に箇条書きでまとめてみると:
- 台湾には、若者から絶大な支持を集める「PTT(Professional Technology Temple、批踢踢)」というBBSサイトがある。テーマ毎の掲示板の数は1万以上という巨大なもので、言わば「台湾版2ちゃんねる」。
- 面白いことに、インターネット上のサイトではなく、パソコン通信のサービス。
- 1995年に台湾大学の1人の学生が立ち上げたもの。現在も「完全非営利の自由な電脳空間」を掲げ、サーバなどの設備は募金と献金で調達し、台湾大の学生とOBのボランティア十数人で運営。
- 接続するには会員登録が必要で、現在会員数は100万人。常時10万~15万人が接続している。
- 内容は「美食」「プロ野球」などあらゆる話題に及び、情報の宝庫となっている。新聞やテレビも閲覧専従の記者を置き、ネタを探しているほど。
- これほど巨大であるにも関わらず、マナーが維持されている。個人情報が書き込まれてトラブルになるケースはあるが、事件や裁判になる例は少ない。
- PTTの利用者は会員登録の際に個人情報を登録する。問題が起きれば管理者は身元をたどることができ、IDの変更もできないので、一度信用を失うと他のユーザーから相手にされなくなる。
こんな感じ。で、結論の1つとしてこんな文章が載せられています:
2ちゃんねるは匿名性ゆえに活況を呈したが、PTTは匿名性を制限してマナーの水準を維持していると言えそうだ。
うーん、これが言いたかったんじゃないの?と意地悪な感想を持ってしまったので、他の情報も読んでみようと思ったのですが、検索しても出てくるのはトレビアン News の記事ぐらい。なので Wikipedia に頼ってみたところ、こんな記述がありました:
- 2002年5月から、"推文"と"噓文"という機能を導入している。これは「推薦」と「批判」にあたる言葉で、要は書き込みの評価機能(ちなみに中国語系BBSの中で、この種の機能を導入したのはPPTが初めて)。書き込みに対してポイントをプラスしたり、マイナスしたりすることが出来る。
- 2004年5月から「ガーディアンエンジェルズ」を設置。これは経験をつんだ匿名のPTTユーザー達で、新しいユーザーを手助けするメンターの役割を果たしている。
評価システムと治安維持部隊。実際にPTTを触れたわけではないので完全に想像の世界ですが、こうした機能を有していることも、PTTがマナー維持に成功している一因ではないでしょうか。いずれにしても、これらへの言及抜きで「匿名制限がトラブル防止につながる」という結論はちょっと早急かと(もしかしたら「パソコン通信」であるという点や、会員登録という行為自体が影響を及ぼしている可能性もありますしね)。
しかしこの"PTT"というコミュニティ自体はなかなか面白そう。匿名云々といった議論抜きで、2ちゃんねるとの比較研究をしてくれる人がいると良いのですが。もし「ここは間違ってるよ」といったご指摘等あれば、ぜひコメント下さいませ。
PTTから~
投稿情報: | 2008/06/11 01:35
はじめまして。通りすがりで失礼します。
見当違いの書き込みなら申し訳ありません。
台湾は中国語圏とはいえ、沖縄よりも南の温暖な島(国)です。
そのためか気性がおおらかな人々が多く、大陸の国々や台湾よりも北にある日本とは民族の性質が同一とは言い難いように思います。
もちろんそれがすべてではありませんが、今回の話はその民族性の違いも少々関係ありそうに思いました。
投稿情報: syatyom | 2008/06/11 10:32
どうも、PTTの住人です。
ガーディアンエンジェルズについてですが、この機能は記事にあった「メンター」という描写の感じで、匿名ベテランユーザーが主動的に手伝う事はなく、新しいユーザーが操作方などに疑問があったら助けを求めに行くので、「治安維持部隊」のような機能ではありません。が、PTTには確かに法務や警察機関とか治安を維持するために複雑な管理システムがある。現実の法律システムを模倣する体制がPTTに平和をもたらす一方、硬化した体制によりユーザーへの不便も多い。匿名制限のあるPTTと制限の無い2ch、どっちもそれぞれの問題があると思います。
投稿情報: Kinra | 2008/06/17 10:24
> syatyom さん
コメントありがとうございます。
民族性の違い、という点は確かに存在していると思います。ただなかなか確かめようがない要素なので、どこまで影響しているか把握するのは難しいですね。
ただ頭から否定されて良い要因だとは思いませんので、何か参考になるデータ等があれば良いのですが。
> Kinra さん
コメントありがとうございます。住人の方から情報がいただけると有難いです。
なるほど、「メンター」の方がニュアンスが近い存在なのですね。また「現実の法律システムを模倣する体制がPTTに平和をもたらす一方、硬化した体制によりユーザーへの不便も多い」という指摘、興味深いです。実物を見たことがないので勝手な印象ですが、荒れない仕組みの代償として、ユーザーはある程度の不便を受け入れているというところでしょうか。
いずれにしても、2ちゃんねるとPTTの違い、きちんと考察してみると面白いかもしれませんね。残念ながら日本では、海外というと英語圏の情報しか入ってこない状況ですが・・・。
投稿情報: アキヒト | 2008/06/24 13:30