なんでも2010年は「国民読書年」になるそうです:
■ 2010年は「国民読書年」 (YOMIURI ONLINE)
衆参両院は6日の本会議で、2010年を「国民読書年」と定める決議を全会一致で採択した。
決議は「文字・活字を受け継ぎ、更に発展させ、心豊かな社会の実現につなげていくことは、今の世に生きる我々が負うべき重大な責務」と明記した。また、「我が国でも『活字離れ』と言われて久しく、年齢層を問わず、読書への興味が薄れていると言わざるを得ない」と指摘。この現状を受け止め、05年の「文字・活字文化振興法」制定から5年にあたる10年を「国民読書年」と定めることとし、「政官民が協力し、国をあげてあらゆる努力を重ねる」とした。
だそうな。なんだか胡散臭さが漂っていますが、今朝の朝日新聞に、今後の具体的な取り組みが解説されていました。以下、「読書立国へ 試み続々」という記事からの抜粋です:
活字離れに歯止めをかけ、読書教育の拡充を目指す財団法人「文字・活字文化推進機構」(会長・福原義春資生堂名誉会長)は、衆参両院で2010年を国民読書年とする決議が採択されたことを受け、「読書立国をめざす」とアピールを出した。今後、子どもの読書教育や、その人材育成、言語力検定などを実施するという。
(中略)
また、読み聞かせの方法を中心に学ぶ、「子どもの読書サポーター講習会」を7月から来年2月にかけて13都市で開く。他に「言語力検定」を「高卒・社会人」「中高生」「小学生」の3段階に分け、来年以降に実施する。
人材育成に検定ですか……だんだん利権臭もしてきました。しかし、何を根拠に活字離れを訴えているのでしょうか。ブログブームや「ケータイ小説」のヒットが記憶に新しいところですが、紙ではなくネットを介した「読書」や「作文行為」も含めれば活字離れは起きていないような。記事はこう続きます:
推進機構の肥田美代子理事長は、「国民読書年までに、国民の9割が『読書が好き』『新聞を読む』と言ってくれる状況を作りたい」と話す。童話作家でもある肥田理事長は「30年ほど前から書店の童話の棚がどんどん狭まった。これは大変だと思ったが、現状はあまり変わらない。その時代の子どもが親になって『不読の連鎖』が続いている」と言う。
んー、ちょっと主観的過ぎるのでは。仮に書店から童話が減っているのが事実でも、少子高齢化の影響も考えられるのでは?一方で東京税関の調査(PDFファイル)では、2001年から一貫して絵本の輸入が増えているという結果が出ています。さらに統計局の社会生活基本調査を見ても、過去1年間に趣味として読書を行ったと答えた人の割合は、37.6%(1996年)-> 45.5%(2001年)-> 41.9%(2006年)とさほど変化していませんし、「なんとなく活字離れと叫んでみる」状態では説得力に欠けるでしょう。
まぁ、この「財団法人 文字・活字文化推進機構」という組織の役員名簿を見れば、裏側にある意図は窺えますが。先ほどの肥田さんの発言の中に、「新聞を読むという国民を9割にしたい」というちょっと違和感のある部分がありましたが、新聞関係者も数多く含まれているのを見れば納得です。この面子では、「ネットで新聞記事を読んだり、ケータイ小説を読むのも『活字に親しむ』に含めてくれよ」と言っても無駄でしょうね。
しかし2010年が国民読書年とやらに定められてしまったのは事実。であれば、彼らの意図はどうであれ、乗っかって騒いでしまうというのも手ではないでしょうか。「国民読書年なら、青空文庫に補助金を出してやれ!」とか「国民の『読む権利』を守るために、著作権の濫用を許すな!」とか。今朝は「ソニーと松下が電子書籍事業から撤退」なんてニュースもありましたし、「電子書籍普及にも政府の力を!」っていうPRもありでしょう。国民読書年を制定した理由が「出版・新聞業界を救いたい」ではなく、本気で「読書が好きという国民を増やしたい」のなら、これらすべての主張が受け入れられるはずです。
え?勝手に新聞や雑誌の内容をコピペするなって?ふざけんな!今年は「国民読書年」だぞ!みんなが読書できるチャンスを増やして何が悪い!!
……という言い逃れが再来年はできるということですね(違う)。
それはともかく、ウカウカしてるとどこで何を決められてるか分かったもんじゃない。前に冗談で「情報弱者保護法が制定されて、新聞購読者に国から補助金が支払われる」なんて妄想を書いてみたのですが、そのうち本気でこんな法律がつくられたりしてね。ちなみに前述の「文字・活字文化推進機構」ですが、事業内容の中に「全国の公立小・中・高に学習教材としての複数紙を配備する『新聞閲読整備五か年計画』(仮称)を策定し、それに必要な予算措置を求める」という部分があり、ネタじゃ済まされない不安を感じています。
活字離れという言葉自体久しく聞いてなかったので、あれあれ、と思ったのが第一印象でした。ブロードバンドやらITの次は読書なのかな、これと定めたときの御輿の担ぎ方は見習うものがあるな、とも思います。せっかくなので便乗して騒ごうの下りは大いに納得ですw
投稿情報: Toyolina | 2008/07/02 13:03