先日のSBM研究会に参加してから、ちょっと気になっていたこと。機能やサービスの面から「ソーシャルブックマーク(以下SBM)」という存在について分類することはなされていましたが、使い手の側、もっと具体的に言えば「なぜSBMを使うのか」という意図から考えた場合、どんな分類が考えられるでしょうか。
ちなみに前回のエントリ:
まずはおさらい。2005年に発表された"The Structure of Collaborative Tagging System"(※リンクはPDFファイル)という論文では、del.icio.us の中で使われていたタグを機能別に分類、以下の7つにまとめているそうです:
- アイテムが何に関するものか (ex. cat, Microsoft, Steve Jobs)
- アイテム自身が何であるか (ex. article, book, blog)
- アイテムの品質や性質を示したもの (ex. funny, stupid, これはひどい)
- タスク管理 (ex. toread, jobsearch, あとで読む)
- アイテムを誰が持っているか
- カテゴリーの精緻化(単体では使われないタグ)
- セルフリファレンス(myで始まるタグ) (ex. mystuff, mycomment)
タグ=SBMを使う目的ではありませんが、考察のとっかかりとしては十分でしょう。これを基に、「SBMを使う理由」を以下に書き出してみました:
1. 将来再利用したいコンテンツを記録・分類しておくため
文字通り、ブラウザの「ブックマーク機能」的な使い方。ただしウェブサービスであるという利点を生かし、「別のPCでも利用できるようにするため」という意図で使われる場合もある。
2. あるグループにとって有益なコンテンツを共有するため
「共有」にポイントを置いた使い方。自分だけが後で再利用するのではなく、自分が所属するグループやプロジェクトが有益なコンテンツを活用するために使う。
3. 自分が有益だと思ったコンテンツを他人と共有するため
2. に似ているが、特定のグループの中だけで再利用するのではなく、不特定多数の人々に向けて「これは有益だ」と感じたコンテンツを伝えるために使う。ニュースサイト的な使い方。
4. あるコンテンツに対する評価を示すため
「これはよい」「これはひどい」など、あるコンテンツに対する評価を示すために使う。投票機能的な使い方。
5. あるコンテンツに対する意見を述べるため
4. に似ているが、単に「良い」「悪い」「へー」といった程度ではなく、ある程度長い文章で意見を表明するのに使う。コメント欄的な使い方。もしくは意見を述べることによって他者とつながろうとする、ブログ的な使い方。
……以上5つ、個人的に「ソーシャル度」が高いと思う順に並べてみました。また当然ながら、過不足や表現の誤り等があると思いますので、これが絶対・最終形だと思っているわけではないということだけ留保させて下さい。
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こうやって考えてみると、いわゆる「ブックマーク」という言葉から連想される機能・目的とはかけ離れた部分で使われているのが、現在のSBM系サービスではないでしょうか。それは当然と言えば当然の話で、単にデスクトップ上のブックマークをWEB上に退避させておくだけのサービスなら、現在のような支持は得なかったでしょう。「ソーシャル」という要素がSBMの価値を高めたのであり、ソーシャル性を高める・高まる方向に進化するのは当然です。
しかしそうなると、SBMと他のソーシャル系ツール/サービスとの境界線が曖昧になります。事実、ブックマークしたコンテンツを簡単にブログに再利用できるサービス等が多々ありますから、高度に進化したSBMは、ブログやSNS等と区別がつかなくなるのかもしれません。
であれば、逆説的に考えて、SBMをSBMとして提供する必要は無いのではないでしょうか。RSSがRSSという名前を出さずに、一般の人々にも使われるテクノロジーになってきているように、「そーしゃる・ぶっくまーく」などという訳の分からない呼び名は隠してしまうと。で、「なぜ使うか」という意図の面から再定義してやれば、「ソーシャルブックマークではないSBMサービス」が可能になるように思います。
例えば20代の女性達が、「4. あるコンテンツに対する評価を示す」という使い方と親和性が高いとしたら(あくまでも空想の話なので、本当かどうかは知りません)。こんなサービスも可能かも:
面白かったページには、「みんなでパチパチ!」で拍手を送っちゃおう!
- まずはユーザー登録!簡単な登録作業をするだけで、ブラウザに「パチパチ!」というボタンが追加されるよ。
- 面白いページを読んだら、「パチパチ!」ボタンをクリック!
- みんながパチパチした数は集計されて、patipati.jp で見ることができるよ。今日、みんなが「面白い!」と思っているページは何かな?
- あの○○ちゃん(※有名モデルの名前を入れといて下さい)もパチパチに参加!○○ちゃんが気になってるコスメやファッションも分かっちゃうかも?
とかね。要ははてブのホテントリや「人気ブックマーク」だけを抜き出したようなイメージですが、ある特定のユーザー層にターゲットを絞り、「こう使ってくれるはず」という機能に特化して提供すれば、「ソーシャルブックマーク的な何か」をメジャーにすることができるかも。
……まぁ「みんなでパチパチ!」がウケるかどうかは別にして。技術や機能、サービスとしてのSBMがいまどうあるかという姿にとらわれずに、「ユーザーがどう使っているか」「なぜ『ソーシャルに』ブックマークしようとするのか」にも注目してみれば、別の進化が見えてくるのではないかと思います。
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