第2世代の登場も間近(?)な Amazon の電子ブックリーダー「Kindle」。新聞業界の救世主になる、などという評価が以前から囁かれていますが(実際 Kindle 上で電子版を販売する新聞も多いですし)、本当に紙を Kindle に置き換えちゃってもいいんじゃないの?という議論がこちら:
■ Printing The NYT Costs Twice As Much As Sending Every Subscriber A Free Kindle (Silicon Alley Insider)
タイトルの通りですが、「ちょっと計算してみたら、紙版の New York Times を印刷・配布するコストよりも、各購読者に Kindle を配る方が安くなったよ」という話。計算部分を抜粋して引用してみると:
According to the Times's Q308 10-Q, the company spends $63 million per quarter on raw materials and $148 million on wages and benefits. We've heard the wages and benefits for just the newsroom are about $200 million per year.
After multiplying the quarterly costs by four and subtracting that $200 million out, a rough estimate for the Times's delivery costs would be $644 million per year.
The Kindle retails for $359. In a recent open letter, Times spokesperson Catherine Mathis wrote: "We have 830,000 loyal readers who have subscribed to The New York Times for more than two years." Multiply those numbers together and you get $297 million -- a little less than half as much as $644 million.
New York Times の2008年度第3期の10-Qによれば、同四半期において、Times は原材料に6,300万ドル・賃金及び給付に1億4,800万円費やしている。我々がつかんだ情報では、編集部の賃金・給付は1年間で約2億円とのことである。
四半期の値に4を掛け、そこから2億円マイナスすると、Times の配達コストは1年で約6億4,400万円ということになる。
Kindle の小売価格は359ドル。最近の情報によれば、Times の広報担当 Catherine Mathis はこう述べている:「New York Times を2年以上購読している熱心な読者は83万人存在する。」この数に359ドルを掛けると2億9,700万円になるが、これは6億4,400万円の半分以下である。
確かに計算は合っています(全ての情報が正しいと仮定した上で)。ただし電子版を配布するコストだってゼロではありませんから、ここからサーバの使用料や回線使用料、さらには Kindle が壊れた場合の対応コスト等も引く必要があると思いますが、「紙版から移行されたい方には Kindle 無料配布」なんてキャンペーンもありかもしれません。
まぁ紙と Kindle は当然ながら一緒のものではないですし、紙の方が読みやすい、スクラップできて良いという購読者も多いでしょう。そんな人々のためにも紙版を廃止するわけにはいかないでしょうが、コストとメリットを秤に掛けて、「紙版から撤退して電子版一本でいきます」という新聞が今後増加してもおかしくないと思います(クリスチャン・サイエンス・モニターのように)。となると気になるのは日本国内での動向ですが……当然ながら Kindle はまだリリースされていないですし、日本特有の「押し紙」という問題や販売店との関係といった障害もあり、すぐには「電子版オンリー」という決断は下せないかもしれません。しかし「日経産業新聞モバイル」登場、なんて話もありますし、意外に早く「PC/携帯版のみ継続します」という新聞が現れても不思議ではないのではないでしょうか。
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