米小売チェーン・ターゲット社が購買履歴から女性顧客の妊娠と出産予定日を把握していた、なんて話が先日ありましたが、「顧客」のデータ分析を行うのは何も小売業界だけとは限らないようです。米国の私立学校では、両親の財力を分析して、資金集めに役立てるという取り組みが行われているとのこと:
■ Private Schools Mine Parents’ Data, and Wallets (New York Times)
日本でもそうですが、私学は在校生の両親からの寄付金が財源の一つであり、それをどれだけ集められるかが重要になっています。で様々な形で募金活動が行われるわけですが、闇雲にお願いしても効率が悪い――そこでデータ分析の出番になると。別に調査員を雇ってプライベートを暴くなどというのではなく、オンライン上で得られる両親に関する様々な情報(住んでいる住居や所有している自動車、自家用ジェット、株式や社会活動などなど)をもとに、彼らがどのていど寄付をする意識があるか・どのくらいの金額を寄付しそうかが把握されるそうです。
こうした分析は他業界では目新しいものではなく、実際に前述のターゲット社の例でも、顧客が同社の店舗でどの程度お金を落としてくれそうかについても分析が行われていました。どのくらい買い物してくれそうか、どのくらい寄付してくれそうかが分かれば、それに応じて相手へのアプローチを最適化できるわけですね。
それではこの取り組みの効果はいかほどのものか。記事ではこう指摘されています:
These efforts are paying off. In New York City, the median amount of annual giving raised per school increased 268 percent over the last decade, to $1.7 million from $462,341, according to data provided by the National Association of Independent Schools. The national median, by comparison, has increased 63 percent, to $895,614 from $548,651 (the New York sample included 20 schools; the national one, 246).
こうした努力が実を結び始めている。全米私立学校協会(NAIS)によると、ニューヨーク市で一年間に集められる寄付金の学校当たり平均額は、過去10年に対して268%上昇し、462,341ドルから170万ドルへと増えた。一方で全米平均では、上昇率は63%であり、548,651ドルから895,614ドルにしか増えていない(サンプル数はニューヨークで20校、全米で246校)。
ということで、一定の成果をあげつつあるようですね。それに伴って、募金対応を行う責任者の地位も向上しているようで、寄付金を集めるというのはこれまで以上に戦略的な取り組みになっているそうです。
ただ親の立場からすれば、学費を払っている上にプライベートまで探られて(あくまでも公開情報をベースにした分析ですが)、あまり良い気分はしなさそうですが……と思ったらやはり反発している親がいるらしく、データ分析と親へのアプローチをどうバランスさせるか、身もフタもない話をすれば「どうやって気分良くお金を寄付してもらうか」が重要なようですね。この点についても、例えばイアン・エアーズの『その数学が戦略を決める』で紹介されていた、カジノの「痛みポイント」という概念(顧客がどの程度お金をすっても楽しんで帰ってもらえるかを数値化したもの)などがあり、他業界でのデータ分析の取り組みが応用されるようになるかもしれません。
ともあれ、意外な場面にもデータ分析が浸透し始めているということで。私たちが接する様々な機関や組織が、予想以上に私たちのことを深く知っていると思って応対した方が良いのかもしれませんね。
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