なんでも環境省が、「環境短観」という実施するそうです:
■ 10年度から「環境短観」導入 環境省が新指標づくり (asahi.com)
環境省は22日、環境産業の動向を示す新たな経済指標を10年度から導入すると発表した。定期的に「環境短観」を公表することで、温室効果ガス削減や公害防止につながる技術を開発する企業への投資を促し、産業振興策にも反映したいとしている。
要は「環境に良いことをしていれば、経済・経営面でも良いことがあるよ」と証明したいと。逆に環境短観の方が日銀短観より悪かったら本末転倒ですが、「グリーン・エコノミーが経済を回復させる」という議論がどこまで本当なのか確認する1つの指標として、注目したいと思います。越権行為だ!なんて他省庁の横やりが入らなければいいけれど。
で、環境と経済という視点では、米国でこんな調査結果が発表されたことを先日のエントリでご紹介しました:
■ Pew Finds Clean Energy Economy Generates Significant Job Growth (Pew Charitable Trusts)
ここでも「1998年から2007年までの期間で、クリーンエネルギー・エコノミー内の雇用数は米国経済全体の雇用数よりも約2.5倍早く成長した」などという結果が出ていますが、同様にグリーン・エコノミーの効果を証明する調査結果が発表されたとのこと:
■ More Studies Extol Virtues of Green Jobs (New York Times)
紹介されているのは以下の2つのレポート(※リンク先はどちらもPDFファイルです):
- The Economic Benefits of Investing in Clean Energy
- GREEN PROSPERITY: How Clean-Energy Policies Can Fight Poverty and Raise Living Standards in the United States
1つめのレポート"The Economic Benefits of Investing in Clean Energy"では、ARRA(米国復興・再投資法、今年2月に米議会で成立)とACESA(米国クリーンエネルギー・安全保障法案、現在審議中)という2つの法律によって、今後10年間で1,500億ドルの投資がクリーンエネルギー関連産業に対して行われると予測。この投資によって全米に170万人分の雇用が生まれるとしています(具体的にどの地域で雇用が生まれるかについては、こちらのインタラクティブ地図で確認できます)。
そして2つめのレポート"Green Prosperity"(文字通り「グリーンによる繁栄」という意味)では、この170万人分という新しい雇用が、低所得者層にとって重要なものになると予測しています:
- Of the 1.7 million net increase in job creation, about 870,000 would be “accessible” to workers with high school degrees or less.
(新たに生まれる170万人分の雇用のうち、約87万人分が高卒以下の学歴の労働者にも「開かれた」ものになる。) - Of those, about 614,000 would be jobs that present “decent opportunities” for advancement and increasing wages.
(170万人分の雇用のうち、約61万4000人分が昇進・昇給の機会のある仕事となる。) - The increase in jobs (and decrease in the unemployment rate “should raise earnings for low-income workers by about 2 percent.
(雇用の拡大(そして失業率の低下)が低所得者層の労働者の収入を約2%押し上げる。)
とのこと。この視点は単純に「投資すれば○○人分の雇用が生まれます」という議論をするより重要かもしれません(雇用が生まれても、そこに救済されるべき人々が参加できなければ無意味なわけですからね)。
冒頭でご紹介した環境省の取り組みのように、同様の調査がこれから日本でも増えてくると思いますが、米国の予測と比べてどんな差異があるか確認してみると面白いかもしれません。願わくば、予想も現実も、米国以上の割合で雇用が生まれてくると良いのですが。
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