最近「電子チラシ」というものが普及しつつあるのをご存知でしょうか。毎朝朝刊に折り込まれてくるチラシを、ネット上で見ることができるという技術です。例えばイトーヨーカドーのサイトをでは、各店舗のチラシがすべてデジタル化されて掲載されています。これはウチの近くにある武蔵境店のページ(中央付近にチラシのコーナーがあります):
PDF形式のチラシもあるのですが、注目すべきは「デジタルチラシ」の方。まるで Google Earth のような操作感で、サクサクとチラシを確認することができます(ちなみに残念ながら FireFox 未対応!なので、IEでご確認下さい)。
このデジタルチラシを開発した凸版印刷から、新たな技術が登場しました。チラシを表示するだけでなく、「どの部分がクリックされたか(拡大されたか)」の効果測定が可能になるというもの:
■ 電子チラシ 効果測定 -- いつ何見た?印刷した? クリック履歴追う (日経産業新聞 2006年5月31日 第2面)
残念ながらWEB上の記事が見つからなかったので、要点だけまとめると:
- クリックしたデジタルチラシの位置をサーバーに記録、クリック回数が多い部分や閲覧時間、チラシ印刷回数などを把握できる。
- これにより、チラシ掲載商品の中で何が消費者の興味を引いているかが把握できる。実際の購買データと比較することで、マーケティング戦略を練ることが可能。
- 効果測定技術は住友商事系のシステム開発会社、イー・コマース・テクノロジーと共同開発した。
- デジタルチラシはバナー広告などとは異なり、直接的な効果が見込める販促手段として人気が高まっている。折り込みチラシが入らない遠方の店舗の情報を知ることができるという点でも消費者にとって価値がある。
こんな内容です。紙ベースのチラシの長所と、デジタルの長所を合体させることを狙っている、と言えるでしょう。実際、チラシ内のどの商品に関心が集まっているかが分かれば、棚割を変更するなどすぐに効果が出る行動に結び付けられると思います。その点で小売店にとっては魅力が大きいシステムではないでしょうか。
しかし意地悪な言い方をすれば、このシステムは単にチラシをデジタルに置き換えただけです。凸版印刷という印刷会社が、印刷業者の視点から考えたシステム、と言えるでしょう。「近所にあるスーパーの情報を得る」という目的に、新しいプロセスを提案するものではありません。今後「チラシで情報を得る」という行動が変わる可能性は無いのでしょうか?また、変えていく必要性は無いのでしょうか?
僕自身に良いアイデアがある分けではありませんが、例えばRSSの仕組みを活用して、欲しい情報(自宅の周囲半径1km以内にある食品小売店の冷凍食品セール情報、など)をプッシュ型で配信してくれるシステムや、携帯電話でいつでも・どこでも特売情報を確認できるシステムなど、様々な「新しいプロセス」を考えることができるのではないでしょうか。お惣菜が売れ残りそうなとき、現場の担当者がモバイル端末に「ただいまからお惣菜全品半額!」と入力するだけで、その情報が欲しい人の手元に特売情報が一気に流れる仕組み・・・など、従来の「チラシ」という販促方法を離れて考えてみることが必要だと思います。
ある意味、チラシも「いままで」の情報発信手法の象徴だと思います。それが「これから」の手法にどれだけ置き換わるか、あるいは「いままで」の手法がリニューアルされて(延命措置されて?)生き残るか、注目しても面白いのではないでしょうか。
<追記>
参考まで。中野区ではこんな実験が行われています:
■ 電子チラシ 携帯へ -- 中野区の商店街 今夏にも配信実験(中日新聞)
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