ITmedia のニュースによると、アメリカの大手メディアが YouTube への対抗サイト設立を計画しているそうです:
■ YouTube対抗サイト、Foxなど大手メディアが検討 (ITmedia News)
記事によれば、Fox、Viacom、CBS、NBC Universal の4社が、傘下にあるテレビ局のコンテンツを配信するサイトを共同で設立することを検討中とのこと。彼らは YouTube の躍進を前にして、「オレたちが作ったコンテンツで勝手に稼いでいる、けしからん」という心境なのだとか。他人においしいところを持っていかれるぐらいなら、自分たちでやるぞ、ということなのですね。
まだこの計画が実現するかどうかは微妙なところのようですが、仮に大手メディアが運営するビデオ共有サイトが生まれたとしても、YouTube に打ち勝つのは難しいんじゃ・・・というのが多くの人々の印象ではないかと思います。この漠然とした感覚はなんだろう?と考えていたのですが、Publishing 2.0 にこんなコメントがありました:
The only missing ingredient is search — people come to YouTube to search for music videos or the latest Comedy Central clip. Once you can search for video from a third party search engine, it won’t matter where the video is hosted (putting aside for a moment the still substantial bandwidth costs).
議論に欠けているのは「検索」という部分だ。人々が YouTube にアクセスするのは、ミュージック・ビデオや Comedy Central の最新映像クリップを検索するためである。第3者の検索エンジンでWEB上の映像が検索できるようになったら、それが置かれているのがどのサイトかなんてことは問題じゃなくなるだろう(通信速度の問題は別として)。
-- "Platforms Are The New Portals"
そう、YouTube にアクセスするのは「コンテンツを探すため」なんですよね。急にタモリ倶楽部の「空耳アワー」が見たくなったとしても、これまでは(関東地方周辺では)金曜日の深夜12時15分を待たなければいけませんでした。しかし YouTube なら、「空耳」というキーワードで検索するだけですぐに映像を見ることができます(それが違法にアップロードされたコンテンツかどうかについては、ひとまず別の問題とさせて下さい)。「コンテンツがあること」「見たいときに見れること」が、YouTube では実現されているわけです。
恐らくメディアによって作られたビデオ共有サイトでは、傘下のテレビ局以外の企業が持つコンテンツをアップすることは難しいでしょう。「Fox の映像が見たければ彼らのサイトへ、空耳アワーならテレビ朝日のサイトへ、それ以外は YouTube へ」というような手間を人々がかけるとは思えませんから、結局最もコンテンツが豊富なサイト=YouTube へのアクセスは止まらないと思います。であれば、YouTube を含めたあらゆるビデオ共有サイトが検索できる検索エンジンを開発して、そこから広告収入を得るという方が手っ取り早いに違いありません。さらにそのエンジン「だけ」しかクローリングできないサイトを立ち上げて、そこに魅力的なコンテンツをアップしておけば、次第に「YouTube で検索 -> 検索エンジンで検索」という流れを作ることができるはずです。
まあそんなエンジンが開発できるなら、とっくの昔にやってるよ・・・という話なのかもしれませんが。しかし人々の視聴スタイルが「放映時間を待つ」から「ビデオを借りてくる」へ、そして「検索する」へと変わりつつある以上、新しいポータルを作るよりもより強力な検索エンジンを作ろうとする方が理に適っていると思います。
また蛇足ですが、YouTube っていわゆる「ながら見」ができないんですよね。「見たいコンテンツがある -> 検索する」という能動的な行為が可能な反面、「なんでもいいから笑えるネタを」という受動的な行為は不可能です(レーティングもありますが、高評価のコンテンツでも面白くないことがありますし、そもそも「笑えるのが欲しい」「泣けるのが欲しい」「怖いのが・・・」という声には応えられません)。
我が家ではそれを補うものとして、はてブの「注目の動画」や mixi のコミュ(面白い動画を探せ、みたいなやつ)を活用しているのですが、だったらテレビ局の目利きプロデューサーが「まとめサイト」を立ち上げればいいんじゃ?と思うのですが、どうでしょうか。『テレビはインターネットがなぜ嫌いなのか』によれば、現在でも自ら番組制作するよりも「面白い企画を探す(作るのは制作会社)」という機能の方に特化しているキー局があるようですし。いっそのことCGM時代のナビゲーターとなる道を模索するメディアが現れても、面白いかもしれません。
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