子供の育て方というのは、恋愛や結婚に匹敵する一大テーマでしょう。いわゆる育児本・育児雑誌は無数に存在していますし、ビジネス系の雑誌で育児関連テーマが取り上げられることも珍しくありません。中でも「どうやったら賢い子供に育つか?」という点については様々な議論が繰り返されていますが、意外にも「賢いと言わない」ことが効果的である、という研究結果が出たそうです(via Neatorama):
■ The Secret to Raising Smart Kids (Scientific American)
副題にはこう書かれています:
Hint: Don't tell your kids that they are. More than three decades of research shows that a focus on effort—not on intelligence or ability—is key to success in school and in life
ヒント: 子供に「君は賢い」と言わないこと。頭の良さや能力ではなく、努力に焦点を当てることが、学校生活や人生において成功するカギであることが、30年以上に渡るリサーチにより明らかになった。
とのこと。要は「努力し続ける性格に育てればいい!」という結論なのでしょうか。論文の中にはこう解説されています:
In studies involving several hundred fifth graders published in 1998, for example, Columbia psychologist Claudia M. Mueller and I gave children questions from a nonverbal IQ test. After the first 10 problems,
on which most children did fairly well, we praised them. We praised some of them for their intelligence: “Wow … that’s a really good score. You must be smart at this.” We commended others for their effort: “Wow … that’s a really good score. You must have worked really hard.”例えば1998年に出版された、小学5年生の生徒数百人を対象とした研究において、コロンビア大学の心理学者 Claudia M. Mueller と私(※Carol S. Dweck、記事の著者でスタンフォード大学の教授)は子供たちに非言語的IQテストを実施した。最初の10問が終わった段階で、子供たちは非常に上手く問題を解いており、私たちは彼らを誉めた。彼らの一部に対しては、私たちは彼らの知性を誉めた。「わぁ、これは良いスコアだ。君たちは頭が良いに違いない。」そして別の生徒達に対しては、私たちは彼らの努力を誉めた。「わぁ、これは良いスコアだ。君たちはすごく努力したに違いない。」
というわけで、誉めるという点は同じだったのですが、「何を誉めるか」という点で知性・努力の2つに分けたと。結果はこう解説されています:
We found that intelligence praise encouraged a fixed mind-set more often than did pats on the back for effort. Those congratulated for their intelligence, for example, shied away from a challenging assignment—they wanted an easy one instead—far more often than the kids applauded for their effort. (Most of those lauded for their hard work wanted the difficult problem set from which they would learn.) When we gave everyone hard problems anyway, those praised for being smart became discouraged, doubting their ability. And their scores, even on an easier problem set we gave them afterward, declined as compared with their previous results on equivalent problems. In contrast, students praised for their effort did not lose confidence when faced with the harder questions, and their performance improved markedly on the easier problems that followed.
知性を誉めることは、努力を誉めることよりも、物の見方を固めてしまう結果になることが分かった。例えば知性を誉められた生徒達は、努力を誉められた生徒達よりもずっと、困難な課題を避けて易しい問題を望むようになった。(努力を誉められた生徒の多くは、学びが得られる困難な課題を求めるようになった。)全員に難しい問題を与えると、知性を誉められたグループは、やる気を失って自分の能力に疑いを持つようになった。さらに彼らのスコアは、その後に実施された易しい問題においても、以前の同レベルの問題に対する結果に比べて下落した。それに対して努力を誉められた生徒達は、難しい問題についても自信を失うことなく、続いて提示された易しい問題においては成績が著しく改善された。
とのこと。良い結果だったと子供を誉めるにしても、「なぜ誉めるのか」で大きな差が出てしまうわけですね。「頭が良いこと」ではなく「努力したこと」が誉められた場合、その後も努力し続けようとするようになる、というのは確かによく理解できる結果です。
そういえば以前、こんなエントリを書いたことがありました:
こちらでも興味深い実験について紹介していますので、興味のある方は全体を読んでみていただきたいのですが、要は
能力は努力次第で変えられるという考え(能力変化観)をもつ人は、能力は固定的でコントロールできないものだという考え(能力固定観)をもつ人に比べ、内発的に動機づけされやすい
という傾向があると明らかになったとのこと。そしてここでも子供たちに接する際に、カギとなったのは「努力の大切さを教えること」だったそうです。
というわけで、別に誉めるのがいけないわけではないでしょうが、「なぜ誉めるのか」に注意しないと子供たちに誤ったメッセージを与えることになる、と。逆に言えば、成績が悪かったことを叱る場合でも、「ある知識やスキルが足りなかったこと」ではなく「努力しなかったこと」を注意しなければならないというわけですね。これは子供たちだけでなく、大人(部下や同僚)に接する場合でも、気をつけなければならないポイントなのかもしれません。
最近のコメント