GIZMODO が CES2008 の会場で行った「悪ふざけ」が、ちょっとした波紋を呼んでいます。まずはこちらの告白記事からどうぞ:
■ Confessions: The Meanest Thing Gizmodo Did at CES (Gizmodo)
記事内にあるのと同じビデオが YouTube にあったので、念のため貼り付けておきます:
話は単純で、そこら辺にあるディスプレイをリモコンで次々消していく、というイタズラ。しかしプレゼン中の画面も消すという暴挙(?)に出たため、非難の声が出ています。
例えば以下の ValleyWag の記事では、「この一件で、ようやく認められるようになったブロガーの CES 参加が来年から危うくなるのではないか」という懸念の声が上げられています:
■ CNET editor proves there's no difference between "press" and "blogger" (ValleyWag)
また以下の記事では、CES という場が企業にとっていかに大事なものか、そしてディスプレイ(に流れる映像)がいかに重要なものかを指摘し、今回の「いたずら」が企業にもたらした被害は大きいと訴えています:
■ Total and Utter Crap: Gizmodo’s Stupid CES Prank on Motorola and Us Bloggers (Gear Diary)
ただ Gizmodo 側を擁護する意見もあり、読者コメントを見ても単純に「笑った」「面白い」という反応が目立ちます。皆さんはどう思われたでしょうか。
個人的には、Gizmodo に悪意は無かった(つまり特定の企業の評判を落とそうという意図があったのではない)とは思いますが、イタズラとしては度が過ぎているように感じました。この種の見本市に出展者として参加したことがあるのですが、仮に同じようなイタズラをされたら、動揺しまくって散々なプレゼンになってしまうだろうなーと感じています。「頑張ってお客さんにも入ってもらった。よーし、良い印象を与えて商談につなげるぞ!」と意気込んでいるところにこれをやられたら……傍観者としては楽しめますが、被害者になったら激怒するでしょうね。
またブロガーに対する評価への影響、という点も気になります。さすがに CES で「全ブロガー出入り禁止!」とはならないでしょうが、他にブロガーから参加申請を受けているイベントの主催者が「やっぱりブロガーは何するか分からないから怖い。これまで通り、メディア関係者だけを招こう」と考えてしまうことにはならないでしょうか。ありがたいことに、自分自身もブロガーとして様々なイベントにお招きいただけるようになりました。今回の一件を見て、大げさに言えば「自分の行動次第で、将来ブロガーがどんな地位を与えられるかが決まるのだ」という心構えでイベントに臨まなくてはならないな、という気持ちになっています。
ただ、一方でこんな意見も:
■ On Gizmodo’s douchery and blogging (CrunchGear)
悪ふざけ的なノリもブログの個性、と述べ、以下のように訴えています:
But, as I mentioned before, blogs have certain defining characteristics. If these characteristics are missing, they are just “newswires.” Some blogs have already lost these characteristics and, more distressingly, many blogs are avoiding them in fear of losing access to press events. These two extremes lead to boring writing and fawning praise, two things a blog should never offer. Ass licking != ass kicking.
しかし、前述した通り、ブログには独特な性質がある。その性質を失えば、それはただの「ニュース配信装置」に成り下がるだろう。すでにいくつかのブログはその性質を失っており、さらに悲しいことには、「プレス関係者が招かれるイベントへのアクセスを失いたくない」という恐れから多くのブログがその性質を得ることを避けている。極端になれば、つまらない文章、ただへつらうだけの記事になってしまうだろう。ブログが決して行ってはならない2つのこと、それは「ass licking (ごまをする)」と「ass kicking (威圧する/侮辱する)」だ。
ということで、アクセス権をエサにされて飼い慣らされてしまうのも問題だ、と。この辺は「ブログと広告」という問題に通じるものがありますが、GIZMODO の一件は「ブロガーとはどんな存在であるべきか」という論争に(思いがけなく)通じていくのかもしれません。
そういえば昨日、ふと本棚にあった『インターネットは「僕ら」を幸せにしたか?』を読み返していました。2005年9月出版ですから、僕がちょうど Polar Bear Blog を始めた頃の本。その第3章は「ブログはジャーナリズムを『殺す』のか?」と題されていて、「ブログが旧来型のジャーナリズムに置き換わっていくのか」が考察されています。ブログというよりも「市民ジャーナリズム」に主眼を置いた議論なのですが、読み返してみて、3年過ぎたにもかかわらずブログとジャーナリズムの関係を巡る議論が驚くほど進展していないことに気づきました。最近はブログではなくミニブログの方が賑わっているようですが、そろそろ何か、ブログでも新たな進化があって欲しいと思います。
最近のコメント