Google が新プロジェクト「Knol」を立ち上げました。簡単に言えば、「Google 版 Wikipedia」。ある事象に対する解説を、人々に書いてもらおうというものです。ちなみに「Knol」とは「Knowledge (知識)」から付けられた、とのこと:
■ Google版Wikipedia? 知識共有ツール「knol」をテスト (ITmedia News)
■ Knol―GoogleがWikipedia+Squidoo的なユーザー生成型知識コンテンツをテスト中 (TechCrunch Japanese)
海外のIT系ニュースサイト/ブログではかなり話題になっているのですが、日本語の記事はまだ限られているようですね。ちなみに、以下は Google の公式ブログでの解説です:
■ Encouraging people to contribute knowledge (Official Google Blog)
蛇足気味に、要点を箇条書きにまとめてみるとこんな感じ:
- 特定のトピックについて、ユーザーが自由に解説を書き込める(現在はクローズドのベータテスト中で、招待された人しか書き込み/閲覧ができない)。
- Wikipedia とは違い、記事を編集できるのはそれを書いた本人のみ。ただし同じトピックについて、複数の作者(つまり複数の記事)が存在し得る。
- 同じトピックに複数の記事が存在した場合、検索結果でどの記事を先に表示するかは、読者による投票と、Google の評価アルゴリズムにより決定される。
- 記事には広告が表示され、得られた収入は記事の作者と折半される。
現在招待されているのは、医師などの専門知識を持っている人々のようですね。まずはクオリティの高いコンテンツを用意して、あらかじめ「場の雰囲気」を確立した上で一般公開、という流れを狙っているのでしょうか。
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このニュースを聞いて最初に思ったのは、「確かに Google で知らないトピックを検索すると、先頭に出てくるのは Wikipedia だよなぁ」ということ。例えば何でもいいのですが、ロングテールは現時点で1位、CGMは現時点で2位などなど、かなりの確率で Wikipedia を目にすることとなりますよね。「そんなら俺たちが作ればいいんじゃね?」と Google が思い立っても不思議ではないなぁ、という感想です。
と思ったら、Nicholas Carr が同じようなことを書いてました:
■ Googlepedia (Rough Type)
英語版 Wikipedia はより質・量ともに充実していますから、様々なトピックが検索結果で上位表示されるようですね。これだと、知らない事象を調べようとする人にとっては、Google は単に「Wikipedia 検索ツール」になりかねないわけです。それじゃあ得られたはずの広告収入が得られなくなる、ということで、「Google 版 Wikipedia (広告付き)」という発想に至った、という裏読みは大きく外れてはいないのでは。
しかし既に Wikipedia という巨人がいるわけですから、「どうやって独自性を出すのか」「どうやってコンテンツの書き手を呼び寄せるのか」と考えたときに、一石二鳥となるのが「書き手を一人に限定する」という仕組みなのでしょう。こうすれば、誰もが(同じ記事を)自由に編集できる Wikipedia との違いが出せる上に、制作者に報酬が払えるわけです。また Google が言うように、「名声を得る」というインセンティブも見逃せません(「インターネット」で検索したら、自分の署名が入った記事がトップに表示された……などということが起きれば相当な名誉ですよね)。一般公開されたら、記事を書いてみたいという人はかなりの数に上るのではないでしょうか。
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個人的に「集合知の Wikipedia と個人知の Knol、どちらが優れた記事を生み出すか?」という点に興味があります。また Knol では同じトピックでも複数の記事が存在し得るわけですから、例えば「太平洋戦争について、右派の視点から書かれた記事と左派の視点から書かれた記事、両方を読み比べる」などといった使い方も可能になるでしょう。その意味で、新しい発想がどんな記事を生むかに期待しています。
また以前から書いてきましたが(この辺の記事で)、「知識を提供することで対価を得る」という行為を可能にする仕組みは、ネットに知識を流入させる上で欠かせないと思います。収入がどの程度になるかはふたを開けてみなければ分かりませんが、例えばこれまでネットに記事を出してこなかった専門家たちが、Knol 上で知識を披露する――といった効果を期待してもいいのではないでしょうか。
一方で、「お金というインセンティブの負の側面を考えなければならない」「Wikipedia への参加者が減り、質の低下を招くのではないか(最悪の場合は共倒れ?)」といった不安もあると思います。とりあえずはどんなコンテンツと共に一般公開されるか、また日本語版の立ち上げはあるか、様子見といったところですね。
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