外国企業での社内ブログというと、Sun MicrosystemやIBMの事例がときおり紹介されるだけで、あまり解説っぽい記事を目にすることがありません。しかし先週は2つの記事を見かけたので、合わせてコメントしておきたいと思います。
Download the iUpload and Guidewire Group Corporate Blogging Survey
Sharing Knowledge With A Corporate Blog (Webpronews.com)
アメリカで社内ブログは普及しているのか?
"Corporate Blogging Survey"の方は先日の記事でもご紹介しましたが(アンケート:米国企業でのブログ活用)、アメリカ企業でのブログ活用に関するアンケート結果です。"Sharing Knowledge With A Corporate Blog"の方は「社内ブログを情報共有に活用できるのでは」という提言をしている記事です。
"Survey"の方では、アンケート回答企業のうち約半数がブログを開設しており、ブログ導入済み企業の9割以上が社内ブログを行っている、という結果が出ています。一方"Sharing..."の方では"Unfortunately very few companies realize the potential of friction-free, personal publishing for enterprise use"という箇所があり、社内でのブログ活用はそれほど進んでいない印象を受けます。果たしてどちらが正しいのか?
以前の記事にも書きましたが、"Survey"のアンケートに回答したのは140企業のみですし、そもそも調査を行ったのはブログツールのベンダーなので(改めて、ベンダー性悪説を唱えているわけではありません)、少し割り引いて考える必要があると思います。
また日本では「社内ブログ」「イントラブログ」のような言葉が生まれていますが、英語でこれに対応する単語はまだ標準化されていません。("corporate weblog"や"internal blog"、"dark blog"などがよく使われる単語。ただ"corporate weblog"はビジネスブログも含む単語ですし、"dark blog"は「社外には公表していないブログ」なのでパイロット・プログラム中のブログも含んだ単語です。)この点からも、アメリカでもそれほど社内ブログという概念は普及していないのではと考えています。
(※余談ですが、どうもアメリカでは「企業におけるブログ活用」と言った場合、社内と社外を分けていないような気がします。ちょうどEメールを「社内メール」「社外メール」と区別しては使かわないイメージ。)
社内ブログを促進する要因
"Survey"では、社内ブログの活用方法として「知識共有(knowledge-sharing)」と回答した企業が63%、「社内コミュニケーション」が44%という結果が出ています。また"Sharing..."が社内ブログを勧める理由として挙げているのも、タイトル通り"Sharing Knowledge"ですし、「知識共有」が社内ブログを導入する理由となっているようです。
ではなぜ、いま「知識共有」なのでしょうか。日本では"Knowledge Management"というと「何をいまさら・・・」的な臭いがする言葉ですが、海外では再び流行となりつつあるようです。"Sharing..."の記事を引用すると、
In the survey, 67% of companies cite knowledge management/business
intelligence solutions as important to achieving their strategic goals
over the next three years. This compares with 63% that accord the same
level of importance to new CRM solutions, and 35% that see
mobile/wireless technology as vital.
とのことで、CRMやモバイル/ワイヤレス技術よりも、ナレッジマネジメントの方が重要性を認識している企業が多いとのこと。
重要なのは、ナレッジマネジメントがビジネス・インテリジェンス(BI)と結びついている点です。アメリカではSOX法が施行されたことにより、企業は内部統制を強化するように迫られており、これを支援するツールとしてビジネス・インテリジェンスが注目を浴びています。BIの周辺領域、あるいは関連分野として、ナレッジ・マネジメントに再びスポットライトが当てられているのでしょう。
また"Sharing..."の中で指摘されているのは、「属人的な知識を共有するツールとして、社内ブログが役立つのでは」という点です。こちらは日本でも良く言われる「暗黙知を形式知に変えるツールとしてのブログ」というポイントですが、いまそれが求められている理由として、"age demographics and high turnover rate"が挙げられています。知識を人の頭からデータベースの上に移しておくことが、これまで以上に求められているのです。
SOX法による社内統制強化というニーズと、(高齢者の退職/転職率の上昇を原因とした)知識流出の防止というニーズ。この2つが、アメリカで社内ブログが注目されつつある要因ではないか(もしくは要因となりつつある)と思います。
日本もアメリカの後を追うか?
既に多くの観測がなされていますが、日本版SOX法の導入により、日本でもBIの導入が進む可能性があります(参照:「ビジネスインテリジェンスの推進要因」ITmedia)。また2007年問題や2010年問題などが話題となっているように、知識を持った高齢の社員が退職することが問題化してきています。であれば、日本でも今後ナリッジ・マネジメントが再び話題となり、その流れで社内ブログが(これまで以上に)注目を集める可能性があります。
先日の記事(リアルコムセミナーに参加してきました。)でも書いたのですが、社内ブログとBI的な分析ツールを融合しようという動きがベンダーから出ています。日本版SOX法との観点から社内ブログが考えられるようになれば、この流れは強くなっていくのではないでしょうか。そうであれば、日本版SOX法により、BIとセットで社内ブログの導入が進むという可能性もあります。
"Survey"では知識共有以外にも、30%の企業がプロジェクト・マネジメントのために社内ブログを使っていると回答しています。プロジェクト・マネジメントも様々な支援ツールがありますから、BIと同様に、社内ブログとの融合が進むことも考えられます。もしかしたら、「他ITシステム+社内ブログ」という形で、思わぬところから社内ブログの需要が生まれてくるのかもしれません。
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