今日は少しいつもと違う件について書くことをお許し下さい。例のマドリッドで足止めをくらっていた時に、武蔵野美術大学との問題が持ち上がっていることを何度かツイートしていましたが、その件について全体像をお話しさせていただきたいと思います。
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今回トラブルに巻き込まれているのは、僕の妻です。彼女は武蔵野美術大学の通信課程で勉強中で、現在3年生。話は3年前、彼女が通信教育を始めた頃に遡ります。
* 個別入学相談会での大学側の説明 *
3年前、大学が主催した個別入学相談会でのこと。これは入学を検討中の学生と、大学の関係者がマンツーマンで質疑応答できるというもので、僕の妻の担当になったのは武蔵野美術大学の某教授でした(まだ在籍中の教授のため、仮にA教授としておきます)。
僕の妻は理容学校(専門学校)を卒業しているのですが、問題となったのは、その専門学校からの「編入」という扱いで武蔵野美術大学での勉強を始められるか否かという点。編入が認められれば、卒業に必要な単位数の中から30単位分が免除されます。しかしA教授の回答は「その学歴では編入は無理」というもの。そこで僕の妻は、編入に必要な申請は一切行わず、まったくのゼロ単位という状態から勉強をスタートさせました。
* 誤りの発覚と、大学への要望書の提出 *
それから3年が経ったある日のこと。妻の専門学校時代の友人が、同じく武蔵野美術大学通信課程への入学を考えているということになり、改めて入学の要項を確認してみたところ。「妻が卒業した理容学校でも、編入に必要な資格を満たしているのではないか?」という疑問が持ち上がりました。そこでよくよく確認してみると、やはり30単位が認められても良かったのだという結論に至りました。
まずは大学側に電話で相談します。しかし回答は「こういう問題は要望書という形で、紙にして提出して欲しい」というもの。そこで妻は以下のような文章を作成して提出しました(※以下に引用したものは要望書の一部になります。またこの際、要望書と併せて専門学校の卒業証明書と、編入に必要な「専門士」の資格を有していることを証明する書類を提出しています)
武蔵野美術大学通信課程へ入学するに当たり、私は新宿において開催された入学相談会に参加いたしました。相談会では、造形学部通信教育課程専任教員でいらっしゃるA教授に、個別相談形式にて入学に関する様々なご指導をいただきました。その中で、A教授から、私の学歴に関する質問を受けました。私は、2年間通学した理容専門学校を卒業している旨を答えました。私の学歴を聞いた教授は、編入できるかどうか、もしかしたら編入できる可能性があるのではないだろうか?少し待って下さい。と、私に告げ席を立ちました。しかし、数分後に席へ戻られた教授の口から出たお答えは、理容専門学校では編入が無理である事。理容専門学校卒業の学歴は武蔵野美術大学通信課程で単位として活かす事は出来ないが、学ぼうという気持とタイミングが大切である事。編入以外でも頑張っている学生は多く居るから一緒に学びませんか?と、編入は無理だが入学を強く進める内容を私に熱く語ってくださいました。私は、その時に耳にしたA教授の言葉を心から信頼し、編入は無理だが入学する決心を固めました。
しかし、その時の説明には大きな誤りが含まれていました。2年間通学した理容専門学校を卒業した私は、専門士の称号が与えられており(別途資料添付)、編入の資格を持っていたのです。入学説明会において間違った説明を受け、認定されるはずの単位(30単位)を受ける事無く、4年生へと進もうとしています。入学説明会において、正しい説明をしてくだされば、履修登録科目などを含め、私の学生生活はあらゆる点において違っていた事でしょう。卒業する為、これまでに犠牲にした物はとても大きいのです。30単位があれは、学習にゆとりすら生まれていたと思います。それほど30単位は大きいのです。この学習計画の乱れは、取り返せる物では決してありません。
これが今年3月末のことでした。
* 大学側の回答と、スクーリング申し込みへの影響 *
大学からは「4月9日前後に回答する」との連絡があったのですが、けっきょく4月9日の出国には間に合わず、僕らはそのまま旅行に出かけることに。回答は郵送されるとのことでしたので、妻の分の郵便物だけ妻の実家に転送されるように設定し、向こうから手紙が確認できるようにしておきました。
また、ここでもう1つ問題になってきたのは、本年度の履修登録をどうするかという点。30単位が認められるか認められないかによって、履修の内容は大きく変わってきます。本来の予定であれば、履修登録の締め切りの前に帰国するはずでしたので、妻は仮の学習計画を登録した状態で旅行に出発しました。
そして大学側からの回答が。本当はもう少し早く内容を確認できたはずが、悪いときに悪いことは重なるもので、転送設定をしたはずが郵便局のミスで配送が遅れるという事態に(余談ですが、後で郵便局の局長が妻の実家に謝罪に訪れたとのこと)。また最大のトラブル、アイスランドでの火山噴火で帰国が1週間遅れるという事態になり、僕らが回答の内容を知ったのはスペインにいる間になってしまいました。
大学側の回答書の要旨をまとめると、以下のようになります:
- 入学相談会は、入学の導入的内容をお話する場だと大学は受け止めている。
- 出願者には、正式な案内資料を読んで出願していただいていると考えている。
- 本学の規定において、単位の追加は入学前においてのみ可能になる。従って、30単位の認定を認めることはできない。
というもの。つまり案内書類には編入に関する正しい情報が含まれていて、それを読まなかった方に責任がある、と。考えようによっては入学相談会の意味を完全否定している内容ですが、とにかく「A教授の誤った説明によって申請ができなかった」という部分には一切踏み込まず、「大学の規定なので曲げられない」という回答になったわけです。
この回答を知り、日本時間で4月20日から21日にかけ、大学側との話し合いを行いました(当然、国際電話で)。しかし電話に出たのは事務の職員で、「回答書の内容以上のことは言えない」「上の者を電話に出すことはできない」の一点張り。ついには20日の電話において、大学側から一方的に電話を切られ、もう1つ相談したかった「外国に足止めされているので、スクーリングの申し込みを待ってもらうことができないか」というお願いは聞いてもらえず終いに。
そこで21日、スクーリングの受付が終了していることを知りつつ、改めてスクーリング申し込みの延長を申し出たところ、大学側の回答は以下のようなものでした。
スクーリングの申し込みに関しては、火山灰の影響によって帰国できないから申し込みが遅れると言った理由であっても、それが自然災害であっても、期間内に申し込み手続きをすべて完了することが受講の条件なので、火山の噴火で帰国できないのが遅れの理由であっても、スクーリングの参加を認めることはできない。この事に関しては、大学への連絡が、スクーリングの申し込み期間内、期間外、そのどちらであっても関係は無く、スクーリングの申し込み期日以内に、所定の手続きをすべて完了させないと、スクーリング参加は認められない。
* 帰国、スクーリングについての対応の変化 *
スペインという遠く離れた場所から、国際電話で大学の事務と口論しなければならない。そんなストレスの溜まる環境から、4月25日にようやく帰ってくることができました。
そして、唯一事態が好転する出来事が起こります。僕がTwitterに書き込んだメッセージを読んで、ある方が大学側に「これは被災ではないのか」と指摘していただいたところ、大学内部で再び検討が行われることに。その結果、4月28日に再度大学側から連絡があり、前回の「理由が何であれ一切例外は認めない」という態度から一変、「自然災害と交通遅延は同じではないので、やはりスクーリングを認める」という回答となりました。
実はこの対応についても、様々な事実の訂正があり(例えば前回の説明では「認める認めない以前に、もうスクーリングの申し込みは一杯」だったのが、「やっぱり空きがあったので大丈夫です」と言われるなど)、大学側への不信感が逆に深まる結果となってしまったのですが……いずれにしても、30単位も認められない、スクーリングにも出れないという最悪の状況だけは回避するために、スクーリングの申し込みだけは行う方向です。
* 何を騒いでいるのか? *
以上が問題の概要になります。様々な突発的事態が絡んでいるので、うまく纏められた自信が無いのですが(僕自身まだ把握できていない点もありますので、誤りがあれば後で訂正します)、武蔵野美術大学に対して言いたいことの根本はこの一言に尽きます:
教授の説明で30単位を損したことについて、何らかの対応を行って欲しい。
確かに「言った」「言わない」の問題になることは理解しています。しかし今回の回答では、その部分にすら大学側は踏み込んでいません。仮に回答が、「このような誤りがあったかどうかについて、教授側に聞き取り調査を行った。しかしA教授はこの件を否定しているので、大学としては対応ができない」というものであれば、まだ納得ができたでしょう(その場合は恐らく、A教授への抗議という形に話が進んだと思います)。しかし「相談会での説明を信じて、書類を読まなかった方が悪い」とも受け取れる回答では、到底受け入れることはできません。
「30単位ぐらいでギャーギャーいうな」「その分いろんな勉強ができたじゃないか」という意見もあるでしょう。しかし通信生は、みな他に様々な生活を抱えながら勉強しています。仕事や家庭、そして子育て、自分の健康の問題などなど。30単位が認められていたら、一般教養科目の履修をパスすることができ、その分絵の勉強に専念できたことでしょう。「絵の勉強をしに来たけど、大変だから勉強しないでも30単位ちょーだい」というのではありません。
僕も3つの大学を卒業している人間なので、大学というのがどういう組織なのか、事務方と教授たちとの関係がどんなものなのか、甘い幻想を抱いているわけではありません。しかし学生は無力な存在であり、事務の方々が彼らではなく先生たちの方を向いて行動していては、必ずまた同じような問題が生まれることでしょう。仮に「過誤の認定が困難なので救済はできない」という結論が動かせないにしても、再発の防止に取り組むつもりがあるのかどうか、せめてその点だけでも明らかにしたいところです。いや、せめてそんな姿勢を見せてくれないと、大学を信じて勉強を続けてきた妻が哀れすぎます。
僕が言うのも何ですが、妻は美術の勉強に頑張って取り組んでいます。名前は伏せますが、努力が認められて、奨学制度にも認定されたほど。なので決して「勉強したくねーから単位よこせ!」という気持ちから行動しているのではない、という点だけはご理解いただければ幸いです。
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今回の件では、スペインに足止めされている頃から、多くの方々にご支援いただきました。まだ係争中であるため、きちんとご連絡ができず、大変申し訳ございません。この場を借りて、あらためて感謝の気持ちを記しておきたいと思います。ありがとうございます。
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