ある行動をしようとした場合、自分だけで自分を律するより、「他人もそうしてるから……」という状況があった方がより行動が生まれやすい。いわゆるピア・プレッシャーというやつですが、その心理を省エネに利用しようというサービスが本格的に始まるとのこと:
■ Utilities Finding Peer Pressure a Powerful Motivator (New York Times)
米国の公益企業、National Grid 社が導入する"Home Energy Report"というプログラムについて。実験自体は以前(2009年10月)から行っていたものということで、またピア・プレッシャーを利用するというアイデア自体はそれほど珍しくありませんから、どこかで聞いたことがある方も多いかもしれません。簡単に言ってしまえば、毎月各契約者の家庭に「エネルギー通信簿」とでも呼ぶべきレポートを送付して、そこで他の契約者と比較した場合の「省エネ成績」を伝えるわけですね。
The report compares the customer’s energy use against a group of 100 neighbors with similar profiles defined by square footage, type of home (single or multifamily), and home heating source. Customers also see how they measure up to their most “efficient neighbors,” defined as the top 20 percent (lowest energy users) in their peer group of 100.
このレポートでは、 契約者のエネルギー消費状況が近隣の100軒と比較される。比較対象は建物の広さ、住宅の種類(一人暮らし向けか家族向けか)、熱供給の種類といったパラメータを基に、契約者と似た人々が選ばれている。また契約者は、どうすれば近隣で最も省エネを達成している(100軒の比較対象の中で上位20%にいる)人々に追いつけるかも知ることができる。
だそうです。実際にパイロットプログラムでは、電力およびガス供給の両面で、消費量が1%削減されたそうです。ほとんど誤差の範囲じゃ……とも思うのですが、対照グループと比較して認められた効果とのこと。さらに、カリフォルニア州サクラメント郡に電力を供給している Sacramento Municipal Utility Distric の Ali Crawford 氏によると、
“The tricky thing about changing behavior is that you are not sure if it’s going to be sustainable,” Ms. Crawford added. “People may remember to turn off their lights for a few months, but they may slip back. We’ve found these reports, which are delivered on a regular basis, continue to reinforce good behavior.”
「ある人物の行動を変えようとした場合にやっかいなのは、行動を維持できるかどうか分からないという点です」と Crawford 氏は続ける。「照明をこまめに消すことを数ヶ月間続けられるかもしれませんが、その後は元通りです。しかしこういった(ピア・プレッシャー型の)レポートを定期的に送付した場合、行動を持続させる効果が見られました。」
という効果もこの「ピア・プレッシャー利用型プログラム」には見られるとのこと。
しかしこのプログラム、「プライバシー侵害だ!」として怒り出しそうな人がいるだろうと思っていたら、案の定離脱する契約者も中にはいるそうです(別に個人名が晒されるわけではないのですが)。また電力/ガス会社にとっては、手間暇かけて売上を減らすような行為なわけですし、必ずしもあらゆる場面で導入できるプログラムではないでしょう。ただ省エネはエネルギー安全保障/環境保護とも密接に絡んでくる問題ですし、1つの手段として実地検証が進められて欲しいと思います。得に「お隣さんではね……」というのは、日本人には特に効果的な手法だったりして。
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