TypePadの障害
米TypePadでまた障害が発生した様子。ディスクシステムに異常があったとのことで、しばらくの間、2日前にバックアップした状態が表示されて管理画面にもログインできない状態だったようです:
- Current Issues with TypePad (Everything TypePad)
その後の続報。「これまでに投稿されたデータはリストアされるから心配しないでね」という内容:
- Update on TypePad Issues (Everything TypePad)
さらに続報。現在はログインもできるようになっているとのこと:
- TypePad is Back Up (Everything TypePad)
ただし現在もリストア作業は進行中で、TypePadをベースにしたブログを見ていると、本来ある画像の変わりに"Image being restored this weekend"と書かれたイメージが表示される記事があります。当然様々なブロガーがこの件についてコメントしているのですが、今回の障害と、TypePadに関連した以前の障害についてまとめてある記事を1つだけリンクしておきます:
ブログ・プラットフォームはどこまで信頼性を持つべきか
ずっと前に、僕は「ヤプース!」というWEB日記を使っていました(現在もありますが、ヤプログというブログ・プラットフォームへの転換を進めています)。サービスが立ち上がってすぐの頃に使っていて、しょっちゅう障害が起きていたことを思い出します。しかし書き込んでいた内容が本当に日記程度の内容で、また少数の運営者で運営されているサービスだと知っていたこともあり、それほどストレスは感じませんでした。仮に今回のような障害が「ヤプース!」で発生していたとしても、「ああまたか」ぐらいの感情しか持たなかったでしょう。
一方、もしこの"Polar Bear Blog"で「ログインできない」「記事が消えてしまった」などということがあったら、その時の運営側の対応にもよりますが、怒りは抑えられないでしょう。実際これまでも、投稿したいときにログインできず、強いストレスを感じたことがありました。それはこのブログが「自分自身のメディア」として(僕にとって)非常に重要なものになっているからです。僕に限らず、多くの人々にとってブログは「常に障害なく稼動していて欲しい」システムになっているのではないでしょうか。
しかしTypePadに限らず、ASP型のブログ・プラットフォームは「24時間365日稼動を続ける」などというミッション・クリティカルなシステム並みのサービスを実現するべきでしょうか?また「過去に投稿したデータは全て、未来永劫ストレージされる」と保証されるべきでしょうか?企業向けビジネスブログサービスならまだしも、個人レベルのブログにそこまでの保証を付けるべきなのでしょうか?
将来、特にビジネス向けブログサービスを行う会社で、そのようなSLA的な保証を行う会社が現れてくるでしょう(現在でも行っている会社はあると思います)。またサービスのグレードを分けて、高い料金を取る代わりに様々な保証を行う、というパターンも考えられます。しかし全ユーザーに対して「絶対にシステムはダウンせず、過去のデータも永久に保管される」などと保証することは不可能でしょう。またお金を払えば信頼性のあるシステムが手に入るといっても、個人ユーザーでそこまでする人は少ないと思います(僕もたぶんアップグレードはしません)。
"Standard Storage Format"の可能性
そこでZDNet Blogの記事にあった"Standard Storage Format"というアイデアが気に入りました。もし全てのブログが一定のフォーマットでストレージされていれば、ちょっと考えただけでも、いろいろな利点がありそうです:
- 普段使っているブログ・プラットフォームに障害が発生した場合、もしくは何らかの理由でそのプラットフォームの使用を停止したい場合、他のプラットフォームへの引越しが楽に行える(この点については、過去に書いた記事をご参照下さい:ブログの「乗り換え」)。
- 1つの記事を複数のプラットフォームに投稿したい場合、例えば僕のように社内ブログと個人ブログに同じ記事を投稿したい場合、操作が楽に行える。
- 上記のような引越し/同時投稿といった機能を提供するアプリケーションが増える。(スタンダードが1つに統合されれば、そのスタンダードに合う形で開発するだけで、どんなブログでも使えるようになるので。)
- メールやオフィスアプリケーションなど、他のテキストデータをブログに関連付けることが容易になる。
- 過去の記事の検索や、記事同士のつながりの確認などを行いやすくなる。
もっと妄想を膨らませれば、ブログ/SNS全体のデータフォーマットが統一されれば、CGMはもっと活性化されるはずです。「管理社会」に対する生理的な嫌悪感さえ考えなければ、「あらゆる個人情報/CGM(ブログやSNS、Eコマース/レビュー系サイトに投稿した記事など)は政府が用意したストレージサーバーに標準フォーマットで保管される。民間企業はそのデータを表示するためのサイトを用意するという、いわば『プレゼンテーション層』を提供する役割のみを負い、ユーザーは気に入ったデザインをそれらの企業から選ぶ」という未来像も描けそうです。
もしくはGoogleのような会社が音頭を取ってStandard Storage Formatを提唱し、自らはストレージに徹する--プレゼンテーション層は他企業の競争に任せ、最も重要な「コンテンツ」の確保に徹する、という戦略を取れば、ストレージ・フォーマットの標準化は意外と早く実現するかもしれません。「独裁者が管理社会を実現する」という昔のSF小説のようなシナリオよりも、こちらの方が実現性が高そうです。
いずれにせよ、ブログ/SNSなどのCGMの急成長に対し、サービスを提供する側の能力が追いついていないという状態が続くのであれば、何らかの形で「コンテンツ」と「プレゼンテーション」を切り離して扱えるようにしようという動きが生まれてくると思います。
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